Oさん邸へのおいでコールの口実は、夏の間は主に「アワビ食べにおいでー」であった。Oさんは園芸趣味があるだけではなく、人並みはずれたさみしん坊さんなので、何かと口実を作っては海荘へ人を呼び、食事をしたり庭自慢をするのが大好きなのだ。
アワビは、水揚げされたものがそのままOさん邸へ届く。
最初のうちは刺身で楽しんだ。まるかじりと違い絶妙な厚さだなーと堪能していた。
が、回を重ねるとだんだん飽きてきて、炊き込みごはんに凝りだした。最初は身だけ入れて炊き込んでいたが、後半はウロと呼ばれる内蔵を入れて炊き込むともっと美味しいことに気づき、ウロも炊き込んだ。
しかしこれにもだんだん飽きて、最後はバターでステーキにしていた。
これもなかなかであったが、惰性で食べていた感が否めなかった。
アワビはもういいやー、となると次はシャコであった。
ご存知ない方もいるとは思うので説明するが、甲殻類で海老の仲間だと思う。
味は、歯ごたえのある海老とロブスターの間のような感じである。
殻は非常に固く、どこもかしこもトゲだらけだ。これの中身を食べようと最初に挑戦した人物は果敢である。僕の友達のダイバーはシャコに海中でにらめっこを挑み、ひたいを数発シャコパンチされ、流血したと言っていた。見た目にたがわず、結構パワーがある生き物なのである。当然身も筋力を反映してか、いい歯ごたえである。
そのシャコであるが、朝とれたものを海水で浜ゆでし、午後あたりに漁師が持ってくる。20リットルのゴミ袋半分はある。
ということは、10リットル分のシャコである。
食べ物は普通グラムかキロ計算であるが、シャコは僕の中ではリットル計算である。
ゴミ袋が届くと、こちらに連絡(シャコール)が入り、おいでよーとなる。
そんなこんなで、シャコもかなり食べた。
両サイドの脚(を含む殻の一部)をはさみでカットし、上下の甲殻を手ではがし、頭をとると一本のシャコの身が出来る。
これを一人が10とか20本とか食べてもまだ余る。
で、残りは持って帰れー、となるが、シャコの強烈な旨味と見た目にあてられて、帰りはもう見たくも無い。
しかも海老蟹類に共通の事だが時間がたつと臭くなるので、下手に持ち帰るとえらいことになるので、遠慮がちになる。
しかし、料理名人Uちゃんの手にかかるとこのお持ち帰りシャコが一変する。
僕が絶賛したシャコ料理は、シャコちらしである。
持ち帰ったシャコを刻み、酒と醤油で炒り煮にし、酢飯に針生姜と塩揉みきゅうりとを混ぜ合わせ、仕上げに白ゴマ。
これは本当に美味しかった(レストランが完成したら是非メニューに加えたいと力説した程である)、シャコの強烈な旨味と甘味が絶妙にほぐれ、まるっきり別の食べ物になっていたので、二日続きでもおいしくいただけた。
しかし、いつもUちゃんがいる訳でもなく、やはりカット・剥き&まるかじりとなることがほとんどであった。
食べ過ぎで夜、胃の中であのシャコが動き回る妄想に取り付かれたことがある。シャコにたたられるー。
またコレステロールが高そうだし、通風なんかもふと頭をよぎる。
珍味の類でおなかを一杯にするとろくな事が無いなー、とつくづく思っていた。
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