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褒められもせず苦にもされず

渡邊光一プロフィール

渡邊光一

渡邊光一 行政書士・知的財産管理技能士
HP http://www.ko-wata150508.com/

札幌生まれ。
北海学園大学法学部卒

卒業後、印刷会社、広告代理店でクリエーター企画営業を学ぶ。
お気楽な勤め人生活を全うするはずが、会社が無くなってしまったので、平成15年、渡邊光一行政書士事務所開業。
法人設立など、役所に提出する堅い書類を作成するのみならず、IT企業・クリエーターの著作権保護、契約書作成など知的財産業務に特化する。

コトバ師として、糸井重里・宮沢賢治、両氏をトリビュート。
「雨ニモマケズ」が、どんな文章よりも力強くシンプルに、人を幸せにする言霊だと信じてやまない。
なお、いつもススキノ方面に居ると思われているようだが基本的には帰宅部なのである。

第87回 キング・オブ・ポップス

狭く汚い路地の突き当り。小さなジャズバーのマスターが、ある日、僕の顔を見るなり「これ凄いよ。観る?」と1本のビデオテープを自慢げに差し出した。ラベルにはマジックペンで『スリラー』となぐり書き。どこかでダビングしたものだろう。
家庭用ビデオデッキがまだ高くて買えなかった頃。僕はその店で初めて『スリラー』ノーカット版を観た。何人かの客たちと一緒に、モニターを食い入るように観た。14分間、誰も言葉を発しなかった。映像に圧倒された。
札幌の中心街が、バブルの魍魎たちに食い荒らされる前のこと。通称オヨヨ通りと呼ばれた路地の奥は怪しく古く、『スリラー』を観るには充分に効果的だったかもしれない。

その何年か前、僕は24時間営業のドーナツショップで夜勤のバイトをしていた。夜8時を過ぎると、店のBGMを夜間用に入れ換えた。明るく騒がしいコマーシャルソングが、大人の客向けのトーンになった。
そのドーナツチェーンは、洋楽のヒットソングをBGMに使っていた。片岡義男のショートストーリーがナレーションで語られ、合間にAORが何曲も流れた。
ホール&オーツ、クリストファー・クロス、シカゴ、ポール・マッカートニー...。そしてマイケル・ジャクソン。
深夜、誰もいない店内を黙々と掃除をしていると、エンドレスで流れるBGMが否応なしにアタマに刷り込まれた。当時の曲を聴くと、今でも一瞬であの深夜のドーナツショップへトリップする。

突然の訃報に、蜂の巣をつついたように騒がしい情報番組で、何十年ぶりに『スリラー』を観た。
少しも色褪せていないのはなぜだろう。
CGではなく、当時SFXと呼ばれたあの特殊メイクの方がリアルなのはなぜだろう。
情報がグローバルになっても、アーティストはミニマムになってゆくのはなぜだろう。

マイケル・ジャクソンに特に思い入れがあるわけではない。でも、思い出の多いアーティストだった。彼こそきっと、この地球で最初で最後の「キング・オブ・ポップス」だったのだな。

第86回 「夕張夫妻」の視野の広さ

「夕張夫妻」という夕張市のPRキャラクターが、カンヌ広告祭でグランプリを受賞しました。そのキャッチコピーは「金はないけど愛はある」と謳っています。夕張市ではこのキャラクターをお土産の包装紙などに使っているとのこと。「負債」を「夫妻」に置き換え、苦境を逆手にとるという発想が見事です。
「夕張夫妻」のウエブサイトをみると、思わず微笑んでしまうような、楽しさがあります。

このキャラクターは東京のクリエイティブディレクターが制作したものですが、北海道のクリエイターでは制作できなかっただろうと思います。クリエイターの能力が劣るということではなく、視野の広さの違いです。北海道、夕張という地域を、遠くから見る、あるいは俯瞰で見ているクリエイターだからこその作品だと思います。

数年前、北海道イメージアップキャンペーンに「試される大地」というコピーが使われていました。賛否両論があったコピーでしたが、やはり、北海道という土地を俯瞰で眺めることのできる人でなければ書けない、力強い言霊です。

景気は上向きになりつつあるという報道もありますが、北海道の不況はまだ続くでしょう。これからがさらに厳しいと分析している専門家もいます。
そんな中で、現在の状況を足元ばかりを見るのではなく、「遠くをみる」、「俯瞰からみる」、「別の角度からみる」そんな発想が、すべての業種に当てはまるのではないでしょうか。

第85回 「知財」による商品価値のランクアップを

先日、某セミナーの中で、アートディレクター職の方がブランドマネジメントについて講演をされていました。講演はとても興味深く聴かせていただきましたが、商品のブランド保護について、「意匠」と「商標」を明らかに間違って話しをされていました。
実は、広告や商品開発に携わる職業の方たちでさえ、知的財産について正確に理解している人はごくわずかなのです。

