今回からコラナビ書評に参加することになりました中山柊(ナカヤマ・シュウ) と申します。先輩のタケダフミトさんに負けないように、おススメの良書をどんどん紹介して行きたいと思います。よろしくお願いします。
あぁ、なんだろうこの気持ち...。
読み終わった時、泣きたいような笑いたいような、いわくいいがたい「あぁ」を喉元に感じさせる小説がたまにある。
胸のうちから、あたたかな、あかるいものが無尽蔵にわいてくる。このあたたかさをなんといおう。目には見えず、手で触ってたしかめられないこのものを。
(帯に引用されている短篇「いい日」の一節より)
著者朝倉かすみは道産子だ。小樽に生まれ、石狩、稚内に住んだことがあり、いまは札幌で暮らしている。
だから「ともしびスーパーマーケット鳥居前店」は、円山第一鳥居前にあるあのストアがモデルなのかもしれない...と、札幌に住む者は思ったりする。
が、こんなスーパーは、日本全国どこにでもあるものだ。どこにでもあるふつうのスーパーで、エコバッグを肩にかけて、夕げの献立をみつくろっているお隣りの客の日常...。
本書はそんなふつうの人々のささやかな仕合わせが連鎖する、連作短篇集だ。
読むとこちらも仕合わせになる。
思いを寄せる佐藤ミガクに「なんだよ、カトゥー」と呼ばれて一歩前進と思いながらも...
しかし、「カトゥー」と呼ばれているうちは友情以上のものは育たない気がしてならない。
加藤シズクの十四歳の恋心とか...。(「ピッタ・パット」より)
八月サなったら、せづなくなる。テンコテンコと祭り囃子が胸の鼓動をぐんぐん速め、「ヨーイヨーオイ」のかけ声が地鳴りみてたに肚んなかを突きあげてくる。帰りたくて帰りたくて、いてもたってもいられねぐなる
後町広蔵(ウシロマチ、コウゾウ)のふるさと江差への郷愁とか...。(「流星」より)
小気味いいリズムでたたみかけるように綴られた描写なのに、いつのまにやら「せづなく」なるのはなぜだろう。
なにか点すものを...あるいは点るものを切望している自分の姿に気づかされてしまうからだろうか。
この、何とも云えないイタガユイ感じ...それがどうにも気になってならず、新刊が出ると必ずチェックしてしまうのが、朝倉かすみの小説だ。
今回は気になるポイントが他にもあった。
朝倉かすみはこれまであとがきを書かない作家だったのに、本書にはこれも作品だろうか?と思わせるような、胸を打つあとがきがあるのだ。
読めばなるほどとわかる。
書いてはボツにされる確率が高かった新人時代に、掲載されるあてもない連作短篇を書かせてくれた編集者への謝辞がせつせつと述べられている。
その語り口は「思い入れ」が嫌いだとしてきたこれまでの著者の弁とは別のもので、俄然興味がわいた。
これに触れ、書評家の豊﨑由美は『本の雑誌』10月号で、
『ともしびマーケット』は
「あとがき」から読んで下さい。
と、まで言及している。
作家と編集者と書評家の関係って何なのだろう...?
そんな疑問に応えてくれそうな絶好の機会が10月に札幌である。
札幌市中央図書館が、秋の図書館フェスティバルで催す文字・活字文化の日制定記念トークショー
『三つの読書』が、それだ。
作家朝倉かすみと、編集者木村由花、書評家豊﨑由美の講師三人が、それぞれの本の読み方を語り合うトークイベント。
木村由花はYonda?パンダでおなじみの新潮社の文芸雑誌『yom yom』の編集長。
トークショーに先んじて、10月1日からは講師三人に関連した展示もあるという。
『ともしびマーケット』の生原稿や、豊﨑由美20代の写真、木村由加花編集長からは雑誌のゲラなども供出される。
こんな鼎談は滅多にない。
しかも入場無料。
秋のひと日を図書館で過ごすのはどうだろう?
●文字・活字文化の日制定記念トークショー
『三つの読書』
~作家・編集者・書評家、それぞれの本の読み方~
日時:2009年10月31日(土)
15:00-16:30(開場14:30)
会場:札幌市中央図書館3階講堂(札幌市中央区南22条西13丁目 )
入場無料・定員180名
*応募要項、詳しい内容は札幌中央図書館までお問い合わせください
(申込締切10月9日消印有効)
札幌市中央図書館管理課普及係 電話:011-512-7330
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 『ともしびマーケット』朝倉かすみ著(講談社)
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1945
コメントする