絵は、何度も重ね塗りをするんですか?
いろいろなやり方があります。
今は洋絵の具があるから、赤い色とかは1回(塗り)で済むんですけど。
本焼きは、1245度で22時間くらい焼きます。そうすると、このようなガラスのような感じに仕上ります
光っているような仕上がりはどのように?
これは、ガラス質の釉薬(ゆうやく)を、絵を描いた上にかけるんです。
釉薬をかけないで仕上げるのを焼き締め(やきしめ)っていいます。
「ふくろう」などは、釉薬をかけてない焼き締めですね。
全部焼きあがってからさらに色をいれるには、上絵(うわえ)といって、800度で4時間くらい焼かないといけないんです

出しにくい色ってあるんですか?
う~ん。今はいい絵の具がたくさんあるけど…。
どちらかといえば、黄色とか難しいかな。
洋絵の具で描くと色が透き通っていないんだけど、本来の絵の具(和絵の具)で描くと透明感が出るんですよ。そのぶん、黄色とか赤とかが難しいですね。相当絵の具を盛らないと色が出てこないんですよ
それも焼いてみないとわからないんですか
そうですね。焼いてみないと仕上がりの色はわからないです。
繰り返し焼いて、身につけていくしかないんじゃないかな
焼きあがって色が気に入らなかったらもう直せないのですか?
上絵だったら直せます。ちょっと違うなと思ったら、再度上絵を塗って焼きます。
ただ、何回も焼くと、溶ける温度も違うので、微妙に(窯の)温度を変えなければならない。それは熟練の勘になりますね。
例えば、赤い色が薄いからもう一度(絵の具を)のっけて800度で焼くと、今度は周りの色が焼きすぎて変わってしまうんですよ。だから周りの色の解け具合を考えながら、5度とか6度とか、温度を下げていくわけです
そのあたりの微妙な温度調節とかは、長年の経験で覚えるのですか
そうです。長いことやっていないとわからないですね。
だから久谷焼きの器に絵をかく職人さんなどは、相当な技術がないと描けないでしょうね
前にお勤めされていたときに九谷焼も勉強されたのですか
ええ、かなりの作品を見てます。友達もいましたから
顔料は主に日本の昔からのものを使っているのですか
久谷焼きなどは、殆ど国産のものですね。
ガラスの粉の中に色をいれて上絵で作るんですけど、昔と違って、今はいろんな規制が出来て使えない色がたくさんあるんですよ。鉛毒の関係で。
なぜかというと、色を綺麗に出すためには、どうしても亜鉛とか鉄がいるんですよ。でもそうすると鉛毒の問題が出てきてしまうわけです。
器の顔料として焼いたからといって、影響がでるとかあまり聞いたことがないんですけど、今は世界中でうるさいですからね。
微量でも(亜鉛や鉄が)入っていないと色が出ないんです。洋絵の具を使うようになってからは、昔のものとは変わってきてますね
佐藤さんが使っている絵の具も洋絵の具ですか?
今は殆ど洋絵の具ですね。
器として使うためには、検査のことなどを考えるとそうなってしまいます。
ですから、昔の古伊万里などは、飾りとしてはいいけど器として使うとなったら殆ど許可にならないんじゃないですか
顔料の鉛毒ということですか
そうですね。
そういう点では、この世界も難しい時代になりましたね。
初代の柿右衛門さんが、柿の色の赤を器に出すために何十年もかかったと言われています。それは何故かというと、酸化銅の焼き方によって、窯の中に酸素の量で、グリーンになったり赤になったりするわけです。それを発見したのは柿右衛門さんなんだけど、今の時代でそんなことをしたら検査で撥ねられてしまいます。
結局は洋絵の具を混ぜて、色を出すしかないわけですよ
日本の絵の具と洋絵の具とではそんなに違いがあるのですか?
アメリカなどで器に使ってる絵の具は、金属中心の顔料ではないんですよ。
でも、本来の綺麗な色を出すには金属が必要です。銅とか亜鉛とか…。そういうものを溶かすと色が出る。それは江戸時代からずっとやってきた方法です。
そのやり方の方が綺麗で透き通った色が出るんですけど、今の時代は許可にならないから科学的に安全な方法で作るしかない。そうすると、色は似ていても透明感などがなくなってしまいますね
昔の伝統工芸には殆ど使われていたんですね?
そうそう。昔のものはみんなそうですよ。だからあんな綺麗な色が出てるんです。
だから、当時と同じ色を現代に再現するのは凄く難しいですね。色自体が違いますから。
その中で、昔と同じようなものを追求していかなければならないので、大変ですけどね

制作過程の中で、一番手間がかかるのはどのようなところですか
やっぱり絵ですね。
絵を描くというより、構図というか…、何を描くかを決めるまでが大変です。それが一番時間がかかります。
例えば、「器に魚の絵を描いてくれませんか」と言われたときに、魚の絵をどういう風に描くか、決めるまで一番悩みます
下書きを紙に描いたりするのですか
そうです。必ず鉛筆で何度も描いて、その後に絵の具で色を入れたりします
紙に描いたものとは同じにはいかないのでしょうか
全く違ってきますね。でも、紙に描いてデザインを頭に入れておかないと実際に器に描けないですよ。筆一本の世界ですから…。絵を暗記するくらい何回も描きますね
洞爺湖の風景画(絵皿)がありますよね。スケッチしてきたのですか
そう。現地でスケッチしてきたものです。
風景を描くにしても、一部分だけじゃなくやっぱり全体がわからないと自分の書きたいものは描けないんですよ。そのへんのこだわりは大切ですね。そうしなければ「ごまかし」になってしまいますから
紙に描くのも大変なのに、器に描くわけですからよけいですよね
器に描くというのは、陶画以外は、まっ平らというのはないわけですから、慣れないと描けない世界です。
僕らは湯のみの中にも絵を描けるけど、筆先なんて殆ど見えないわけですから、いかに描きなれるかなんですよ。感覚だから
器の内側って描きにくそうですよね
そうですね。筆を長く持って描くんですけど、慣れですね。
不思議と手に持ってないと描けないんですよ。どんなでかいものでも、下に置いて描くってことが出来ないんです。
紙だったらイーゼルで固定して、とかでしょうけど、器は不思議と持っていないとダメですね。
上手くなるには、いろいろな人に見てもらうことだと思いますよ。人目にさらされるってことがとっても大事です。相手が何も言ってくれなくても、わかるものですよ。
ギャラリーなどでも、気に入った絵の前では立ち止まり方が違うじゃないですか。
丸井のギャラリーで最初に個展をしたときも、立ち止まって見てくれるだけで凄く感動したんです。そんな気持ちがあると、次ももっと上手くなれるんですよ
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第2回 絵の具が違うので、昔の色を出すのは難しいです
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/932
コメントする