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こころの絵日記

第76回 じいちゃんの木

じいちゃんが亡くなった。
突然の訃報に言葉がありませんでした。
ちょうど一年前に庭木を剪定してもらった、おじいちゃんです。
たくさんの庭木があって剪定は一日では終わりませんでした。
剪定してもらってしばらくしてから、
「もう一度行くから、その時に庭に植える場所を選んであげる」
と、おじいちゃんが大切に育てた木を鉢で頂きました。
おじいちゃんが来るまでと、頂いた木は鉢の中。
そのうち、おじいちゃんは体調を崩し病院に入院してしまいました。
鉢の中で木は、どんどん弱っていきます。
おじいちゃんの体調も思わしくなく、歩くことが出来なくなりました。
とうとう鉢の中の木は、葉っぱ一本になってしまいました。
もう待つことは出来なくなった秋も深まった頃、自分達で植える場所を選び、頂いた木を鉢から庭に植えかえました。
おじいちゃんに植えかえて欲しかった...。
そして冬になり、庭一面は雪山に変わりました。
おじいちゃんから頂いた木は、雪の重みに耐えることが出来るだろうか。
心配ですが、どうすることも出来ません。
自然の力にまかせるのみです。
そして春になり、雪が融けだし雪山から地面が少しずつ顔を出してきました。
そんなある日、黒い土に黄緑色の葉っぱが輝いていました。
「あっ、じいちゃんの木が葉をつけた!」
頂いた木の名前を忘れてしまい、いつしか「じいちゃんの木」と呼ぶようになっていました。
それから庭に行くたびに、じいちゃんの木の様子をうかがうようになりました。
「あっ、花をつけた」
もう驚きです。

おじいちゃんの木

鉢の中で今にも朽ち落ちそうな状態だった、じいちゃんの木。
その木が花を咲かせたのです。
「おじいちゃん、元気になるかもね」
陽射しをあび、雨の恵みを受け、じいちゃんの木はどんどん大きくなりました。
そんな矢先の訃報でした。
お別れすることはとても悲しく涙が止まりませんでしたが、棺の中のおじいちゃんは、とてもいい顔をしていて、その安らかな表情にほっと胸をなでおろしました。
ありがとう、おじいちゃん。


(2010年07月08日)

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