企業が新しい商品を開発・販売しようとする際に、広告会社がマーケティングについての作戦を立てることが通常ですが、残念ながら知的財産についての展開は二の次にされがちです。せいぜい「商品名の商標登録の申請をしましょう」と言われるくらいでしょう。
その結果、「商標を今後どのように活用してゆくか」という視点がなにもないままの企業が多数見受けられます。せっかく登録した商標を、関係業者が何の制限もなく勝手に使用している、などという状況になります。これは大変に危険で、且つ財産価値から考えてももったいないことです。

新商品を販売(リニューアルを含む)する際、その商品が「特許」「実用新案」「意匠」「商標」「著作権」それぞれの知的財産のどの領域に属するかを理解することが重要です。さらに、その領域を軸に、「攻める」のか「守る」のかによって、将来の展開も大きく変わります。
「うちは中小零細企業だから関係ないよ」などと思れがちですが、企業の規模にかかわらず、知的財産によって自社の商品価値をランクアップことが可能なのです。

*当事務所では、弁理士事務所と提携して、知的財産についての相談を承っています。どうぞお気軽にお問い合わせください。

第84回 景気の後退と「建設業許可」

建設業を生業としている会社・事業主は、原則として1件の金額が500万円を超える仕事を請け負う場合、「建設業許可」を受けなければなりません。(第3回「建設業許可とアウトソーシング」参照)

100年に1度と言われる不景気で建設業も厳しい状況の中、この「建設業許可申請」も以前とは違った相談が増えています。
例えば、「ゼネコンの担当者から建設業許可を取るように言われた」というケース。
これまでは2次・3次下請けの、小さな金額の仕事が多く、建設業許可など必要ないだろうと思っていたところ、担当者が急にそんなことを言ってきたので困ったというご相談です。
ゼネコンなどは、この厳しい状況を生き残るため、仕事の発注先の精査を始めています。北海道の場合、特に支店経済ですから「なぜこの下請け会社に仕事を請け負わせたのか」という理由を本社に納得させなければなりません。その理由ひとつとして「建設業許可を受けている会社であること」が必要になる場合があるようです。「真面目に仕事をしている会社だから」だけでは通らなくなってきているのです。

建設業者は「オレは長年この業界にいたから許可を受けるのは簡単だろう」と考えている方が多いのです。ところが、建設業許可には「経営管理責任者」「専任技術者」などの人的要件をはじめとして、いくつかの条件を満たさなくてはなりません。この条件を満たせず断念せざるを得ないケースも少なくありません。
例えば「業界に長年いたことを証明することができない」場合があります。数年前に同業から転職や独立をした場合、その前職場の役員から「証明書」を貰わなくてはなりません。しかし、円満退社ではなかったので嫌がらせで証明書を貰えないことがあります。さらに、前の職場がすでに倒産してしまって証明ができないケースなども珍しくないのです。

今すぐではなくても、建設業として将来独立しようとしている方、あるいはそうせざるを得なくなることが予想される方は、行政書士にご相談ください。「建設業許可」要件について正しく理解しておくことを強くお勧めします。

第83回 総会開催の季節です

株式会社の定款には、「定時株主総会は、毎事業年度の末日の翌日から3か月以内にこれを招集する」旨の記載がなされていることが殆どです。ということは、事業年度が4月1日から3月末までの会社は6月末までに株主総会を開催しなければなりません。
ところが、家族的な経営をしている中小零細企業や、株主と役員が同じ会社の場合などは、株主総会の開催を怠っていることがままあります。

さらに、会社法施行前に成立した株式会社で、取締役任期を変更していないのであれば、原則2年に1度役員変更登記が必要です。こちらも役員が長年変わらないような会社の場合、この変更登記を忘れていることがあります。
新しい取引先などが履歴事項証明書を見た時に、何年も変更登記をしていないと、印象が良くないばかりでなく、信用を落としてしまいます。
忘れずに登記をするか、あるいは当分役員が変わらないのであれば、定款変更をして取締役任期を延ばしておくとよいでしょう。現在の会社法では、取締役の任期は最長10年まで可能です。

定時株主総会の開催や役員変更手続きは、行政機関からのアクションがないだけに、多忙な中でつい後回しになり疎かになることがあります。「そんなもの形式だけのことじゃないか」と思う経営者もいるでしょう。
しかし、内外への信用を得るための最低限のルールですから、どうぞお忘れなく。
(登記は司法書士業務です。当事務所では、提携の司法書士が行っております)

