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ぼくのはじまり 14

ぼくのはじまり 14

~5時間後の財布~

本当に広かった。
本当に遠かった。

20年前、北海道 道東地区をひとりで担当していた私。
大きな総合病院から小さなクリニック、果ては遠くの町立病院まで。
そのエリアのあらゆる先を訪問していた。

あるとき、帯広市にいた私は急遽、国立弟子屈病院へ行く用ができた。
(知らない方へ:弟子屈="てしかが"って読むのです。)
(その病院は今は統廃合で既に違う経営体になっていますが)

どうにも、こうにも距離感とか景色感とか掴みにくいと思います。
距離にして120~140km、果てしなく続く広い大地と遠くに連なる山々。

そうそう、松山千春の地元(足寄:"あしょろ"と読みます)を抜けてまさしく彼の"♪果てしない~大空と~広い大地のその中で~♪の世界です。

何処までも続く長く真っ直ぐな道の北海道の風景を見た事があると思いますがその通りです。

時に私は大急ぎで弟子屈町へ向かっていたわけです。
(何の用か忘れたが、薬局長が帰宅する前に病院に着かなくてはならなかった)

 何にも無い。
 草原と牧場と畑と。
 携帯電話も無い。
 ポケベルの電波も届かない。

何十キロおきかにポツリと電話ボックスがあったりする。

弟子屈へ向かう130kmの間に会社へ連絡することがあり、ようやく見付かった
電話ボックス脇に車を止め、会社へ電話連絡。
その後、更に車を飛ばして数十kmを爆走!

何とか夕方には到着し、薬局長と面談を済ませ、事なきを得た。
「さあて、これからまた100kmほど走って今夜は釧路市に泊まるか」
何気なく国立弟子屈病院の駐車場で尻ポケットに手をあてがうと...

 !!!うあっ!財布が無い!!! 

 !!!やっべ~!!! 

場所はあそこに違いない。
そうだ、あの電話ボックスだ。
財布を電話の上に置いて、テレフォンカードを出したのだ。
早く移動しなければと、慌てて、そのままに...。
少し意識が遠くなるような気がした。

 とにかく、走れ。
 ともかく、目指せ!

 ここから確か60kmくらい向こうの国道沿いの牧場の
 防風林のところにポツリとあった電話ボックスのはずだ!

 日も暮れて暗くなる。
 
 すれ違う車もほとんど無く、さびしい一本道をただひたすら...
 祈りながら...

 あった、あそこだ!
 車から飛び出し、電話ボックスに飛び込む。
 なんと、私の折りたたみの財布はだらしなく開いたまま、電話ボックスの中の電灯に照らされてそのまま、ぽつねんと鎮座していた。

 電話ボックスの中には蚊や蛾、虫がぶんぶん飛び交う。

 体から力が抜けたが先ずは一安心。
 とにかく助かった。
 面倒なことにならずに済んだ。
 この数時間、誰もこの電話ボックスを利用しなかったようだ。
 

 随分と、帯広市方面へ戻ってきてしまった。
 これからさらに140kmほど走って釧路市へ移動しなきゃ。

  走った、走った思い出。
  お腹が空いたな...。

  忘れものには気をつけましょう とあらためて感じた日。


(2008年01月17日)

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