このコラムの第1回 「僕のはじまり」より続く
製薬会社営業の新人だった私。
-とある、地方都市の市立病院-
皮膚科部長の個室へ上司係長の企みでひとりで無理やり入室させられた。
背中を押されつんのめりながら、部長先生の前にこの顔を曝け出した。
強面の皮膚科部長はゆっくりと文献から顔を上げ「何のようだね?」。
心の準備はおろか、製品紹介の準備すらままならない状態の私。
"笑顔"を作る余裕もなく、額に汗をかき口元は引きつった薄ら笑い。
「あああ、俺はダメだあああ~」 こころの叫び。
部長 「君は、どこの製薬会社だね?」
私 「××製薬で御座います。」(弱々しく)
部長 「ここでは、何が採用されているのだね?」
私 「はい、○○と、○○で、大変 お世話になっております。」
(気絶しそう)
部長 「ああ、○○と○○か」
私 「はい。 そうで御座います。」(倒れそうになりながら:笑)
部長 「いい薬だよな。私も処方しているよ。
私 「有難う御座います。」(必死の形相)
部長 「ところで、今日は何の用事だね?」
私 「(白い灰)」・・・
あああ、しまった!! 用事が無い!!!
どうなる 私!!
白い灰となり立ち尽くす私に部長先生は、「まあ、座りなさい」と
応接のソファを指さした。
(ええ~。座るのぉ~。早く出て行きたいっすよぉ。許してぇ~。)
部長は緊張している私を見て軽く笑いながら...。
「新人だな?」
「はい、そうです。 初めてひとりでDr.の前に来ました。」
「ほう、そうか。私がデビューになるのか。光栄だな。」
そして大きな声で笑った。
「生まれはどこだ?」
「大学は?」
「両親は?」
「どうして薬屋を選んだ?」
部長は面白がるように私に質問を浴びせた。
時間の経過とともに少しずつ私の緊張が緩むのを感じた。
後半は笑顔で向かい合っていた。
しばらくの雑談ののち、「また、いつでも来なさい。」と
優しく微笑みながら立ち上がる私に声を掛けてくださった。
「有難う御座いました!」
深々と頭を下げて、感謝しながら部長室をあとにした。
「ふう~っ!緊張したああ。」そう思い感慨に耽っていると後ろから
「いつまでおしゃべりしてるんだ。」と低音が響いた。
おっと、そうだった。
随分と長い時間、係長を薄暗い廊下で待たせちゃっていたんだ。
う~む。 失敬、失敬。
そんな23年前の思い出。
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