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第7回 風月株式会社 代表取締役 二神 敏郎さん

商売は「双方向」。一方通行では成り立ちません

はい。なるほど。
社長は、「ここが良い」という直感のようなもので、あまり調査をしないで「温泉」(施 設を)を借りたと聞いたことがあるのですが


『商人はどこからでも養分を吸い上げられる浮き草でなければならない』という言葉 があります。
この言葉は、商人として、あるいは人間生きていくために、当然のことだと思います。
ただ、新しいことに対応が出来ないとせっかくのチャンスを逃がしてしまう。かとい って、あれもこれもとやっていると失敗します。
そこには「直感」のようなものがなければダメなんだろうなと思います。

そのお風呂(温泉施設)も、多分北海道で一番繁盛しているんじゃないかと思います。
いやそうじゃない、もっと繁盛している店があるよ、と怒らるかもしれませんが(笑)
大体今、(一ヶ月に)7千人から8千人くらいのお客さんが来るんです。土日だと一日 に三百人以上です。こんな小さな風呂屋にこれだけ多くのお客さんが来てくれる。し かも銭湯なんて周辺の人たちだけでしょうからね。

それはなぜかというと、やっぱり、「自分がそこに入って嬉しいという気持ち」だと思 います。自分が嬉しいと思うからお客さんに喜んでいただきたい。
それはどの商売にでも通じることだと思います。
商売は「双方向」です。お客さんに対してはもちろんそうですし、従業員に対しても そうです。

一方通行で「雇ってやっているんだそ」という気持ちではなく、「君たちがいなかった ら、我々の商売は成り立たないんだよ。ありがという」という思いが大切なんですね。
得意先に対してもそう。お互いに利益を得ないとならない。だから凄く値切ったりと か困らせるようなことを言っているとバランスが成り立たなくなります。
そこまで言っても「双方向」を忘れてはダメだと思います


「双方向」ですか。なるほど、そうですね


ちょっと話が変わりますが、今名寄でイオンの工事が始まっているんですね。
地元では反対運動が起きたのですが、認可おりて工事を進めている。
でももし僕が経営者なら、町から反対されているからやめようと思います。下がるこ とも必要だと思います。
売り上げの目標が100億らしいのですが、今の名寄の市場は50億くらい。そこに どうして100億の売り上げになるのでしょうか。

今、名寄の人口は2万人。周辺人口入れて7万人くらい。でも周辺といっても稚内と か紋別とかその辺りまで含みますからね。東京の周辺人口とは全く違う。
地方になればなるほど老齢化が進んでいますから、お年寄りも多い。産業もないです から低所得者も多い。
(イオンが)出来たらそれは見に行くかもしれない。オラが町の誇りになるかもしれない。でも、人口2万人の、しかも高齢者が多い町で、いったいどれくらいの集客があるのでしょうか。まして、ずっと続いてきた地元の商店がありますから、一時的には新しいところに行くかもしれませんが、やっぱり地元の商店に戻るかもしれない


はい。そうですね


無用な喧嘩を仕掛けたりとか、強者の驕りとか、なんでも「オレが一番」という気持 ちでいると「双方向」の商売ではなく一方通行ですよね。
グループが大きくなればなるほど、ウチのグループだけ儲かればよいということで、 見えなくなってくるものがたくさんあります。管理部門もサラリーマン化していきま すから、気力もなくなってくる。

そう考えると「小さな集団」でいいな、と思います。「商人」は商人以上のことをして はいけないな、とも思いますね。
決して人を批判することは本意ではないのですが、自分の肝に銘じていることは、「売 り上げだけを追求してはいけない」「店舗数の多さを追求してはいけない」と思ってい ます。商人は商人らしくということです


経営者ではなく商人になるために大切なことはなんでしょう


そうですね…。
商人が成長して経営者になっていくのでしょうけど、「商人として根本にある気持ち」を忘れないということだと思いますよ。
最初が苦しかったら、簡単に忘れることはないと思います。 床屋さんだって、町の魚屋さんだって、商人ですよね。町の信頼を得ていかなければならないわけですから。
相手を騙すようなことは、1回はできるかもしれませんが、続いていかないですよね


確かにそうですね。
ここ最近、食品の偽装や不正表示などの問題が続きましたね。
二神社長のお考えになる企業の姿は、「お客さんに喜んでいただきたい」と言う気持ちがまず根本になければいけないということでしょうか?


そうです。経営者の姿勢を見せる。腰が低くなければならないと思います。
僕は、店をまわるときでも、できるだけ普通の格好をしています。
ネクタイは締めていますが、上着はできるだけ白衣でいるとか。
(上等な服などの)いい格好をいつもしていると、「そんな金があるなら、ウチらの給料あげてくれ」と従業員に思われるかもしれませんし。(笑)
「謙虚」だとか「素直」だとか、「双方向」という気持ちを忘れなければ、本当にいい経営者になれると思います。
僕は、次の経営者に申し送ることは、まず「人に感謝する」ということです。
これは口では簡単に言えるのですが、あらわすは難しい。
自分の実感として周りに示していく。これしかないのかなと思います


感謝という言葉がありましたので、「風月」さんのお店の名前の由来をお聞かせいただきたいのですが。
確か、人に感謝するという意味で付けられたお名前ですよね?


小さな3坪の店から始まりましたので、帆掛け舟に例えたんです。
帆掛け舟は風が吹かなければ前に進みません。
風というのはお客さんのことです。
お客さんという「風」が、日々月々大きく吹いてほしいという気持ちから 名づけた店の名前です。
今になって、良い名前を付けてよかったと思いますよ


お客さんあっての風月ですよ、という意味なんですね


はい。
それと、もうひとつ。(今の仕事が)自分の人生にぴったりだったと思うことがあります。
お好み焼は粉を混ぜて、ウラもオモテもまんべんなく焼きますね。
人間もウラオモテがない人が好かれますよね。それと似ているのかなと。
それに、焼いていると自然に(カタチが)円くなりますよね。円いものを暖かい鉄板の上で食べて、喧嘩する人はいないんですよ。
1杯のラーメンを3人でつついたら、なんだかいやらしいけど、お好み焼だったらみんなで食べられますよね。こんないい食べ物はないなーって思うんです


なるほど。そうですね


お好み焼は人生そのものかなって思います。
家族みんなで、おじいちゃんおばあちゃんにも食べてもらえる。 これは幸せなことです


ラーメンだとひとりですするだけだし、カニだと黙々と食べるだけですし(笑)
お好み焼はみんなでわいわいと楽しみながら食べることができますよね


そうですね。
家族みんなで食事に行こうというのは、誰でも持っている願望です。
家族で食事に行こうとするとき、「何食べに行く?」となったら、それぞれ違いますよね。子供はハンバーグが食べたい、おじいちゃんおばあちゃんは違うものがいい。
そんな時、お好み焼なら、みんなでまとまって食べることができます。
おじいちゃん、おばあちゃんは孫の顔を見ながら、話しをしながら食事をすることができます。
そういうひと時を提供できるのはとてもありがたいことだと思います。
本当にいい商売だと思いますよ



(2008年01月24日)

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