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ぼくのはじまり 22

ぼくのはじまり22

~ ああ、それは違います! ~

これまた二十数年前の話。
私は一般大衆薬のほうが断然有名な国内製薬会社の「医療機関向け薬部門」の営業マンだった。可愛らしいキャラクターの会社である。町の薬局部門においては知らない人はいないほどの知名度。

道東地区をひとりで担当していた私は端から端まで駆けずり回って営業をしていた。でも、なかなか頑張っても物理的に訪問できない施設(医療機関)も出てくるのは仕方がないところ。新規開拓...と言いながら訪問していけばよいのだろうがその時間がなかったり、その施設に行くために半日以上が費やされるなどの理由がある。


ある時、一般大衆薬部門から「いびき」を抑制する薬が発売になった。
当時、日本初ということもありそれなりに話題になった商品である。
「いびき」とは漢字で「鼾」と書き、鼻が乾く~という意味がある。
鼻の粘膜を塩化ナトリウムとグリセリンで潤いを保持しておこうというもの。使い方はノズルを鼻に入れて数滴、滴下するというものだった。

時、同じくして医科向け部門からアレルギー性鼻炎の薬が新発売になった。副交感神経を亢進させるアセチルコリンという物質をおさえる作用がある。使い方はノズルを鼻に入れて数回、噴霧するというものだった。


根室の代理店の課長から連絡が入った。
「ヤナちゃん。 ○○町立病院の薬局長が△△△△△の製剤見本とパンフレットが欲しいと言っているんだ。急いで持っていってくれる?薬局長には言ってあるから。」

その町立病院は当社とは何の取引も無く、また地理的なことから私も訪問をしたことがなかった。(かなり遠いのさ)

「いい機会になればいいね。チャンスだよ。向こうから関心を示しているから。」

課長の言葉に期待を寄せながら朝からその街へ向かって急いだ、急いだ。
その街は道東に位置する町で人口が17,000人程度に比べて牛が120,000頭いるというのが自慢の町。濃くて美味しい牛乳が自慢の町。面積は全国2位。夕暮れに近い頃、その町にようやく到着。とにかく広い。「ここから○○町」という看板を過ぎてから人家が見えるまでややしばらく平らな牧草地をまっすぐに走り続けなければならない町。町立病院の場所すらよくわからず探しながら到着。初めて院内に入り、薬局を探す。薬剤室をノックし薬局長へ面会。始めてみる薬局長の顔。うん、よかった。優しそうな顔だ。

「はじめまして。○○製薬の柳田正太郎です。本日はお話のありました△△△△△のサンプルを持って参りました。」

「ああ、ありがとう。 お疲れ様でした。 わざわざすみません。」

「こちらが製剤見本になります。」

「ほほ~。これが噂のイビキを止める薬かあ~。」

 ・・・ち、ちがいます

  帰り道は遠かった。
      来た時よりも遠かった。


(2008年10月02日)

コメント(2)

ハハハ、笑ってしまいました。
それは脱力しますよね。

先生の方も悪気がないだけに、責めるわけにも行きませんし・・・。

こんにちは。
ご無沙汰をしております。

『ぼくのはじまり』一気に読まさせていただきました。
裏話!?的なお話で面白いですね(^^

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