ぼくのはじまり 32
本当に帰るの?
昔の北海道は今よりも雪が多かったような気がする。
それはまだ私が帯広・釧路を担当していた頃(20年前)。
出張生活の私は一週間の仕事を無事に終え、帯広市から札幌市へ
帰ろうとしていた。
その時は営業車で移動していたのだった。
時は2月。
北海道も、最も寒く冷え込む時期である。
最後の医療機関を出たのがもう8時ころ。
金曜日の夜。
多分、出張組の製薬会社の営業達はもう札幌へ帰り着くころでは
ないだろうか?
そんな中、私はオンボロ営業車で大雪が降る帯広の街をあとにした。
道路状況が悪く、スピードも出せないまま低速で"日勝峠"を目指す。
私は俗に言う「裏道」を知っていてまともに「国道」を行ったりはしない。
皆さんもイメージできるかと思いますが「広い広い北海道」です。
そのずっと向こうに「大きな山並みが連なる北海道」です。
吹雪の夜、横殴りの雪に目を凝らしながら裏道を突き進む。
どこからどこまでが「道路」で、どこから「畑」か区別もつかない。
これ以上左に寄ったら下の畑に車ごと転がり落ちるかも知れないという
緊張感たっぷりのままどこまでも続く道を...
私は気付かなかった。
「裏道に除雪車がそうそう入っては来ない」ということを。
進めば進むほど
行けばいくほど
山に近付けば近付くほど
「雪が深くなる!」
車が雪を踏む音が
ブルブルブル ... が
ブロブロブロ ... になり
バフバフバフ ... となり
ボフボフボフ ... になった。
雪が深い!
そろそろ危険である。 車体が雪に隠れ始めている。
これ以上進むのは正しい判断ではない。
しばらく走れば国道と合流し、そこからはまだ道路環境も
良くなるのだろうが。
そこに着く前に車が埋まるかも知れない。
もう走ることにもくたびれた。
ここから札幌まで220kmある。
残念であるが勇気ある撤退を余儀なくされた。
外は真っ暗。 横殴りの猛吹雪。 街灯も何もない裏道。
行き交う車も1台もなく。
「ビュウッ」という風の音。
ゆっくりと方向展開し帯広の街へ20kmほど戻った。
常宿のホテルへ10時ころに再度チェックイン。
疲れた体を休め翌日の土曜日に晴れた国道を札幌へ向かった。
月曜日の朝、札幌の支店に集まり月曜ミーティング。
金曜日と土曜日の顛末を上司に報告。
「よし、その判断は正しかったぞ。 何かあったら大変だからな。
でも、国道や峠が通行止めになったというニュースは聞いていないぞ。
除雪も入らない裏道なんか走るからだろ! バカ者!
普通に国道を行けばよかっただけの話じゃないのか?」
はい。 おっしゃる通りです。
申し訳ありませんでした...。
これからは真っ当な道を歩んでまいります。
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