ぼくのはじまり 24
あの先生は...
今まで多くの医師と関わってきた。
本当にいろいろな先生がいらっしゃった。
思いで深い人たちばかり...。
やっぱり20年前さ。
道東の小さなちいさな町立病院。
外科の院長と内科の副院長の2人しかいないような病院。
建物も古く廊下の電気も煤けていつも医局への廊下は薄暗かった。
その病院に私の好きな先生はいた。
そんなに頻繁に訪問できるような町ではなかったけれど、行くのが
楽しみな病院だった。
いつも優しく微笑んでいる先生だった。
「僕はね、本当は、一度、北海道大学の法学部を卒業したんだ。
でもね、どうしても医者になりたかったんだよ。
地域のお年寄りや病気の人を助けたくてね。」
「フィリピンの医科大学を受けて、留学して勉強したんだ。
全部、英語の授業でね。
結構、苦労したよ。
卒業してから日本に帰って来て1年かけて国家試験の準備をしてね、
ようやく医者になれたんだ。
その時は、もう30歳を軽く超えていたけどね...。」
優しく笑いながら話す先生だった。
「僕は街には行かないんだ。
ずっと地域医療にかかわっていくつもりなんです。
都会の病院は、僕には無理だな。」
なんてことを言う先生だった。
「君はこの町に泊まることはないの?」
「一度、ゆっくりと君と呑みたいもんだな。」
「先生、私は街に戻ります。次の機会にでも...」
暫く訪問する機会を逃してしまった私。
2~3か月の間を空けて次に訪問した時に、その先生はもう
違う町に異動されていた。
それからお会いする機会もなくなってしまった。
あれから20年。
きっとどこかの小さな町の病院でご健在なのだと思う。
そんなことをふと思いだした。
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