ぼくのはじまり ⑫
-いいから、まずは行ってこい!-
若かりし頃の僕はいろいろな経験をしてきた。
そして、何度となく「いいから、まずは行ってこい!」と言われたことがある。
新人営業マンの頃。
地方の町立病院や診療所を訪問することが日課であった。
当時、勤めていた製薬会社は町の薬局部門の薬が主だった。
(そうそう、ある可愛い動物がキャラクターで...跳ねる耳の長い...)
豆知識1:
町の薬局で売る薬のことを"OTC医薬品"と言ったりします。
"Overe The Counter"のことで、客と販売員がカウンター越しにやり取りする
ところからきています。
豆知識2:
薬には大きく分けて「薬局で買う大衆薬」と「病院や医院で使う医療用医薬品」に
分けられます。
その比率は12%vs88%ほどあり圧倒的に医療用医薬品の使用率が上回ります。
話がそれましたが、その会社では何品かの「医療用医薬品」の販売も開始。
テレビや商店街ではお馴染みの当社でも「病院・医院」ではまったく相手にされなかった。
「○○○のマークの会社がどうして病院に来るんだ?」とか
「町の薬剤師を相手にしていろよ」とまでいう病院薬剤師まで。
ちっくしょ~! だよね。
会社名はたぶん、日本中の人が知っているけど実績のない医薬品部門では
苦労をしたな。
今、思い返せば面白かったかな。
飛び込みで病院やクリニックに入っていって薬局長や院長に面談する。
うん、面白かったんだろうな。 今、考えると無鉄砲だったよな。
そのころいつも心には
-いいから、まずは行ってこい!- が、繰り返されていた。
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ある病院で、昼休みに総合医局へ行くと消化器内科部長が「ニヤニヤ」しながら
僕に向かって、「おい、正太郎、ここに来る前に裏玄関に行ったか?」。
「えっ!何のことでしょう?」。
-いいから、まずは行ってこい!-
部長に命令され(笑)、半信半疑で病院の裏玄関へ行くとそこには「献血車」。
「はいはい、なるほど、判りましたよ。」
たっぷり400の血液を提供し、再び医局へ。
「はっはっは。 行ってきたか! よしよし。 珈琲でも飲め!」と部長自ら
カップに珈琲を注いでくれた。
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出張先の帯広市で朝を迎えた。
特約店へ顔を出して喫茶店で遅めの朝ごはん。
ポケットベルが鳴る。
東の最果ての町の代理店所長からだ。
急いで公衆電話から電話をかける。
「何かありましたか?」
「○○市立病院の薬局長がすぐに来なさい と言っているぞ。
いますぐ、行きなさい」
「え~。 今、帯広ですよ。 明日でいいんですかね。」
「ダメダ、いますぐそこを出なさい。 走りなさい!」
-いいから、まずは行ってこい!-
そこから250km。 走る走る。 兎にも角にも到着。
急いで病院に飛び込み、薬局長室へダッシュ。
「先生、何かありましたか!」
「おお、来たか。 遅いぞ。」笑いながら薬局長。
「いろいろと大手のメーカーの競合品もあったけど、今回は
君のところの薬を採用することにしたよ。」
「おおおおお。」
まずは、何でも
-いいから、まずは行ってこい!-
だな。
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