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Welcome to The Beer World

植野大作 プロフィール

北海道出身 こよなくビール、酒を愛する31歳 
フレッドカフマンが経営する札幌の老舗ビアバー 「Beer Inn 麦酒停」と
酒類輸入卸会社「えぞ麦酒株式会社」に十年以上勤務

*お店紹介
Beer Inn 麦酒停
札幌市中央区南9条西5丁目ヨシヤビル地下 
011-512-4774
オーナーフレッドカフマンオリジナルビールをはじめ世界各国300種以上のビールが飲めます。
壁面に並ぶ約3000種のビール瓶、缶コレクションは圧巻
アメリカン料理、多国籍なおつまみも等も充実

*会社紹介
えぞ麦酒株式会社
日本の地ビール解禁前にアメリカ、オレゴン州にある「ローグ社」と共同企画、
醸造により「蝦夷麦酒」シリーズを発売
現在はアメリカの他ベルギー、スコットランドより約30種のビールを輸入、卸、販売しています。
http://www.ezo-beer.com/

旬な話

ご無沙汰でした。この数ヶ月の間に私事で結婚や勤務先麦酒停の30周年イベントなど公私にわたり充実した旬を感じ、またそれらを心から楽しむことができました。
三月に結婚披露宴のためにオリジナルビールを仕込みに行ったときはまだ辺りは雪景色で夏を待ち遠しく思っていたのも、六月に入り連続する真夏日に驚いていたら、7月になりもう夏が終わってしまったかのような寒さ、温暖化の影響なのか、地球のサイクルなのかはわかりませんが地球規模で気候が変化しているようです。

ここ札幌にも四季があり季節ごとにいろいろな要素が、視覚や味覚で旬を楽しむことができます。ドイツではその昔、ラガー(下面発酵ビール)を醸造するには低温発酵、熟成が必要となるために冷却装置がなかった頃はビール仕込みの最後のチャンスが三月ということから、通常の仕込みよりも濃度を高く醸造したものを「メルツェン」というビール製法の一つとして今でも受け継がれています。
私が造ったオリジナルビールはエール(上面発酵ビール)発酵だったためスタイル的には「メルツェン」には当てはまりませんが、麦芽とホップの香り、苦味がとても豊かな素晴らしいビールに仕上がり、まさしく「旬」の飲み頃でした。

先人達は気候や風土における様々な方面からあらゆるものを発見、創造してきました。特に人間が生きるのに欠かす事の出来ない飲食物に関する習慣や技術は遥か昔から受け継がれ、より改良を重ね現代に至っています。
文明の発展の傍らにはいつもビールがありました。現代のような醸造施設が無かった遠い昔は、穀物の生育状況、気候に合わせてビール造りが行われていました。長期保存できる飲料水という目的もありましたが、ビールを楽しめるということは季節の「旬」だったのではないかと思います。

現代、あらゆるものが「旬」には関係なく楽しめる時代です。便利でとても良い事だと思いますが、先人達が築きあげてきた知恵、その意味を感じとって付き合えばまた違った一面がみえてくるはずです。少し景気や生活に閉塞感が漂う世の中ですが、日々の暮らしの中でたくさんある「旬」を感じとって、楽しみ、活用していくことが、社会が元気になるための第一歩ではないでしょうか。7月、札幌も夏本番を迎えます。まずはビアガーデンという旬を楽しんみようと思います。

ビール醸造体験記

ご無沙汰でした。四月になり徐々に春の気配を感じ始めています。雪解けが進むと香る春の匂いがとても大好きです。長い間、雪の中に閉じ込められていた土の匂いのような、強くなった日差しからくる太陽の匂いのような、これが新たな季節を感じる瞬間(旬感)です。私事ですが、五月に予てからお付き合いさせていただいていた女性と結婚することになり、とうとう独身生活も冬と共に終わりです。そのため、人生で初めて行う挙式、披露宴へ向けての準備で忙しい日々を過ごしています。その一つとして、披露宴で提供するビールを自らの手で造ろうということでカナディアンブルワリー(ノースアイランドビール)社に行ってきました。お酒の醸造(蒸留)免許は人や会社に下りるのではなく、場所に下りるため、決められた場所で醸造し、出来たお酒に係る税金を払えば誰でも造る事ができます。
(現在カナディアンブルワリーさんの体験醸造は休止中です。今回は特別に許可してもらいました)