第82回 契約書のススメ

小職のクライアントから比較的依頼が多い業務は「契約書の作成」です。特に、IT企業や広告デザインプロダクションは、これまで契約書を交わさずに仕事をしていた慣例がある業界ですので、契約の対象となる取引先は戸惑う場合が多いようです。

「アメリカは契約社会」という言葉をよく聞きます。それに対して日本はどうなのか、正確には判りませんが、商慣習として「口約束」が契約そのものになっている業種が多いような気がします。口約束でも法律上は契約が成立しますが、詳細までは決められません。
良くも悪くも「曖昧さ」を残しておく日本人の慣習が、トラブルを回避していたといえるでしょう。
しかし、現在のように景気の状況ですと、ちょっとしたトラブルが大きな痛手となることがあります。多少面倒に思えても、契約書をキチンと交わしておくことをお勧めします。
万が一トラブルになった時に、問題が拗れることなく速やかに解決することができます。

ところで、いざ、契約書を眼の前にすると、あまりよく読まないで記名押印してしまう場合があります。「騙すことを前提としていないだろう」という、こちらも良くも悪くも「性善説的」な慣習のためです。
騙す気はなくてもボタンの掛け違いでトラブルは起こります。契約とは双方が「確認」することです。騙す騙されるの問題ではありません。
契約書に目を通すことも面倒ですが、きっちりと確認しておきましょう。

そのためにはある程度の「慣れ」が必要です。書店には様々な契約の書式が販売されていますので、ひととおり読んでおくとよいでしょう。
但し、書式をそのまま流用することは好ましくありません。契約書とは「オーダーメード」な重要書類です。契約書を作成する場合には、業種や取引に合った内容にしっかりと書き換えるか、行政書士などの専門家に依頼されることをお勧めいたします。

第81回 新たな映像ソフトの時代へ②

グーグルストリートビューというサービスがあります。主要な都市の道路を、あたかも車で通りを走っているようにネット上の画像で見ることができます。使い用によっては便利なナビゲーションサービスですが、勝手に撮影した実写映像をネットで公開しているわけですから、プライバシーを侵害するおそれがあると、異議を訴える自治体もあります。
札幌の映像もネットで公開されています。メインの通りだけでなく、住宅街やかなりの裏通りまで撮影をしていて驚きます。望んでもいないのに公開されている民家の住民などは不快に思う人もいるでしょう。

グーグルストリートビューもグーグル社が制作した「著作物」です。
著作物とは『思想または感情を創作的に表現したもの』(著作権法第2条の①)のことを指しますが、メインのストリート映像そのものには「思想」も「感情」も感じられず、情報にすぎません。防犯ビデオの映像と同じような性質のものと言えます。
グーグル社は「すべての情報を整理する」ことが目的の会社ですから、余計な感情表現を入れないことが、むしろ創作物のミッションに合致しているのでしょう。
好き嫌いは別にして、グーグル社でしか考えもつかないような新しい映像ソフトだと思います。

個人的には、もっと狭いエリアでもかまわないので「表現力」のある映像ソフトがあっても良いのではないかと思います。例えば、商店街を通り抜ける映像があるとします。商店街には当然の如く人々の営みがあり、日々変わる風景があります。映像制作者(ディレクター)目線で商店街を撮ると、全く違う映像表現になるでしょうし、観ていて楽しい「著作物」になるでしょう。
そしてその映像の積み重ねが、「歴史」や「資料」になります。さながら映像のタイムカプセルのようなものかもしれません。箱モノに莫大な金を使う時代は終わったのですから、映像文化の創出にシフトしてゆくと、新しい様々なニーズが生まれるでしょう。

映像をとりまく環境の進歩がそれを可能にしています。フィルムからデジタルへ。劣化しにくいことはもちろん、すでに現在のハイビジョンの4倍綺麗な映像を撮ることが可能だそうです。
そして、それをネットや有線で配信できるということ。従来のマス媒体とは比べられないほど安価に手軽に公開することができます。
映像は「記録」だけではなく「記憶に残る」ことが大切。記憶に残る「表現力」によって、価値を生み出す時代が到来しています。

第80回 新たな映像ソフトの時代へ ①

「北海道には映像に残しておきたいモノや場所がまだまだ沢山ある」
北海道各地の歴史的な遺産などを記録撮影してきた映像会社社長の言葉です。
歴史的に重要な建造物や文化はもちろんですが、そこまで貴重とは言えないものであっても、資料として残しておくべきものがまだまだあると。

