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第4回 イラストレータ・絵本作家 佐藤正人さん

第3回 札幌のデザイナーはもっといろいろな作品を見たほうがいいと思いますよ

当時、断った仕事ってあるんですか?これはできないよ、みたいな


札幌に戻ってからしばらくはいろいろな仕事を受けてましたから、断ったというのは殆どないと思います。
でも、ひとつ覚えているのは、「北大の教授が本を出すのでその本に載せるイラストを描いてほしい」という依頼が(プロダクション経由で)あったんですね。で、線画のサンプルを持ってその教授のところに行ってくださいと言われたので、その教授に会いにいったわけです。ところが、その教授の専門が「解剖」だったんです


あ~、医学部だったんですね


そうそう。その教室の案内されて絵を見てもらって「じゃあ、サンプルをもってきますからその絵を描いてみてください」といわれたんです。で、持ってきたサンプルが、なんていうのかな...、かなりリアルなサンプルで(笑)


人体模型みたいな?(笑)


そう。『人体の不思議展』にあるような...(笑)。子供か女性かわからないけど、顔の半分の皮膚がなくて、筋肉がよくわかるようになっているサンプルで...
えーっ!て思ったんですけど、まあその絵を描いていたわけです。お昼になって、教室の学生たちが、そんなサンプルの前で普通に昼飯を食べているのが凄いな~と(笑)


デザインイラストというよりも医学専門書のイラストだったんですね


そうですね。一応サンプルのイラストを書き上げて先方に渡して帰ってきたんですけど、後日こちらからお断りしました。
確かにかなり数がある仕事だったので、それなりの金額になったと思うんですが、サンプルが夢に出てくるんですよ(爆笑)。あそこに通うと思うとさすがに精神的に厳しいな...と。
これまでに来た仕事の中でも断った仕事の中でも、一番印象がありますね(笑)


プロフィールを拝見すると、これまでの数々の受賞歴がありますが、一番嬉しいと思ったものは?


自分の中で一番嬉しかったのは、2001年に受賞した「けんぶちふるさと絵本大賞」(上川郡剣淵町絵本の館)ですね。それが『ムーニャとほしのたね』というこの本です

ムーニャとほしのたね・表紙

あー。これはいい絵本ですよね~


剣淵町にいたイラストレーターさんと10年以上前からお付き合いがあって、何人かのイラストレーターが集まって「ドリーム展」というのを毎年春に開いていたんです。その10年記念だったと思いますが、剣淵町絵本の館で絵本を公募してコンクールをすることになったんです。
剣淵には毎年行っていたので、「ああ、じゃあ自分も何か絵本を創って応募してみようかな」と思ってたまたま描いた本が、大賞の受賞になったんです


たまたま応募して大賞を受賞してしまうあたりが凄いですよね(笑)


この本(ムーニャとほしのたね)は、応募しようかなどうしようかなと随分迷っていて、締め切りの一週間前に、やっぱり出そうと決めて一気にわーっと描いた本なんですよ


絵本ですから当然文章も書くわけですよね。文章から先に書くんですか?絵のほうですか?


これは文章ですね。というか、わりと平行して頭の中でビジュアル的なものも浮かべながら書いています


他にも絵本をたくさん創っていますが、だいたいその方法ですか


そうですね。あるいは何かビジュアル的なヒントのようなものがポンッとあって、そのビジュアルの組み立てを考えたり膨らませたあとに、後付のような形で文章をつけることもあります。でも、だいたいはビジュアルのイメージと文章のイメージが平行して出てきますね

ムーニャとほしのたね

イメージが沸くような普段からの訓練とか鍛錬とか、そのような方法ってあるんですか?


訓練とは違いますけど(笑)いつもスケッチ的なものを続けていますね。スケッチといっても普通のスケッチではないんですが...
今、自宅から事務所まで歩いて通っているんですが、その間にも四季折々の風景がありますよね。例えばドングリが落ちていたとして、そのドングリをモチーフにして何か描けるなっていうヒラメキをピンと感じるときがあるんです。そうするとすぐに小さなスケッチブックに、絵とか文章とかのラフ書きをして、そういったメモのようなものを貯めてあるんですよ


う~ん。なるほど


ですから、実際に何かカタチにしようとしたときに、貯めてあるスケッチを改めて見直して、ああ、やっぱりこのイメージがいいなと思ったら実際に本や作品にしていくわけです


そういった日常の訓練というか、習慣はずっと昔から続けていたのですか


そうですね。昔から「モノを見る」ってことをずっとしてきてます。 先ほどの銀座のギャラリーのこともそうですけど、今でもいろんな展示会やギャラリーに行きます。絵だけじゃなくていろんなジャンルのものを...
やっぱり見に行くと刺激をもらえるし、ヒントになるし...。個展などに行くと作家さんがそこにいることが多いので、作家さんと話しをしてそこから新しい繋がりができたりもしますよね。足を運ぶといろんな広がりがあるので、今でも時間があるとあちこちに行くようにしています


年をとると気持ちが汚れていくじゃないですか(笑)そうならないようにクリエーターとして気持ちを保つって大変な作業なんじゃないかって思うんです


う~ん。確かにそれはありますけどね。(気持ちに)アカがついたり錆びたり(笑)
今のクリエーターの人たちも新しいことにトライしたりしてますけど...
でも比較して申し訳ないけど、東京の人に比べてこちらのデザイナーやディレクターはモノを見ていないと思うんですよ。東京のデザイナーやディレクターは時間があればギャラリーに行ったり、いろんな情報を得るためにパーティに出たりとかしているんですね。
そこから新しいイラストレーターを発掘したり、デザインの勉強をしたりしてるんです。
でも、こちらに戻ってからずっと感じているのですが、そういう人が札幌は少ないですね


それは何故でしょうね?見る場所が少ないということですか?


いえ、そういうことではなくて、展示会などでも意外と一般の方はよく来てくれるのですが業界の人が来ないんですよ。なんででしょうね(笑)出不精なのか、あるいはそういうものを求めていないのか...


それはココロに水をあげるような作業ですよね。継続するかどうかで、随分違ってくるんでしょうね


そうですね。自分のポケットをたくさん持っていても、常にそこにモノを入れておかなきゃならないですよね。そのためにいろんなモノを見るということは必要だと思うんですけど...


イラストレーターの後輩などにも、そうしたほうがいいよって伝えているんですよね


そうそう。イラストレーターとかデザイナーって、横文字商売だから一見派手なイメージだけど、意外と地味な人が多いんですよね(笑)どうしても仕事場に引きこもってしまう。だから余計にいろんな場所に行ったほうがいいよ、とは言っていますけど、出不精な人が多いみたいで、もったいないなと思いますね


(第4回に続く)
(2007年10月18日)

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