まずは、予定醸造量に対するモルト(発芽大麦)を選定し量り、挽くことから始まります。この作業で完成した時の液体の色、糖度からのアルコール度数がおおよそ決まってしまうので最初から大事な工程です。完成予想図のイメージから今回は三種のモルトを使用することしました。お湯の中に挽いたモルトを入れて混ぜながら温度計と時間との勝負です。モルトの酵素の働きの調整するためここも慎重な作業です。約一時間かき混ぜながら愛情を麦汁の中に注ぎに注ぎ、モルトからビールの素である麦汁を濾し出し煮沸します。その原液はとても甘く、この段階で既に美味しい飲み物の出来上がりです。しかし私はビールを造りに来た訳ですからここで終わるわけにはいきません。次はビールに香りと苦味をつけるホップの登場です。多種多様なホップの個性は知識と経験で少しは理解していましたが、あらためて一つ一つ風味を比べてみると特徴がよくわかります。醸造師の指導のもと配合を考えます。完成予想図をイメージしながら品種と量を決定していきます。いざ投入。ホップのみずみずしい香りが漂います。数十分煮立たせたあと熱交換器を通し、発酵タンクに移します。ここで酵母の投入です。濁った液体に愛情を託しあとは美味しく発酵してもらうこと祈るだけです。約三週間での出来上がりとのこと、今からとても楽しみです。今回の経験から一杯のビール(お酒)にはいろいろな過程から造り手の感情もグラスいっぱいに注がれていることが身を以て体感しました。今宵は一杯のお酒から造り手の気持ちを考えてみるのも楽しいのではないでしょうか。
「酒の一滴、血の一滴」





2010年 地ビールの展望

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。
いよいよ2010年が始まりました。今年もどんな素晴らしいビールや人達に出会えるのかワクワクですね。今年はなんと平成元年生まれの人達が成人を迎えました。故小渕元首相が「平成」という元号が書かれた額を持って国民に発表した時のことを昨日の事のように思い出します。あれから20年、扇子を振り回していたバブル景気の賑わいからその後の崩壊で沈みかけた経済、その一方、最先端の開発で次々と進化していく携帯端末、パソコンや電化製品。そして平成6年には酒税法改正で醸造量等の基準が緩和され少量醸造が可能になり、いわゆる「地ビール」が誕生しました。

この約15年を振り返ってみると当初からたくさんの醸造所、直営店も次々にオープンし、世界各国に伝わるあらゆるスタイルのビールが出荷され、ビール党の人達を楽しませてくれました。しかし、1999年をピークに昨年2008年はその4割程度の出荷数とのこと。当時よく聞いた理由の一つに「高くてまずい」が地ビールの代名詞になっていたほどでした。慣れない風味だったためにまずいと感じてしまうことや、たまたま好みの味じゃないスタイルのビールを飲んだとか、飲み手側の要因もありますが、中にはあきらかに酷いものもありました。醸造長がアルバイトといった信じられない醸造所も存在し、技術や工夫が一切感じられないものもありましたが、やはりそのような所は姿を消していきました。既存しているものに慣れていると、新しいものを受け入れようとする時は抵抗してしまうものです。

今現在活躍されている地ビールメーカー各社はそれらの問題を考査しそのビールの持つ特性や歴史などの素晴らしい魅力を伝え、新たな境地へ消費者を導いてくれています。ものが溢れ、嗜好も多種多様ですが、たまには今日の目の前の一杯をじっくり観察してみることをお勧めいたします。グラスの中の液体はたくさんの人や自然の力によって出来上がっています。いろいろな過程を経て今あなたの目の前で堂々と向き合っています。あなたの気持ちが最後を締めくくり、それが味覚となって記憶に残ります。おおげさですが美味しさの秘訣は消費者の考え一つでも変わっていきます。今年も地ビール業界ますますの成長を期待しながら、応援していきたいと思っています。

ビールは鮮度か?熟成か?

