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第9回 NPO法人ほっかいどう増販情報センター 理事 鹿内 幸四朗さん

3. 全員が幸せにならなければビジネスは成功しません

それからちょうど1年後の平成14年の7月、札幌に出てきました。札幌に買ったマンションで、妻と義母との三人暮らしです。
当時の事務所は現在のビルの1階。僕と細川という社員と、二人だけの事務所です。私は32歳。細川は25歳でした。
出てきたばかりですので、お客様はいない。知り合いもいない。電話も掛かってこない。毎日暇でした。それでも9月くらいまでの3ヶ月間は楽しい気分でいられたんですが、さすがに秋を過ぎて雪が降り始めると、だんだんと不安になってきます。
本社からは「お前、(札幌に)行きたいって言ってたくせに、なんだそのザマは」と叱られます。だんだんと雲行きが怪しくなってきたわけです(笑)
でも、僕はそれまで飛び込み営業なんてやったことがないですし、どうやってお客様を増やせば良いかもわからない。半年間でなんとか10件くらいお客様が増えたんですが、毎月赤字です。これは大変だぞと


はい


そんなときに、ある出来事がありました。
札幌に出てきた翌年、平成15年の6月3日に、娘が生まれました。「あかり」と言う名前です。もうじき6歳になります。
娘が生まれる前までの僕はとても嫌なヤツでした。お金をくれない人には目もくれないような「クレクレ星人」だったんです。
実は、娘はダウン症という障がいをもって生まれてきました。生まれたその日に、医者から説明を受けました。白血病になる確率とか、二十歳まで生きられる確率とか...。いろんなマイナスの情報を叩き込まれたんです。泣きました。一生分泣いたかもしれない。
二日ほど仕事を休ませてもらって、三日目から出社したのですが、たまたまその日が(弊社代表の)中野と一緒に小樽に出張の日でした。でも涙が止まらないんですよ。
「先生、僕は今日運転できないかもしれません」とつい言ってしまいました。
事情を知った中野も一緒に泣いてくれて、なんと「わかった。俺が運転してやる」とまで言ってくれたんですよ。
さすがにそんなわけにはいきませんので「いえ、大丈夫です。僕が運転して行きますから」と涙を拭って気を取り直して...。
二人で小樽のとある財団の総会に出席したあとの帰り道、中野が「鹿内くん、日銀の博物館に行かないか。前から見たかったんだ」と言うんです。
「何もこんな時に博物館なんてどうでもいいじゃないか...」と内心思いながらも二人で博物館に行きました。はっきり言ってその時の僕は心ここにあらずでした。でも、それは「少しでも気が紛れるように」という僕への気遣いだったんです。後になってそれが判ったのですが、凄く嬉しかったですね。
「ああ、この師匠で良かった。間違いなかったなあ」とその時に思いました


はい


義理の姉が看護師なのですが、「ダウン症って病気じゃないからね。近眼の人を病気だって言わないでしょ?それと同じだから」と言われました。1000人に1人の割合で起こるDNAの突然変異なんです。
娘を見つめながら「ああ、僕はこれからどうやって生きていこうかなあ」って思ったんです。もしかしたら、障がいで喋れないかもしれない。立てないかもしれない。長生き出来ないかもしれない。そういう思いを僕たち夫婦が背負って生きていかなければならない...。
将来この子に「パパはどんな仕事をしているの?」と訊かれた時に「人の役にたっている仕事だよ」って言えるような仕事をしようとその時思ったんです。「ああ、僕は今までなんて小さな人間だったのだろう」と思いました。
そこから仕事に対するスタンスが変わりました。いえ、仕事だけではなく「生き方」が変わりましたね


はい


セミナーなどで、よく「楽しいことは正しいことである」というお話をします。でもお金に目が眩むと、楽しいことが分からなくなる時があるんですよ。
少なくとも「三方良し」が実現しないと絶対に幸せにはなりません。ビジネスを成功させようと思ったら、全員が幸せにならなければ成功しないことになっています。これはどんな本を読んでも書いてあります。
「お客様」も「会社」も「スタッフ」も、少なくとも僕の中ではこの三方が全員幸せでなければダメです。お客様もスタッフが幸せでも会社が儲かっていないとか、会社が儲かってスタッフが満足でもお客様がそう思っていないとか、これではダメなんです


はい。なるほど


ですから増販塾も、三方が幸せになって初めて「楽しい」んです。それが出来ていないと正しくない。「楽しいことは正しいこと」の理論はそういうことです。ただ面白おかしいことをやればいいということではないんですよ。
面白いと思う価値観を共有できる「お客様」と「スタッフ」と「僕」、この3つの関係が整うと、失敗する確率が非常に低い。そのためにはまず僕たちがまず楽しむことがベースになります。講師を引受けてくれる仲間とスタッフと僕とが楽しいと思うことならばそれでいい。そして、その楽しさを共有できるお客様だけが来てくれたらそれでいいんですよ


はい


娘が生まれて、生き方のスタンスがそのように変わりました。 つまり、パパが楽しく活き活きと働いていること。お客様が喜んでくれること。これが、父として恥ずかしくなく子供に見せられることだろうと...。「あなたのお父さんの仕事はなに?」って娘が人に訊かれたときに、「お父さんは人の役に立つ仕事をしているの」って答えてもらいたい。 そう思ったときから、「クレクレ星人」は辞めました。お金くれという前に、自分は何が出来るかをまず考える。そういう思考のパターンに少しずつ少しずつ変わっていったんです。 それは娘が障がいを持って生まれて来たからかもしれません。それくらい僕の中ではショックな出来事でしたから...。幸いなんの合併症もなくすくすくと育ってくれて、人様から可愛がられる娘になってくれたので、今は安心しています。 僕の活動の原点は、娘が生まれたことから始まったと言っても過言ではありません


(第4回につづく)
(2009年04月16日)

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