ぼくのはじまり 9
贅沢が何だかよく解からなかった時代。
何でも素直に聞けた新人の頃。
22歳だったけど社会人では1歳。
「道東地区を担当してくれないか?」
「はい。わかりました。」
一般薬(町の薬局)部門ではかなり有名な当社も
医療用医薬品(病医院の薬)部門では"超"が付くほど弱小。
病医院などを訪問しても
「○○○(かわいい動物)のマークがどうして病院に来るんだ?」と
嫌味までいわれる始末だった。(ちくしょうめ!)
当時はJRでの移動も許されていなかった。
営業車には促進用の資材が山のよううに積み込まれていた。
(整理整頓が出来ていないともいいますが)
常にオンボロのバンで「ガラガラ・ゴロゴロ」と北海道を
駆けずり回っていたのである。
根室市内で仕事を終えて釧路の街へ帰る途中。
ただひたすらに真っ直ぐで平らな道で。
眠気覚ましに車を止めて。
背伸びをしながら空を見上げた時、
「ああ、星ってこんなにあるんだ」と驚いた夏の暑い夜。
雪が降り始めた頃。 町から町を結ぶ林道で。
近道を選んで、国道を走らず林道へ向かった。
すれ違う車もなく。 シンシンと雪が降る山道で。
道路にはうっすらと雪化粧。
道端にキツネを見つけた私は食べ残しのサンドイッチを
持ってキツネに近付いた。
怯えながらも投げるパンに食らいつくキツネ。
何気なく足元に目を落とすと私の周りには数え切れないほどの
動物の足あとがある。
この林道を横切る"ケモノ道"にいるらしい。キツネ、鹿、ウサギ。
その中に私の顔ほどある巨大な足あとを発見。
間違いない!ヒグマだ。まだ新しい。
ゆっくりと後ずさりしながら車に戻り、肩をこわばらせながら
走り逃げたあの日。
秋の十勝川。
営業車にはいつも釣竿と長靴が入っていた。
ルアーだから餌はいらない。
いつでも竿を振ることが出来る。
ちょっぴり時間が余ったので(決してサボリではない!)
とあるポイントでスーツ姿に長靴で釣りをしていた。
ランドクルーザーがブルブルと河原にやってきて
独りのおじ様がばっちりと釣り師のいでたちでやってきた。
「釣れますか?」
「いえいえ、仕事をサボって遊んでる程度で」
「近くで私も...」
「どうぞどうぞ」
世間話や雑談をしばし。
「おじさんは、仕事、何してるのですか?」
「私? 私は医者です。」
「!!!!!おお~、ノオ~!!」(会ったことはない医師)
「あなたは?」
「私、私は...しがない、営業マンです...」
「あ、会社に戻らなきゃ。それでは!」
その先生と、私の次の出会いは...。
またまた、そんなある日の思いで。
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