どこかのビールメーカーのセールスコピーみたいなタイトルですが、よくお店で話題になることの一つです。

日本大手メーカーの工場に見学に行くと、たいがい出来立てのビールを飲むことができます。(それが目当てで行く方も多いと思われますが)やはり、美味しいですよね。それはビール工場という環境が美味しくさせているのはもちろんですが、ちゃんと理由があります。ビールは酵母の発酵でできるお酒です。製品化(缶詰め、瓶詰め、樽詰め等)の前に発酵に使った酵母を濾過してしまいます。
それは品質を一定に保つために行われる作業でより美味しくするためではありません。それらの酵母は発酵期間にその特性を最大限に発揮し、ある程度の役目を終えます。そのままにしておくと酵母の腐敗臭や生き残った酵母により発酵が進み風味が変化してしまいます。
以前は牛乳のように熱処理するのが主流でしたが今は超マイクロフィルターによる酵母除去が可能になったため濾過だけをしています。いつのまにか熱処理をしないのが、定義上「生ビール」ということになっていきました。

ビールは酵母を取り除いた時点から徐々に劣化が始まります。取り除く事によって品質の安定をゆっくりと保たれますが、熟成することはできません。ここに工場で飲むビールの美味しさがあります。それとは逆に製品化後ある程度、時間が経った頃が飲み頃のビールもたくさん存在します。息の長い酵母を使用する事により、発酵途中で出荷することが可能で、長い物で約十年間の瓶内熟成で飲み頃になる物もあります。それ以前でも充分に美味しいので飲み頃は自身で決めるということも楽しさの一つです。

こういったスタイルのビールはベルギーを始め、主に世界の少量生産の工場で造り続けています。モルト、ホップ、酵母等原材料の特質や量、発酵過程、出荷にいたるあらゆる要素で多種多様なビールが誕生します。ビールの味は世界の人口、もしくはそれ以上無限に造り出すことができる可能性を秘めています。人間の生き方のように若くして燃え尽きてしまう人、年が増すごとに色気を出す人、長生きで一生涯楽しんでいる人、まるでビールは人間の縮図のようにも感じます。でも、ビールは嘘をつけません。いつでも本音でぶつかってきます。それを受け止められる人が美味しくビールを飲める人なのかなと最近感じています。

最近の日本の大手ビール事情

先に行われた衆院選挙は民主党圧勝に終わり、夏も終わり、吹き付ける風が徐々に冷たく感じるここ札幌。この夏の全国でのビール類出荷数は過去最低だったものの、7/21から8/15まで大通公園で開催された納涼札幌ビアガーデンでは史上2番目の売れ行きだったとのこと。後半天気に恵まれ、ビール日和が続いたのが原因なのか、はたまた景気が低迷していることから屋外で飲む事で気分転換をしようとした人達が多かったのか。理由は様々だと思いますが、いずれにせよビールの消費量が増えるのは喜ばしいことです。

この頃、キリンとサントリーが経営統合に向け交渉を開始したとのニュースが飛び込んできました。過去何十年続いた四大メーカーの時代がとうとう終わりを告げ、業界再編が加速してしまうのか、行く末が気になります。大昔はノルウェー生まれのアメリカ人が日本最初のビール工場の起源「スプリングヴァレーブルワリー」(のちにジャパンブルワリー)から経営を引き継いだキリンビールと現サッポロビールと現アサヒビールが合併していた「大日本麦酒」が存在していましたが、戦後の改革で「大日本麦酒」はまたサッポロとアサヒに二分割され、その後サントリーが参入し現在に至っています。昔は当時の国の政策の事情もありますがメーカー間における販売協力や他の小規模醸造所の買収など頻繁に行われていた経緯があります。売上低迷しギネスの販売権をキリンに奪われてしまい海外ブランドが無くなってしまったサッポロビール、スーパードライに頼りっぱなしのアサヒ。キリン、サントリーの経営統合により均衡が崩れる恐れがあり、サッポロ、アサヒはどのように対抗していくのか、今後、目が離せません。

