今年の日本は梅雨前線がどっかと居座り、北海道でさえ日照時間が平年の半分以下とか。曇り空を恨む日々。ところが晴れたら晴れたで、暑いようと太陽を睨む。まあ、人間なんて勝手なものです。
今回紹介するシリーズは、暑いだの寒いだの言ってる場合じゃないほどの過酷な世界を明るく照らず人のお話。なんせ南極ですから。

「南極観測隊」というコトバはずい分昔から耳にするけれど、では現地で実際にどんな生活をしているのか、まして何を食しているかなんて殆ど知らない。
昭和基地からさらに1000kmのかなたの南極ドーム。標高3800メートル。冬は太陽が昇らない。平均気温マイナス57度。そんな場所での越冬生活はどんなものだろうなどと一般人には想像するだけ無駄ですね。
食事はさぞや味気ない簡単なものばかりだろうと思っていたらさにあらず。こんなに豪華なもの食べてるの?と言いたくなるほどのメニュー。でもそうでもしないと、精神的に参ってしまうでしょう。美味しいものを食べることだけが数少ない「喜び」なんだろうな。それだけに、料理人西村淳隊員の役割はとても重要。
たとえば某隊員の誕生日会のメニュー。
味はともあれ、食い過ぎた盆、確実にこの夜だけで8kgは増えた
- 牛もも肉のカルパッチョ
- 鯛のロースト、香草風味
- スカンビのソテー、ブラックオリーブ風味
- タンステーキ、バルサミコソース
- ブルーチーズのラビオリ、サワークリームソース
- ペペロンチーノ
- フェットチーネ
(「面白南極料理人」盆の誕生日、より)
盆暮れに限らず、隊員たちは何かと理由をつけては宴会をしていた様子。まあそうでもしなければ「やってられない」過酷な世界なんでしょう。
ヤケクソってわけじゃないでしょうが、この隊員たち、マイナス40℃の世界で、「ソフトボール大会」をしたり「露天風呂」に入ったり、「ジンギスカン(もちろん野外)」を楽しんだり(?)してしまうほどの猛者ばかり。
マイナス40℃でジンギスカンパーティーを行うと、どんな風になるか説明しよう。まず焼けた肉や野菜は皿に盛って、その後おもむろに口に持っていく通常の過程は不可能。焼けたら速攻で口に投入しなければ、たちまち、ほんとにガチガチの冷凍状態に逆戻りしてしまう。(中略)
飲み物類は、缶ビールは空けてから1分以内に空にしなければただの苦い氷になってしまうし、日本酒は紙コップにいれてものの数分でシャーベット状に変身。かろうじてウォッカやウィスキーは持ちこたえるが、これも20分くらいで瓶の中に氷の柱が立ってくる。
(「面白南極料理人」作業と宴会の日々、より)
何もそこまでして...とも思うが、狭いドームに籠っているよりはストレス解消になるのだろうね。
シリーズ第2作「面白南極料理人 笑う食卓」になると、料理のレシピまで書かれている。いったいなんの本なのか一瞬わからなくなる。
レシピは略すけど、材料から作り方まで書かれているこんなメニューの数々。
鮭のブイヤベース
キャバラ鍋(キャベツの豚バラの鍋)
手羽水炊き
豚バラちり鍋
最後のお楽しみカレー
(「笑う食卓」南極名物2泊3日鍋、より)
う~ん。美味そうだなあ。
南極生活がユーモアたっぷりに描かれているこのシリーズは現在4作目。最新作「面白南極料理人 名人誕生」は、作者西村淳氏が料理人として越冬隊に参加するまでのエピソード。
ちなみにこの方、北海道出身です。
我が故郷北海道では、頭の良い奴が行くのはまず北海道大学で、たとえ早稲田、慶応に現役合格したとしても「そんなに頭が良いのなら何で北大に行かないのだろう?」の言葉で片づけられる。
ついでに言えば、京都大学や大阪大学など現在暮らす関西で、地元の秀才が泣きながら目指している超一流大学といえども、道産子の頭の中では、北大の下に位置づけられている。
(「名人誕生」東大が現れた、より)
なんとも豊かな郷土愛で笑えます。
ようやく夏らしくなってきた北海道。短い夏の避暑に怪談を読むのもいいけれど、このシリーズを読んで笑いながら涼しくなるのも楽しい。
「南極料理人」
「笑う食卓」
「お料理なんでも相談室」
「名人誕生」
の4作品。どれもオススメです。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 『面白南極料理人』シリーズ 西村淳 (新潮文庫)
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この方が、上橋菜穂子さんの『守り人』シリーズに出てくる料理を再現した本を出されるとかいう噂です。