喜んでいたのもつかの間、数日後、T社長から、放送禁止の差別用語連発でぷりぷり怒りながらの電話が来た。
地主が法外な金額を言っているらしい。昨年までの地代の4倍の額だ。
「あんたー、あんなバカな地主はほっておけー」、で、結局取り次いでもらえなかった。
結構(かなり)乗り気だったのだけど、それでこの話はボツになってしまった。
それで判ったことだけれど、実はこのエリアはここ数年オーストラリア人が入植してきて、小バブルが起きている。しかしバブルは中心街だけで、この壊れた家のある地区までは来ていないのだ。
法外な金額を提示して今夏に借り主が決まらず、誰も手入れをしないままだったら、この家は今冬の雪の重みに耐えられない。潰れてしまう。
もったいないなー、少額で直せる現状で借り手がつけば、地主にとってもいい話なのにー、と思いつつも諦めた。
次に来た話は、退役老人のMさんからだった。
「俺の土地の向かいの奴が、売りたいって言ってるぞー。」
そこは海の近くのMさんの別荘地の向かい。
海の近くといっても海岸線から10分ほど山に入った所で、海から近くはあるが、山の中。でも山菜の宝庫!(長い冬を耐える北海道人の血には、山菜をこよなく愛する遺伝子が組み込まれているのだ。)
ある春、僕らはMさんの別荘地に山菜採りに招かれた。そこは予想を遥かに上回る規模と豊かさの山菜王国だった。
ウド、コゴミ、タラの芽、イタドリの芽、山百合の根、フキなどがざっくざく。おまけに本さん独自の栽培方法でホワイトウド(根深葱・ホワイトアスパラと同じ製法だけど)まで食べられる。通常アク抜きという下処理が必要なウドが、そのまま食べられる。これがまたうまいのなんのって、酒を飲まずにいられるかって。
このMさんはウドを初めとして様々な山菜を手なずけており、驚いたことに落葉きのこ(これまた北海道人が骨髄から愛してやまないキノコ)まで自在に操っているのだ。
この秋にMさんの所でキノコ狩りをさせて貰った。同行したのはきのこ採り名人梅さんと、アル中気味の赤鼻マラソンランナーMEちゃん、OさんとOさんの介護人NA女史である。それぞれ別荘にある手籠などをとり、庭と呼ばれる美しい傾斜地に立ち入った。
本さんによってきれいに間伐されたから松林は、ふっかりと落ち葉が積もり、よくよく目を凝らすと雨で塗れた草花にポコポコときのこが顔を出している。
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