日本の大手メーカーの技術は驚くほど高いです。日々の研究、生産能力、品質保持どれをとっても世界トップクラスといっても過言ではありません。しかし、どのメーカーもその技術を一部共通の消費者のためだけにしか使いきれていないような気がします。同じマーケットの中での顧客の奪い合い、これでは人々のビール離れも止められません。各社がそれぞれに「ビール」の個性をもっと引き出し、提供していくことができれば共存していけるのではと感じています。次々と出てくる然程味の変わりのない新銘柄、そして消え行く新銘柄。落ち着きの無いビール市場、まるで最近の日本の首相達のように感じるのは私だけでしょうか。

日本から「ビール」が消える日

ビール類の大手メーカー工場出荷数割合で、とうとう「発泡酒」「第三のビール」が「ビール」を上回りました。

発泡酒(ここでは麦使用比率25%未満のもの)が販売された当時は発泡酒に求める質よりもビールより安価であるということが愛飲家の心をつかんでいたのではないでしょうか。「ビール」もどきの中でどれが美味くビール(ここでは麦芽使用比率50%以上のもの)に近い味わいがあるかが消費者の選択の基準になり大手各社が売れる発泡酒の開発に力を注いでいました。

当時のお客さんの声を思い出すと本当は「ビール」飲みたいけど家計上仕方なく「発泡酒」を買ってしまうと悲痛な叫びをよく聞いたものでした。しかし、最近の発泡酒事情は変わってきているようです。大手各社の商品開発技術は日々向上しており「ビール」もどきだった一昔のものから脱却し「発泡酒」という酒類が徐々に人々に支持され確立したようです。

お酒は時代のニーズに合わせ変化していくのは当然でそうでなければいけないと思います。それと同時に先人達が築いてきた酒文化も守っていくことでお酒の基礎をより理解しさらに発展していくことが望ましいのではと私は考えます。

残念ながら現在の「発泡酒」の一般の捉え方は「ビールよりも安い、ビールっぽいもの」というイメージを持つ方が多く、歴史のある世界の素晴らしいビールの中には日本の酒税法では認知されていない副原料を使用していることによって品名表示を「ビール」ではなく「発泡酒」としなければいけません。それを見た大概の人達からは「なんだ、発泡酒かぁ。」や「発泡酒なのになぜ高い?」といった声が聞かれることがあります。

国内メーカーの主流発泡酒は比較的安価な材料を使用することによって酒税をも安くするのに対し海外メーカーのものは自国では「発泡酒」という酒税区分がないため、ビール本来の美味しさを引き立たせるために多様な副原料を使用することにより価値を高めています。このようなことから「発泡酒」という区分、規定が立場により認知、理解が異なってしまっている現状があります。

そのお酒の特性、歴史、需要といった様々な観点からもう一度酒税そのものの意味を見つめ直し改善していかなければ今後日本で「ビール」という言葉が消えてしまうのではと不安を感じてしまいます。

7/21より札幌の夏の風物詩「納涼ビアガーデン」が8/15まで開催されています。今年は札幌市とオレゴン州ポートランド市姉妹都市提携50周年という節目の年ということで西12丁目にポートランド広場が新設され、我がえぞ麦酒(株)が輸入販売するオレゴン州ローグ社のビールを常時3種類樽生で提供しています。小樽ビールさんとの共同で出店しています。夏のひととき、ここでひと味違う素晴らしい「ビール」を楽しんでみるのはいかがでしょうか?お待ちしています。

ビールの味は人生の味

仕事としてビールと付き合ってかれこれ14年。小学生の頃、居酒屋を営んでいる我が家で夜な夜な大人達がビールをとても美味しそうに流し込むのを見て、それがどんなに美味しいものなのか気になりこっそりと飲んでみたものの苦くて吐き出してしまったことがある。大人達は何が美味でこの黄金色に輝くビールを飲んでいるのだろうと。似たような経験をされた方も多いのではなかろうか。大人になり働き始め、仕事の後、冷たいビールをぐっと飲み干したときに初めてあの頃抱いていた疑問が解け、やっと大人になれたような気がしたものだった。

