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ぼくのはじまり 21

ぼくのはじまり 21

~ 月がきれいなんだな ~

20年前。 私は札幌市に住んでいた。
毎月、月初めに営業所会議が行われていた。
今、考えるとあれは意味のある会議だったのだろうか。 
46歳になった今なら、「こんな不毛な会議は止めたほうがいいのではないか!?」「会議をするいじょう、それならば...」ときちんと代替案も提示できるだろう。 「会して議せず、議して決せず」という、目的が不明確な集まり(集会)にすぎなかったあの時代。遅くまで会社に残ることが美徳とされた時代。仕事をテキパキ終わらせても帰りにくい雰囲気。アナログの時代だから、資料などは全て手書き。先月の目標達成に関する結果や今月の目標数字や何でもかんでも手で計算(電卓)、そして膨大な数字や文字を手書きで資料に書き込み、コピー。翌月にはただの紙くず。 要領だけは良かった私はルーティンワークもサクサクと済ませていつでも帰れる体制にありながらも、何かと無理やり仕事を見つけて上司や先輩が重い腰を上げる頃まで時間を潰すというパターン。 
懐かしいなあ、でも戻りたくないなあァ~。


そんな ある月始めの会議の夜。
期待の喘息薬(抗コリ薬)が発売される前日のこと...


夜の9時近くに釧路市の医薬品代理店の課長から電話が入った。
「あ、正ちゃん?」
「あれ、課長、こんばんわ。遅くにどうしました?」
「明日って○○○薬の新発売の日じゃないの?」
「ええ、そうです。」
「うちの支店で説明会、やったっけ?」
「いえ、まだです。 日程が他のメーカーさんでかなり埋まっていたようですしもう少し日にちが経ったら会議の時間をいただこうかと思っていました。」
何とものん気な営業マンであった。 普通はこんなふうには考えないものだ。
(冷静に考えると焦りますな/かなり適当な営業マンです)

「何考えてるんだ、正ちゃん。ダメだって! 朝一番で8時から15分、時間あげるからセールスに新薬の説明をしなさい!今すぐ釧路に向かっておいで。」
「え~っ!今、札幌ですよ。400km近くあるんですよ。え~っ?。」
「いいからいいから、必ずおいでよ。 じゃあね。」

会社を飛び出したっぷりとガソリンを入れて、深夜の日勝峠越え。
高速道路も無かった頃の話。


 走れ走れ。
 急げ急げ。
 400km。

釧路市には早朝6:00に到着。 もちろん、睡眠はとっていない。 今ここで目をつぶると本気で寝てしまいそうだ。
ウトウトする間もなく早朝の代理店で説明会。 課長は「ほんとにもう、おまえは!」という顔をしていた。15分ほどの説明会を終えたあと、若いセールスが「柳田さん、それじゃあこれから新薬の紹介に数件、同行してもらえませんか?」。 
課長が「正ちゃんなあ、寝てないのよ。徹夜で札幌から移動してきたんだ。少し寝させてやれ。」

代理店で昼寝の許可をもらうなんて変なの。
そう言われてホントにホテルへ行って数時間、昼寝をする私も私だが。
(午後から、びしっと仕事はしましたよ)


翌日、代理店へ行くと課長が一言。
『○○総合病院に昨日の新薬、採用して貰ったからな。 俺が入れておいたぞ。』


課長は私のために一肌脱いでくれた。

総合病院に採用させる条件に、面白半分で徹夜で私を走らせたようだ。
課長は「へへ、眠かったろ。ざまミロ。」と言いながら私のお尻を叩いた。
そして悪戯っぽく笑った。

日勝峠のてっぺんから見た月がきれいだったことを今も覚えている。

大好きな課長だったな。

    今、何処でどうしているんだろう...。



(2008年09月25日)

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