なるほどと思いながら、その社長の話を伺っていました。
実物として残しておくべきものと、映像としてでしか残しておけないもの。この二つを使い分ける必要があります。
例えば、歴史のある古い街並みも時代とともに変わっていきます。それは仕方のないことかもしれませんが、映像として残しておく必要があります。ノスタルジーとしてではなく、都市計画の資料として貴重なものだからです。
バブルの時代、街はどんどん変わっていきました。その計画の多くは無謀なものだったのかもしれませが、曲がりなりにも「方向性」や「理想」はあったように思います。ところがバブル崩壊後は「あるべき姿」さえ失う結果となりました。
その変遷を一般の市民も知ることができる術は、映像による記録しかありません。

ここで大切なことは、映像の「著作性」です。
単なる「記録」ではなく「著作物」であることが重要です。著作物であるためには、作り手の意思が映像に現れていなければならない。そこで初めて「作品」として受け入れられ価値がある記録映像となります。

第79回 新社会人の皆様へ

4月になりました。
真新しいスーツを着た若い方たちの集団が、街中を歩いているのを目にしました。入社式を終え、研修に向かう新入社員なのかもしれません。初出社の日の緊張を、僕も今でもよく覚えています。もうずいぶん昔のことになってしまいましたが。

先月、二人の学生さんから「補助者を募集していませんか?」という電話をいただきました。まれにそのような問い合わせをいただくことはありますが、3月という時期を考えると、あるいは不景気が作用しているのかもしれません。
せっかくお問い合わせでしたが「予定はありません」と丁重にお断りさせていただきました。そして、余計なことと思いつつ「もしも状況が許すなら、一度会社員として働いた方がいいですよ」と言葉を足しました。

僕の経験上、会社の同僚や先輩たちと同じ目標に向かって突き進んで行くということは、何にもまして得難い経験だと思うからです。理不尽なことや厳しい状況に置かれることもままあります。今でこそ温厚な(?)僕ですが、若い頃はよく会社のトイレの壁を蹴飛ばしていました。しかしそれ以上に、会社という環境から多くの事を学ばせてもらいました。嬉しいことも辛かったことも、恩師も憎っくき上司も、先輩も後輩も同僚も、その全てが僕の財産です。

会社員として何年か働いた後にまだ士業の道を志すのであれば、経験とスキルが必ず活かされます。これは間違いありません。願わくば、社会人経験を基にこれまでにない新しいスキルを行政書士業に取り入れてほしい。新社会人の皆さんの将来に期待しています。

第78回 サムライジャパン、お見事でした

WBCの侍ジャパン優勝、見事でしたね。特に決勝戦はハラハラして、移動中にもかかわらず、車を停めてワンセグで実況を見入ってしまいました。

ここ数日、お客さんのとの話題はまずWBCのことから始まっていました。思い起こせば、社会人になったばかりの頃、営業の先輩から「スポーツ新聞も目を通しておけ」と言われていました。お客さんは大抵前の日の野球を見ているから、まずその話題から始めると話し易いというわけです。もちろんそのために、お客さんがどのチームのファンなのかを知っておくことは必須ですが、当時は圧倒的に巨人ファンが多かった時代。アンチ巨人の社長に間違って巨人を持ち上げてしまい、憮然とされたことも数知れず。今となっては笑い話ですが...。

WBCの盛り上がりは、当時の「ほぼ共通の明るい話題」があった時代を思い出しました。興味の方向が多様化した現代ではなかなか通用しないのかもしれませんが、何かと世知辛い昨今、軽い話題でジャブを交わし、そのあとに仕事の話題に入るというコミュニケーション方法は大切だと思います。優秀な営業マンほど世間話が上手いですよね。
これは士業といえども同じこと。もしも、「野球は興味ありませんから...」などとばっさり切るような士業者がいたとしたら、僕自身はあまりお付き合いしたくありません。

ところで、今回のWBCも数々の名場面があったようですが、僕が一番嬉しかったのは、田中将大クンが堂々と世界のバッターと渡り合っていたこと。今日も甲子園では熱戦が行われています。田中マーくんが甲子園で投げていたのはつい3年前のこと。それが今、世界の舞台に立っているのですから、あっぱれと言いたいです。

第77回 「特許権」が融資の担保に

企業が保有する「特許権」が銀行融資の担保として設定されました。首都圏では既に行われていたようですが、知的財産担保融資を実行するのは北海道では初めてのことです。
これまで、金融機関の融資担保と言えば不動産が定石でしたが、不動産の価値さえも下落傾向にある昨今、新しい「価値」評価されることは、北海道の中小零細企業にとって意義のあることです。

不動産と違い、無形の資産である「特許」がどれだけの価値を生み出すかを判断するのは簡単ではないでしょう。実際に「特許査定」受け設定されている特許のうち、産業として成り立つのはごく一部ともいわれています。記事によると、今回のケースも銀行が1年をかけて経営診断をしたと書かれています。