14年前、ワタシにはここ(現職場、麦酒停)で働くきっかけになったビールがある。当時共にアメリカや西洋文化に憧れを抱いていた友達と「バドワイザー」「ハイネケン」「クアーズ」を瓶、缶のまま飲み干し、まるで自分が映画のワンシーンに出演しているかのような気分に浸っているとフレッドマスターから「そんなビールよりも美味しいビールがあるよ」と差し出されたのは売り始めたばかりの彼のオリジナルビール「ひぐま濃い麦酒」グラスに注がれたそのビールの色は真黒、泡まで黒褐色。軽いラガービールしか知らないワタシには衝撃的だった。初めて嗅ぐ強い香りにビールとは思えないコクと苦み、そして後味に残る黒糖のような甘みと鼻に抜けるホップの香り、その瞬間は美味さを感じるよりもすべての要素が初体験なワタシには「これはいったいなんだろう」と考えさせられるビールだった。ここで働けばこのビールの事が理解できるのか、とっさに発した言葉は「アルバイトの募集はしていないのか?」このビールに興味を示したその時から、すでに面接は始まっていた。まさかその翌日から自分がここで働いているとは。五感で過去を思い出す事がある、その時々にビールと共に過ごしていると出来事と味覚がリンクして双方から記憶を辿ることもできる、より多くの種類(酒類)を飲んでいくとその数だけ思い出として体の中のアルバムに保存されていく。

今晩、何故か自然に手に取って飲んでいた「ひぐま濃い麦酒」。14年前の今頃、何もわからずビールの世界に踏み込んだ自分の姿をふと思い出す。この味に出会えたからこそ今の自分があるのだから。これからどんなビールがワタシの記憶を形成していってくれるのか、ビールの味は幅が広い、苦いのもあれば、甘いもの、中には酸っぱいのもある、それはまるで人生のようではなかろうか。

ビールのラベル

ビールのラベルは個性的な物が多く、味覚だけではなく視覚でも楽しませてくれます。これまで見た中でユニークだったものは、アメリカの「ヌードビール」瓶ごとに異なる女性の写真がスクラッチ印刷になっていて削ると見ることができるものや、スコットランドの「テネンツラガー美女缶」500mlの缶ビールに缶ごとに違う綺麗なブロンドガールがドレスを着てセクシーポーズを決めているもの、いずれも世の淋しい男性達の酒の肴、癒しになっていたものでした。(現在は規制のために露出の少ないものになっています)

遊びが多いのもビールラベルの特徴ですが、そのラベルからたくさんの情報を得ることもできます。かつて禁酒法があったアメリカでは闇で売られていたものや、解禁後に販売していたものにはアルコール度数を表示していませんでした。それは人々が少しでもアルコール度の強いビールを求めてしまい、強いものほどよく売れるということから独占を防ぐために表示しなくなったと言われています。今でもなごりなのか、時折アルコール度数の表示の無いアメリカビールを見ることがあります。現在は副原料(米、コーン)を大半使用した安価で若干アルコール分が高い「モルトリカー」として分類されています。

同じ醸造酒の日本酒やワインのほとんどで詳細な原材料情報が表示されています。日本酒であればただ「米」ではなく「山田錦○○%」とか、ワインであればただ「葡萄」ではなく「カベルネソーヴィニヨン」「メルロー」とか品種も表示されているのに対し、ビールの表示は一般的な「ラガー」や小麦、小麦麦芽を使用したドイツスタイルの「ヴァイツェン」濃色焙煎麦芽を使用した上面発酵(エール)の「スタウト」というようにビールのスタイルだけの表示が多く、主原料である麦芽やホップの詳細な情報が表示されていないのが現状です。

「麦芽」にも発芽、加工段階においてたくさんの種類に分けられ、苦さと香りを醸し出す「ホップ」もいろいろな品種があり醸造するビールのスタイルにより使い分けられ、それぞれ個性が違います。ビールスタイル(タイプ)の理解や、麦芽、ホップ各種材料の特徴の違い等を知ることもビールを楽しむ要素の一つであり、より多くのビール好きの人たちに伝えて、一緒に感じていきたいと思っています。ビールラベルの表示の読解が出来れば、もっとビールが身近な存在になることは間違いないでしょう。

