秋になった。Oさんがちょっと薪を拾いに行くの付き合ってくれないかーと言われ、山荘の森に三人で出かけた。
僕とOさんと、もう一人はOさんの介護人N女史。
(彼女はあるメーカー職員で、北海道全部の販売店の管理を一人で任されている...イコール、北海道でただ一人の職員である。職場は自宅で、使用するのは電話とパソコン。
そんな訳でどこでも仕事が出来るので、いつもOさんの山荘、海荘に来てはリゾート気分でチョコチョコと仕事をしていた。
ただ、今年はパソコン作業が据付のものからしか出来なくなり、ノートパソコン片手に海荘へーとはならなくなり、終業後JRで海荘へ通い、少し窮屈な生活になってしまっている。)
N女史と僕の二人に、どういう作業をするかという説明をOさんが始めた。
その辺に木が倒れているから、それを一箇所に集めてワイヤーロープでまとめてブルで引っぱり、森の入り口まで運べば、隣の農家がトラックで海荘まで運んでくれる、というのだ。
「木の切り倒し大変だったでしょー」
と言うと、Oさんは
「いいやー、GO君がやったからなー」
と言った。
「おいおいちょっと待て、GO君は切った木を薪にして無事小金をゲットして次なる人生のステップに行ったのではなかったのか?」と言うと、OさんとN女史は口を揃えて、
「いやいや、あいつ逃げたんだよ」「そう、逃げたさー。情けないよねー」「それ以来連絡つかないんだよなー」
だって。
GO君は木を切り倒して、そこでギブアップだったらしい。
そのとき、2人で悪戦苦闘していた姿が脳裏をよぎった。
切り倒す作業まで完了すれば、後は運んで短くカットして、縦割りにするという作業が待っている。きっとGO君は切り倒し後の先の作業を考えていやになったんだー。途中で投げ出すくらい辛かったんだなー。仕方ないかなー、でも、辛かったのはあの磨り減ったチェーンソーだったからなのになー、と思った。でも、GO君はロンドンで絵を描いていた超文科系のひ弱な男だったのである。
(その後、僕の行きつけの串揚げ屋さんのポストカードのデザインにGO君の描いた絵が使われていたのを見て、少しはホッとしたのである。)
この逃亡で、Oさんは木を拾って集めるだけで大量の薪をゲットというウマウマな事になったのである。
この事件があったので、Oさんの言う薪作戦に素直にうなずけなかったのである。
ただ、僕が体験した作業はそこらに倒れている木を5本位ずつ一箇所に並べて、ブルドーザーがきたらロープで束ねて引っぱってもらうだけだ。薪になるまでのほかの作業部分の労力は相変わらず謎のままである。
集積作業が終わり薪の総量を見たとき、これで何年分?と僕は聞いた。
「これでか?2ヶ月だな」
という答えが来た。
つまり、4tトラック軽く一杯位はある木材が一冬もたないのである。なおかつ、海荘は冬2階を使わないので、20坪弱のスペースである。単純に計算しても、計画している建造物ではその3~4倍の薪が必要となる。
まず雪解けまでに、木が冬眠から覚めて水を地面から吸い上げる前に木を切り倒す。(GO君がギブアップした作業)そうしないと木が水分を含んで燃えにくくなるらしい。雪の中の作業だが、頭から湯気が出るのは確実である。
それが済むと、それを集めてレストランの横に運ぶ、そしてそれを大体50cm位の長さに切りそろえる。
最後にテレビや絵本に出てくるシーン、木を立てて斧を振り下ろす薪割りである。
これを繰り返し、70坪を一冬・しかも来客用の温度設定でまかなうための薪の量はどれくらいか見当も付かなかった。ただとてつもなく大量に必要なのは明白である。
しかも、まずレストランから近いところから伐採を始めて、2,3年後はだんだん森の奥に入っていくことになる。
不安を通り越して、出来るかどうかに問題が移っている。
薪ストーブ仕様にしてから、薪を集めることは不可能となったら、暖房設備を石油に一新・大金バイバーイどころか、下手をしたら暖房費で足が出て冬季休業となる。
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