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『経営者の条件』P・F・ドラッカー著(上田惇生訳) 連載 1

「経営者の条件」に関する一考察(第1回)  花澤亜弓

ここに一冊の本がある。故P・F・ドラッカー氏が著した「経営者の条件」である。私が、この本に出会ったのは、とある異業種交流会のセミナーでの事であった。不勉強なる私は、それまで、氏の名前も、業績も、一切何も知らなかったのだが、聞けば経営者であるならば、誰でも一回は其の著作を読み、少なからず影響を受けていると言う。著名なコンサルタントの皆様方も、氏の著作をベースにして、ご自分の経営哲学を構築したと聞くに及んでは、それでは経営者の末席を汚している私としても、一度は触れておくべきではないか、と考えたのがそもそものきっかけである。ところが、「経営者の条件」と言うからには、経営者としてのあるべき姿や、なすべき事が書かれているのだろうと言う私の予想に反して、この本は「経営者」について書かれたものではなかった。言わば、経営者を含む、総ての「自己の組織に責任を持つ者」についての書なのである。

振り返って自分について考えてみれば、経営者とは言いながら、「組織」をなさず、ひとり親方商売である。そもそものこの書の対象からは、少しばかりずれているように感じる。にも拘らず、推すのは何故か。それはやはり、時間と時流の洗礼を受けてなお、古さを感じさせないドラッカー氏の観察眼の確かさを感じるからである。この本が、日本に紹介されたのは1966年である。40年も前に紹介されていながら、そしてドラッカー氏の信奉者も多いにも関わらず、いざ実践と言う段になれば、なかなか体現出来ていないのが実情である。かく言う私もそのひとりである。

氏は言う。「組織は、個人の強みを増大させるための手段である」しかしながら、その「組織」が、個々の「時間」を絶えず奪い、有益な成果を上げるのを妨げている。自分の時間が何に奪われているか、記録してみよ、と氏は語る。そこで、新米経営者の私も、言われるままにやってみる。そして、愕然とする。「組織」に属してはいないので、部下からの相談やトラブル等に時間を奪われる事はもちろん、ない。けれども、かなりの時間をメールの処理や、会合や、その他諸々の雑事に費やされ、新規顧客の獲得や将来的なビジョン、と言う経営の根幹を成すものが、後回しになっている。

また氏は言う。「自らを変革できない組織は、明日の変化に生き残ることはできない。」
ところが、明日の為に考える事を放棄し、今日の売上に汲々としている者の、なんと多い事か。我もまた然り。しかも、先の時間管理で確認したように、新規顧客獲得のための活動がなされていないのだから、どうしようもない、と言うしかない。顧客自ら飛び込んでくれるのを待つ間に、私のほうが干からびるに相違ない。(第2回につづく)


(2007年08月02日)

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