なるほど情報ウェブマガジン【週刊コラナビ北海道】毎週木曜日更新

週刊コラナビトップコラナビがオススメするこの一冊

コラナビがオススメするこの一冊

『ゴルフの神様』夏坂健 (講談社)

<活字のチカラを信じたい>   タケダフミト

3月の声を聞くとわらわらと登場してくるのがワラジ虫とゴルファーたち。北国の春はまだまだ遠いというのに、少し気温が上がると反応してしまうそそっかしさがよく似ている。(ああ、のっけからゴルファーを敵に回してしまった)
今回ご紹介する本は、そんなそわそわゴルファーはもちろん、クラブを握ったことすらない人も楽しめる名作エッセイです。

「人生にゴルフがある幸せ」

ゴルフの神様

「ゴルフは紳士のスポーツ」だと言う。ホントかなあ。
ぼくはお付き合い程度のダッファー(へたくそなこと)だけど、それなりにいろいろなゴルフ場でラウンドしてます。でも、傍若無人なおとっつぁんは何人も見たけど、紳士には会ったことがない。そもそも夏坂健を読んだことのある人に出会ったことがない。

夏坂健氏の職業は「ゴルフ史研究家」。世界各地のゴルフ場を巡り、自らラウンドし、資料館や図書館でその歴史を紐解いていくという、ゴルフ好きには羨ましい職業。でも相当タフじゃないと務まらないだろうけどね。
夏坂氏は取材で得た過去のエピソードや現地で出会った人たちとの交流を、たくさんのエッセイに書き残しています......。


夏坂氏がかつて、たった二日だけ一緒にラウンドした友人アンソニーと再会するため、スコットランドの名門ロイヤル・マッセンバラを再び訪れた時のこと。
二人でもう一度ゴルフの腕を競い合い、パブで美味いビールを酌み交わすはずが、アンソニーは、すでに交通事故で亡くなっていた。
夏坂氏の再来を待ちわびていた彼の息子が言った。
「父は何度も言っていました。あなたが見えた翌朝、また窓の外で目覚まし時計を鳴らしてやる。ド肝を抜いてアドバンテージを取るのもゴルフの戦法だと。子供みたいな人でした」
アンソニーは地元のバッグパイプ奏者。夏坂氏が宿泊していた部屋の外から、早朝いきなりバッグパイプを凄まじく吹き鳴らし、夏坂氏を驚かせたいたずら者だった。
息子はさらに続けた
「僕は父ほど上手に吹けませんが、明朝、窓の外で演奏することを許してください」と。

翌朝、6時前から目覚めた私は、一着だけ持ち歩くスーツにネクタイを締め、窓に近い壁に寄りかかってバッグパイプの到着を待ち受けた。午前7時きっかり、いきなり哀愁に満ちた朗々の祖国賛歌が早朝の古い町並みに響き渡った。旋律は高く低く流れ、私は直立不動の姿勢で窓の前に立って、わずか二度だけ戦った友人のために泣いた。
(『ゴルフの神様』の第一章「すばらしい目覚め」より引用)

夏坂氏は、ゴルフ史の研究者としてはもちろん、エッセイストとしてもシングルプレーヤー。本書をはじめ『ゴルフの風に吹かれて』『ゴルフへの恋文』『王者のゴルフ』『アンプレアブル』など、著書が多数あります。
どの本も痛快で楽しく、そしてゴルフとはこんなにも豊かで奥深いものなのだなあと思わせてくれる、唯一無比の才人でした。(研究家として志半ばながら2000年没)

今、ゴルフ場からどんどん人が減っているらしい。不況のせい?そうでしょうとも。
接待ゴルフと現金掛けゴルフに明け暮れていたゴルファーたち。スコアだけを競い、競技の素晴らしさを伝えようとしなかったおっさんたち。あなた達の姿を、部下は、若者たちは見ていたのだよ。少しもカッコイイと思われていないのだよ。

これからゴルフを始める若い人たちに必要なものは「ルールブックと夏坂健」。ここからスタートすると、君も紳士になれるかも...ね。


(2009年03月12日)

コメントする


画像の中に見える文字を入力してください。

文字は半角英数字で入力してください。
(画像が表示されない場合、画像のところでマウス右クリック-[画像の表示]を実行してみてください[Windows InternetExplorer, FireFoxの場合])

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 『ゴルフの神様』夏坂健 (講談社)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/1638