今回の事件の特異なところは、詐欺の対象となった「モノ」が著作権という無体物だということです。これが高級車や宝石などの有対物であったなら、多少は理解し易いのかもしれません。
皆さん、ちょっと想像してみてください。
大室テツヤという高名な作曲家が、投資家A氏の歓心を買おうとこんなことを言っています。
大室「Aさん。僕はあなただけのために、曲を創ってきました。世界に1枚しかありません」
といって、1枚のCDを差し出しました。
Aさん「本当ですか!それは嬉しいな。ありがとう。大切にします」
Aさんは大喜びで、そのCDをいつも聴いていました。
ところが大室氏はB社に著作権を譲渡し、B社は大量にプレスして販売を開始しました。
怒ったAさんは、
「その曲は大室氏から僕がもらったものだ!所有権は僕にある。無断で量産するなんて許せない」
と言ってB社を訴えました。
さてこの場合、Aさんの権利はどうなるのでしょう?
もうお判りですね。
Aさんが大室氏からもらったものは、CDであって「曲」ではありません。著作権譲渡の契約をしていない限り、Aさんは「曲」の権利を主張することはできないのです。
大室氏からせっかくもらったCDでしたが、Aさんはベランダにつるしてハト除けにするしかなくなってしまいました。
「所有権」と「著作権」は、ともに目的物を排他的に支配する権利である点は共通しています。しかし、著作権は無体物なので、使用方法が多岐にわたります。そのため、著作権法によって、財産権の種類が細かく規定されているのです。
美術の著作物の所有権をめぐる過去の判例でも「所有権は有体物を排他的に支配するにとどまり、美術の著作物自体を直接排他的に支配するものではない」としています。
(顔真卿自書建中告身帖事件 最判昭和59年1月20日)
著作権が「無方式主義」であるということは前々回にお伝えしました。
インターネットの時代になり、創作や表現の手段も飛躍的に増えました。皆さんが日ごろ目にするブログやメール、イラストにも当然筆者の権利が発生しています。
小室氏の事件をきっかけに「著作権」を正しく理解していただき、読者の皆さんがトラブルに巻き込まれるリスクが軽減されることを望んでいます。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第74回 小室氏事件から学ぶ著作権③
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1600
コメントする