この1月から、コラナビの書評担当を仰せつかりましたタケダです。
皆さん初めまして。お手柔らかに、よろしくお願いしますね。
これまで先生方が書かれていた深みのあるコーナーを引き継ぐことになりますが、ぼくはただの本好きです。ビジネス書や自己啓発書よりも、小説やノンフィクションの紹介が多くなると思いますね。
深みもコクもありませんが、麻生内閣よりは支持率が高いコラムを目指します...。って、目標低すぎですかね?編集長。

さて一冊目。
ノンフィクションの大御所、沢木耕太郎の凄い作品『凍』
なんで、このくそ寒い真冬にこの作品なのだー?と編集長の天の声は無視して、いや、無視できないか。え~と、寒中水泳みたいなもんです。修行です。ハイ。
かつて孤高のクライマーといわれた山野井泰史(やまのいやすし)。
無酸素ソロ登攀で数々の名峰を征服し、世界的に有名なアルピニスト。
ぼくはその名を知ったのはTBS「情熱大陸」で紹介された2002年。
番組が放映されたその時期、山野井氏は妙子夫人と二人で、ヒマラヤのジャチュンカン北壁(7952m)を目指していたとわかったのは、彼らが大きなダメージを受けながら帰国した後のことでしたが。
北壁登攀には成功したものの、下山途中で雪崩に巻き込まれる。
妙子さんはロープで宙吊り状態。山野井さんは酸欠で目が見えない。
安全確保のため、岩の割れ目にハーケンを打ち込まなければならないのだが、見えない。
山野井さんはマイナス30℃の岩壁で、覚悟を決めて手袋をはずした。まず左手の小指で岩をまさぐり、割れ目を探す。一箇所探すのに1時間。小指はもう使えない。次は薬指。右手の小指。薬指...。
猛吹雪の中、二人が自力で下山するまでの格闘を、まるでカメラを構えていたかのように、沢木耕太郎が緻密に文章にしている。さすが。いえ、凄すぎて怖かったけどね。
山野井さんはこの事故で手の指を4本。右足の指5本を失った。妙子婦人も手の指10本全てを失う。
でも、この人たちの凄いのは、今でもクライミングを続けていること。
グリーンランドの大岸壁を二人で登った様子が、昨年NHKスペシャルで放映されていました。なんでそこまでして...なんて野暮な意見はよしましょう。だって、楽しそうなんだもん。
世界的なクライマーって言ったって、要はただの山好き。すき好んで山に登ってるだけじゃん。何かを創ってるわけじゃないし。経済活動してないし...。などと思う輩もたくさんいると思う。
かつて植村直己さんが行方不明になったとき、そんなことを言っていたやつもいた。でも今のぐちゃぐちゃな世界を作ってしまったのは、痛みを知らず、ケイザイカツドウしかしてこなかった輩なのだよな。
いや、他人だけのせいにするつもりはない。ぼくだってみんなだって多分その一員なんだけどね。
文字通り、身を削って山に登り続ける山野井夫妻の姿は、ここまでくるともう脱帽するしかない。凄いな。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 沢木耕太郎『凍』 (新潮社)
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