企業が、特許をはじめとして知的財産を武器とするのであれば、自ら評価をアピールしていくことも必要です。
例えば、知的財産をベースに、企業が新しい試みを展開するのであれば「経営革新計画書」を作成し行政庁の承認を得る。
あるいは、知的財産を含め、包括的に企業の価値をアピールするのであれば、経済産業省が奨めている「知的資産経営報告書」を作成し、内外にアピールする、など。

知的財産は、特許・実用新案・意匠・商標・著作権など多彩です。もちろん大企業だけのものではありません。自社の「知的財産」を確認しアピールしてゆくことが今後ますます重要になってゆくでしょう。

第76回 定額小為替の種類が増えました

今月から、750円の定額小為替がようやく発行されました。
と言っても、一般の方にはあまりなじみがありませんね。しかし、実は多くの方が定額小為替を利用していることになります。
定額小為替とは、現金を郵便局などで定額小為替証書に換えて送付する送金方法です。普通郵便で送れるため、少額の送金に便利です。

私たち行政書士は、市外・道外の役所に、戸籍や除籍などを郵送によって職務請求します。相続業務で相続人を確定し遺産分割協議書を作成するためです。
その際に定額小為替を利用します。

しかし、発行される小為替の種類が限られていたため、例えば750円の除籍を取得するために、50円、200円、500円の3種類の小為替を振出請求しなければなりませんでした。しかも、1枚につき100円の手数料がかかります。
つまり、除籍を1部請求するために、合計1000円以上の費用がかかってしまいます。
この費用は実費として依頼者にご負担いただくことになるのですが、心苦しく思っていました。

郵政民営化以前は、手数料は1枚につき10円でした。ところが民営化後いきなり100円になりました。ゆうちょ銀行は「それでも手数料は赤字」と言っているようですが、さすがに利用者からの批判が大きかったのでしょう。利用頻度が高い金額の種類(450円、750円など)を増やし、今月から発行されています。

定額小為替の今までの利用経緯を考えると当然のことであり、もっと早くに実現すべきだったと思います。ともあれ、お客様の負担を少しでも軽くすることができるようになったのは何よりです。
(当事務所は「家系図の作成」はお断りしております)

第75回 NPOと一般公益法人

このコラムでも以前からお伝えしておりますが、昨年12月1日より、新公益法人制度がスタートしています。最たる改正点は、公益法人(社団法人・財団法人)の設立に際し、登記による法人設立と行政庁による公益性の判断を分離したことです。

ところで、公益的な事業を行う法人としては、従来より「NPO法人」があります。
それでは、NPO法人と一般公益法人はどのような違いがあるのでしょうか。公益的な事業を行っている方が、これから法人を設立しようとする場合、NPO法人・一般公益法人、どちらを選択すべきなのでしょうか。

NPO法人は、優遇税制が適用されますが、活動の目的が限定列挙されています。事業計画もある程度具体的な活動内容まで提示しなければなりません。法人成立後も行政庁の監督を受けます。
一方、一般公益法人は事業に制限規定がなく、行政庁の監督を受けることもありません。但し、原則として優遇税制などのメリットはありません。

上記の比較から判断できることは、「優遇税制というメリットが必要ないのであれば、設立が容易で活動の制限もない一般公益法人の方が適している」ということになります。
但し、一般公益法人から将来的に行政庁の認定を受けた公益認定法人に移行することを目的としているのであれば、比較がとても難しくなります。公益性の認定は18項目の認定基準がありますが、施行したばかりの新制度ですので認定の具体的事例が乏しいためです。

現在のところ、様々な状況も含めて総合的に判断することになります。
例えば、NPO法人の設立には10人以上の社員(主たる構成員)が必要ですが、協議が分裂し設立を断念するケースがあります。設立にも半年ほどかかると考えた方がよいでしょう。
あるいはまた、一般公益法人でありながら収益性も重視するのであれば、むしろ通常の株式会社を選択肢として考える必要もあるでしょう。

公益事業の法人設立をお考えの方は、行政書士にご相談ください。

第74回 小室氏事件から学ぶ著作権③

今回の事件の特異なところは、詐欺の対象となった「モノ」が著作権という無体物だということです。これが高級車や宝石などの有対物であったなら、多少は理解し易いのかもしれません。

皆さん、ちょっと想像してみてください。
大室テツヤという高名な作曲家が、投資家A氏の歓心を買おうとこんなことを言っています。
大室「Aさん。僕はあなただけのために、曲を創ってきました。世界に1枚しかありません」
といって、1枚のCDを差し出しました。
Aさん「本当ですか!それは嬉しいな。ありがとう。大切にします」
Aさんは大喜びで、そのCDをいつも聴いていました。
ところが大室氏はB社に著作権を譲渡し、B社は大量にプレスして販売を開始しました。
怒ったAさんは、
「その曲は大室氏から僕がもらったものだ!所有権は僕にある。無断で量産するなんて許せない」
と言ってB社を訴えました。
さてこの場合、Aさんの権利はどうなるのでしょう?

