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第72回 小室氏事件から学ぶ「著作権」

小室氏による巨額詐欺事件の公判が始まりました。
今回の事件によって「著作権」というものが良くも悪くも注目されました。今後の裁判でも重要な争点になるでしょう。
小室氏は「作品の全ての著作権は僕にある...」そう言って、投資家を騙したとのこと。
では、なぜそんなに簡単に(?)騙されてしまったのでしょう。

小室氏が超有名人で、まさか人を騙すなんてありえないと思ったことがまずひとつ。
もうひとつは、著作権が『無方式主義』だということも大きな要因だと思います。
無方式主義とは「著作物を創作した時点で、著作者が著作権を取得する」ということです。
小室氏が作った楽曲はもちろん、アマチュアが作った歌にも著作権は発生しています。譜面に残していなくても、即興で歌った曲であっても、絵画でも小説でも、それがオリジナルである限り著作権が発生しています。

この点、例えば特許などは、出願→審査→登録によってはじめて権利を得ることになり、知的財産であっても著作権と大きな違いがあります。
特許の場合、登録されると「特許公報」に掲載されます。仮に小室氏が持っていた権利が特許であったならば、投資家は比較的簡単にその真偽を調べることができたでしょう。
著作権にも登録制度はあります(あまり知られていませんが...)。しかし、商業ベースで量産される音楽などについては、そのつど著作権登録されることは通常考えられません。
その代り、音楽出版社と小室氏の間には当然に著作権についての契約がなされていたはずですが、こちらは一般には知りうる内容ではありません。
投資家が慎重さを欠いたと思う面もありますが、相手が相手だけに信用してしまったのでしょう。

それでは、なぜ著作権は『無方式主義』なのでしょうか。

特許、意匠、商標などの工業所有権は「工業の発展」を目的としています。工業の発展のためには、誰が権利を持っているかを明確にする必要があります。
これに対し著作権は、同じ知的財産であっても「文化の発展」を目的としています。
著作権は、著作者の人格的な利益を保護し文化の発展に寄与するため『無方式主義』となっているのです。著作物をいちいち審査していると、逆に文化の発展を阻害すると考えられるからでしょう。(世界でも、現在は殆どの国が無方式主義をとっています)

また、著作権は「表現」そのものを保護の対象にしています。一方、工業所有権は「アイデア」を保護の対象にしています。知的財産に関する相談で、この点を誤解されている方がとても多いのです。
例えば、もしも小室氏が、どうすれば楽曲がヒットするかという独自のアイデアを持っていたとしても、そのアイデアは著作権では保護されません。著作権は、あくまで完成した楽曲を表現物として保護することになるのです。


(2009年01月29日)

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