
露天荘に集まる人々は、海の者とも山の者ともつかない、ツワモノ先輩諸氏である。
彼らは冬はスキー、夏はサーフィンてな具合で、年中山海問わずスポーツにいそしむ。
しかもベテラン揃い、まさに百戦錬磨のツワモノなのだ。
楽しい事、気持ち良い事は全てやり尽くしたような人々なので、こせこせとゲレンデなんぞ滑らない。彼らの至上の雪遊びは、パウダースノーを滑る事である。
パウダースノーの醍醐味は、なんと言っても浮遊感である。
道産子の僕は、スキーで滑り降りるくらいは難無くこなせていた。しかしスキーでは考えられないこの浮遊感によって、スノーボードにハマルことになった。
雲の上を滑っている、まるで孫悟空のような気分なのである。
それからというものスキーは一切やらずに過ごしてきたが、最近は太いスキー(パウダー専門のファットスキー)も出てきており、スキーでもいいかなー、なんて浮気心が芽生える事もしばしばである。
このパウダースノーは、当然のことながら誰も踏んでいない・滑っていない未踏の境地にしか存在しないため、これを徒歩で求めるのはなかなか大変だ。
日によっては1本滑るのに2~3時間登り続けることもしばしばである。こんな事したくないよと思うこともあるが、体育会系な付き合いなので上下関係も厳しいのだ!諸先輩方が行くと決めた所には、僕も「いいですねー」と言いながら付いていく。ゲレンデでもいいのになぁー、と思っていてもである。
しかも諸先輩は自由人が多く、シーズンに入ると毎日のように山に行って、もしくは露天荘に逗留してゲレンデを滑り込み、早々に体を作ってしまう。
そこへいくと、週末ボーダーの僕は、週1回ペースでしか体を作れない。シーズンに入ってものの二週間で体力に雲泥の差ができる。
そんな体力差の中で、シーズン初めから膝まで埋まる雪の中を歩いて歩いて、極上のパウダースノーを求めて行軍するのである。合宿である。
夜は鍋になる事が多いのだが、ヘトヘトの体で鍋を見ると、ちゃんこ鍋にしか見えない。まるで露天部屋に出稽古に来ているかのような錯覚におちいる。
ところで、この遊び方をした場合、スキーヤーとボーダーは決定的に運動量が違ってくる。スキーは左右の足がバラバラに動かせるが、ボードは両足固定式。
スキーヤーは歩くようにスキーを滑らせポールで漕ぐ、いわゆる歩くスキー(ノルディックカントリー)で登って行くことができるが、ボード乗りは足を外して担いで歩きで登るしかない。
ボードにのっている時は雪の上に浮くが、外すと腰まで雪に埋まる。これを歩かなければならない。なので、ベストな布陣はスキーヤー2~3人が最初に雪をふみつけて登り、そこに出来た道をボーダーが滑り降りた勢いで登るというパターン。
もう一つのパターンは全員縦一列になり、雪を踏みつけながら歩く方法である。先頭は腰まである雪をこぐ、2番目は膝位になっている。次はスネ位というように、雪が踏み固められ、後ろにいけば行くほど、抵抗が少なくなり楽になる。後ろの人の天国なのだが、先頭は疲れるので、しばらく歩いて一番うしろにまわり来るべき先頭に備えて呼吸を整える。2番目が先頭でしばらく歩き、また最後尾にまわる。次は3番目が先頭という感じで、5~6人でのローテーションラッセルである。
しかし、なかなか理想の人数が集まらないので、そうはいかない。
なおかつ一度ボードを外すと装着するとき、靴とボードの間に雪がはさまって中々装着できない。
もがき苦しみ、汗だくでへとへとになる。
その姿を見ると、スキーヤーは「スキーで良かったぁ~」と必ず言う。
こんな感じで、楽しくシーズンを雪とたわむれて遊ぶ。
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