もうお判りですね。
Aさんが大室氏からもらったものは、CDであって「曲」ではありません。著作権譲渡の契約をしていない限り、Aさんは「曲」の権利を主張することはできないのです。
大室氏からせっかくもらったCDでしたが、Aさんはベランダにつるしてハト除けにするしかなくなってしまいました。

「所有権」と「著作権」は、ともに目的物を排他的に支配する権利である点は共通しています。しかし、著作権は無体物なので、使用方法が多岐にわたります。そのため、著作権法によって、財産権の種類が細かく規定されているのです。

美術の著作物の所有権をめぐる過去の判例でも「所有権は有体物を排他的に支配するにとどまり、美術の著作物自体を直接排他的に支配するものではない」としています。
(顔真卿自書建中告身帖事件 最判昭和59年1月20日)


著作権が「無方式主義」であるということは前々回にお伝えしました。
インターネットの時代になり、創作や表現の手段も飛躍的に増えました。皆さんが日ごろ目にするブログやメール、イラストにも当然筆者の権利が発生しています。

小室氏の事件をきっかけに「著作権」を正しく理解していただき、読者の皆さんがトラブルに巻き込まれるリスクが軽減されることを望んでいます。

第73回 小室氏事件から学ぶ著作権②

あくまで報道による情報ですが、小室氏は投資家に対し「全部僕に著作権がある」と言ったとか。
その際、楽曲のリストを提出したのか、806曲一括売却で10億円という価値をどのように換算したのか、など公判の中で明らかになるのであれば知りたいところです。

小室氏はプロデューサであると共に、作詞家、作曲家としても活躍していたのはご存知の通り。例えば渡辺美里の86年の名曲「My Revolution」は小室氏の作曲です。
このように、作詞者と作曲者が別で、それぞれに創作的表現を分離して利用できる著作物のことを「結合著作物」といいます。
仮に今でも小室氏が「My Revolution」の著作権を持っているとしても、権利を行使できるのは曲だけ。インストルメンタル利用ならともかく、楽曲に利用には作詞者の合意も必要となります。

結合著作物と混同されがちですが、複数で作成する創作物には「共同著作物」というものもあります。こちらは「分離して個別的に利用できないもの」を言います。結合著作物とは別のものです。
例えば座談会、討論会形式の著作物が「共同著作物」の典型例です。
マンザイなども、共同著作物になるでしょう。(コンビのどちらかが書いたネタ帳などは作成者が著作者になります)
共同著作物を譲渡する場合など、共同著作権を行使するためには全員の合意が必要となります。但し、合意を拒否するには正当な理由が必要です。この点も結合著作物と異なるところです。

このコラナビ北海道でも対談のコーナーがありますが、では著作権は誰にあると思いますか?
コラナビ対談は、対談内容を出来るだけ編集せずに掲載するようにしています。但し、対談者の了解を得て一部を削除したり「てにはを」を修正して読みやすくしています。
対談の内容そのものは、出演者の口述著作物ですが、若干修正を加えているのでコラナビ対談は「二次著作物」ということになるでしょう。
二次著作物であっても、対談出演者=著作権者にその権利が及びますので、出演者に無断でコラナビ対談を使用することは出来ません。

しかし、全ての対談やインタビューが同様というわけではありません。
インタビューの内容が予め決められていて、その答えを編集者が企画に応じて加筆修正した場合などは、口述者=インタビューを受けた人は著作者にはならないとされた判例もあります。「口述者は、単に文書作成のための素材を提供したに過ぎない」と判断された例です。
(東京地裁平成10年10月29日 スマップインタビュー事件)

第72回 小室氏事件から学ぶ「著作権」

小室氏による巨額詐欺事件の公判が始まりました。
今回の事件によって「著作権」というものが良くも悪くも注目されました。今後の裁判でも重要な争点になるでしょう。
小室氏は「作品の全ての著作権は僕にある...」そう言って、投資家を騙したとのこと。
では、なぜそんなに簡単に(?)騙されてしまったのでしょう。

小室氏が超有名人で、まさか人を騙すなんてありえないと思ったことがまずひとつ。
もうひとつは、著作権が『無方式主義』だということも大きな要因だと思います。
無方式主義とは「著作物を創作した時点で、著作者が著作権を取得する」ということです。
小室氏が作った楽曲はもちろん、アマチュアが作った歌にも著作権は発生しています。譜面に残していなくても、即興で歌った曲であっても、絵画でも小説でも、それがオリジナルである限り著作権が発生しています。

この点、例えば特許などは、出願→審査→登録によってはじめて権利を得ることになり、知的財産であっても著作権と大きな違いがあります。
特許の場合、登録されると「特許公報」に掲載されます。仮に小室氏が持っていた権利が特許であったならば、投資家は比較的簡単にその真偽を調べることができたでしょう。
著作権にも登録制度はあります(あまり知られていませんが...)。しかし、商業ベースで量産される音楽などについては、そのつど著作権登録されることは通常考えられません。
その代り、音楽出版社と小室氏の間には当然に著作権についての契約がなされていたはずですが、こちらは一般には知りうる内容ではありません。
投資家が慎重さを欠いたと思う面もありますが、相手が相手だけに信用してしまったのでしょう。

それでは、なぜ著作権は『無方式主義』なのでしょうか。

特許、意匠、商標などの工業所有権は「工業の発展」を目的としています。工業の発展のためには、誰が権利を持っているかを明確にする必要があります。
これに対し著作権は、同じ知的財産であっても「文化の発展」を目的としています。
著作権は、著作者の人格的な利益を保護し文化の発展に寄与するため『無方式主義』となっているのです。著作物をいちいち審査していると、逆に文化の発展を阻害すると考えられるからでしょう。(世界でも、現在は殆どの国が無方式主義をとっています)

また、著作権は「表現」そのものを保護の対象にしています。一方、工業所有権は「アイデア」を保護の対象にしています。知的財産に関する相談で、この点を誤解されている方がとても多いのです。
例えば、もしも小室氏が、どうすれば楽曲がヒットするかという独自のアイデアを持っていたとしても、そのアイデアは著作権では保護されません。著作権は、あくまで完成した楽曲を表現物として保護することになるのです。

第71回 価値創造のストーリー

「知的資産の棚卸」とは現況を再認識すること、と前回お伝えしました。
現況を再認識することで、『過去から現在』『現在から将来』をストーリー化することができます。そして従来とは違う、知的資産を考慮した事業計画を作成することが可能になります。
その際、次の2点について考慮しなければなりません。

① 自社の強み(知的資産)を過去から将来まで連携させること。
自社の知的資産が、どのように生み出され蓄積していったか、その蓄積をどのように維持し、強化(獲得)していくか、という具合に、将来の計画に一貫性を持たせることが重要となります。
この場合の自社の知的資産とは、何度も繰り返しますが、特許や著作権といった公に登録済みの資産だけではなく、自社の熟練技術やビジネスモデルなども含みます。

② 財務・非財務の連携
財務に関する目標は、企業が一般的に行っていることです。その目標の達成のために、非財務との連携を明確にする必要があります。
自社の熟練技術やビジネスモデルが、財務的な(定量的な)目標にどのように関連して実現されていくのか、この点についてもストーリーとして明確にする必要があります。

これらの情報をトータルしてまとめたものが『知的資産経営報告書』です。
知的資産経営報告書は企業にとってのステークホルダーに開示するためのものです。顧客や金融機関はもちろん、自社の社員に対しても開示することにより、社員が自らの責任と目標を再確認することができます。
知的資産経営報告書については、『中小企業のための知的資産運営マニュアル』を参考になさってください。

知的資産経営報告書は、「ストライクゾーン」を広げるためのものです。
企業が「知ってほしい情報」と、クライアントなどの対象先が「知りたい情報」がうまくかみ合わないことがあります。
知的資産経営報告書は、その偏りを防ぎ、理想的な開示情報を提供するための重要な手段となります。さらに、この報告書をもとに「経営革新計画書」を作成し、行政の承認を受けることで、クライアントとのストライクゾーンはさらに広がります。

北海道は厳しい経済状況が続くことが予想されます。
この状況とテコにして事業を拡大するために、事業を行っている方は「知的資産経営」を取り入れてみてはいかがでしょう。

*「経営革新計画」「知的資産経営報告書」作成は当事務所までご相談ください。当事務所は国際特許事務所と連携しています。知的財産に関してお気軽にお問い合わせください。

第70回 知的資産の「棚卸」とは

皆様、本年もどうぞよろしくお願いします。
連載100回を目標に、拙い文章ですがコツコツと継続して行きたいと思います。

今年は、何かと暗い話題が多い年明けでした。
経済の急激な悪化による閉塞感が、重たい雲のように広がっています。
いつの間にか「株価こそ企業の価値である」神話が社会に広がっていた中で、ご存知の通りリーマンショックが直撃したことが始まりです。

確かに上場企業にとって株価は極めて重要。しかし、そもそも本来、日本企業の底力は「技術力」だったはず。「株価」に偏りがちな評価を、修正する必要があります。
さらに、株価を公開していない大多数の中小零細企業は「どんな技術力を持っているか」を他社にアピールできることが急務です。
経済産業省が薦めている「知的資産経営」という企業分析は、技術立国としての自信を再認識する、という意味があります。
http://www.meti.go.jp/policy/intellectual_assets/index.html

「自社の技術力」というと、工業関係の会社だけの印象になりますが、知的資産は決して製造業だけではありません。サービス業やIT関連など、全ての業種が対象となります。
『自社の強みを認識する』
これは知的資産の棚卸の目的です。
具体的には、
① 過去実績の確認
② 自社の強みと弱みを確認する
その上で、<SWOTシート>で分析を行います。
SWOTとは企業の「強み」「弱み」「機会」「脅威」について、全体的な評価を行うことです。

何やら難しい印象になりますが、企業において普段行われていることを再認識するだけのこと。だから「棚卸」なのです。
例えば、特許や商標などを持っている企業はそれが明確な強みとなりますが、そのような「証明」までは至らなくても、アイデアやビジネスモデルを磨いている企業はたくさんあります。
小職のところにも、そのようなモデルを保護するにはどうしたらよいか、という問い合わせがあります。内容によって保護できるもの・できないものがありますが、自社の強みとして文書化しておくことが、その後のストーリーに繋がることになります。
(つづく)

第69回 感謝

いつも小職のコラムを読んでいただきましてありがとうございます。
仕事関係のネタが多いため、決して「おもしろい」コラムではないと思うのですが、バックナンバーも含め、本当にたくさんの方々に訪問していただきました。
思わぬ方から、「コラナビ、読んでるよ」と声をかけていただくこともあり、うれしい驚きです。

今年の秋以降、経済は大混乱となりました。本当の影響がでるのは来年の春くらいから、とも言われています。支店経済の北海道はより厳しい状況が予想されます。
そんな経済状況の中で生き残るために「知的資産」という言葉が、大きなキーワードになるでしょう。
お金や設備だけではなく、「社長の経営方針」や「従業員のクオリティ」や「優良な顧客や人脈をどれだけ獲得しているか」などなど、目に見えない価値をキチンと再確認しましょう、そして周囲にアピールしていきましょう、というのが知的資産経営の基本です。
中央にくらべ、資本力に乏しい北海道の中小企業こそ、この「知的資産の棚卸」が必要になります。
すでに、このコラムで2回ほど書かせていただきましたが、来年にかけて、この「知的資産経営」についてもう少し掲載したいと思います。

かつて行政書士は「代書屋さん」と言われていた時代がありました。
誰かに代わって書類を書く。確かにこの業務の基本中の基本です。しかし、士業といえどもスキルをあげていかなければ生き残れない時代です。
微力ながら社会の力になることができるよう学び、このコラムで発信してゆきます。どうぞよろしくお願いします。

皆様よいお年をお迎えください。   2008年12月25日

第68回 知的資産の「可視化」とは

前回お伝えしたように、知的資産経営とは「自社の有する知的資産を、どのように維持、管理、強化、改善してゆくかを再認識し、自社の強みとして生かしてゆくか」という考え方です。このような知的資産経営は、大企業のような特別な強みを持った企業ではなく、限られた経営資源しか持たない小規模の企業こそ実践すべき経営といえます。

企業の価値判断は、多くは財務諸表などの数字的なものに限られます。しかし、企業の価値を計るモノサシはそれだけではありません。
例えば、とある製造業の企業に卓越した技術者Aさんがいるとします。
Aさんが自社製品の開発や改良にどのようにかかわり、過去において実績をあげてきたか。
Aさんの実績(製品)が市場においてどう評価されてきたか。
Aさんがスキルを身につけることができた社内環境とはどのようなものか。
など、企業の強みといえる「資産」です。
さらに、Aさんのスキルを企業がどのようにデータベース化して、残しているか。あるいはスキルを他の社員に継承するためにどのような方法をとっているか。
それらをまとめることにより、企業の強みを明確にした「知的資産」となります。
 
本来は目に見えない価値や技術を可視化するために報告書にまとめたものが「知的資産経営報告」です。
この知的資産経営報告をステークホルダー(取引先、金融機関、従業員、株主、地域社会など)に開示することで自社をアピールし、事業の拡大に繋げることが報告書作成の狙いです。

報告書による情報の開示内容は、企業によって様々ですので、特定の書式があるわけではありませんが、標準的な4つのステップに分けることができます。
最初のポイントは、自社の強みを認識する=知的資産の棚卸から始まります。