ジャケ買い

切手やフィギュアなど何かを集めている人は少なくはないでしょう。先日、面白いニュースをみました。個人宅の表札がいたるところで盗まれていたとのこと。御用になった犯人は変わった名前や珍しい書体で書かれている表札に興味があり、囲まれていると安心するらしいそうで、世の中変わった趣味の人もいるものだと笑ってしまいました。ビールの世界にもコレクターが存在します。ボトル、缶、ラベル、グラス、コースター等、たくさんのアイテムがあり、年代や銘柄により希少価値があるものを収集する人、飲んだビール瓶もしくはラベルを収集する人、いろいろと分かれますがこれもビールの楽しみ方の一つです。我が麦酒停の壁には世界各国のビールのボトルや缶が約3000種飾られ、ボトルの数だけ物語、思い出があります。そのボトルを見るといつ、どこで、誰と飲んだのか思いだすことができます。ビールは味覚で記憶を辿ることも視覚で辿ることもでき、それはアルバムのようなものです。店では約300種のビールがいつでも飲むことが出来るのですが、スタイルや味で選ぶ人、ジャケ買いする人(ジャケット、ラベルの良さだけで物を買う人)様々です。他の酒に比べビールのラベルは個性的なものが多く。ラベルもビールの味の幅広さ、多様さを表しています。逆に言いますとラベルを見るとそのビールの味の特徴もおおよそ理解することができるのです。裏面や側面にあるアルコール度数や原材料などからも予測はできますが、表面に表示されている商品名、説明文、もしくは背景に描かれている絵などにヒントが隠されていることがあります。商品名に◯◯ラガーやピルスナー、スタウト、ペールエール、ヴァイツェンなどビールのスタイル(次回説明します)が一緒になっているもの、説明文の中に使用している材料の特徴や発酵方法などが書かれているもの、醸造所ゆかりのイラストやそのビールに関わる歴史や事件などが描かれているものなど、どのような特徴があるのかをラベルが教えてくれるのです。ラベルの面白さや個性、ひらめきで選ぶ「ジャケ買い」も楽しいですが、じっくりラベルを見極めて味をも想像しながら選んでみる「ジャケ買い」をしてみてはいかがでしょうか。その瞬間からそのボトルはあなたの新しい物語の主役になることでしょう。

ビール税金的考察Vol.2(平成ビール事情)

平成21年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。みなさんはどのような正月を過ごされたでしょうか?丑年ということを言い訳に食べ飲み三昧という方も多いのではと思います。とても贅沢な時間ですが人間はわがままなもので、一つ満たされるとまた次の欲求が発生します。それを繰り返してメタボへとなっていくことが身をもって体験した正月でもありました。

先日の成人式、とうとう平成元年生まれの人たちが酒場デビューとなります。故前小渕首相が「平成」と書かれた額を発表したのをはっきりと覚えています。あれから20年、早いものです。お酒は飲むことにより解放的になることから先人達は宴会の場をその人の人間性を試すのに利用したとの記述を読んだことがあります。飲酒も遥か昔からの文化の継承、美味しいビールを飲みながらいろいろな事に互いに触れ、語り伝えていきたいですね。

先日、昨年度の日本の大手4社のビール類の出荷報告を見ました。ビール、発泡酒は減少しているのに対し、酒税法上雑酒扱いになる第三のビールの出荷量が増加とのこと。そして今はリキュールを混ぜた第4のビールとなるものも誕生しているようです。

以前は麦芽使用比率25%未満の発泡酒が出荷量においてビールを上回っていましたが、税制改定で増税され、酒税がより安い雑酒(第三のビール)が着々とシェアを広げています。日本の大手メーカーの商品開発の技術は非常に高く、あらゆる穀物からお酒を造り出す研究を日々続けています。嗜好品に求められる質や趣向は時代と共に変わっていくものと思います。しかしビール(酒税法上の)に係る酒税が高額なここ日本ではビールに似せたものを造るための商品開発になっているような気がします。

課税の増減もとても大切ですがより複雑になった発泡性醸造酒の酒税法、区分の根本を見直すよい機会ではないでしょうか。これだけ法律でがんじがらめになると法律がお酒を造らせている感も否めません。お酒とは何か、ビールとは何か、一度原点に戻って再考してみるとよりよいビール(酒税法上ではない)を取り巻く環境が誕生するのではないかと思います。

物作りや工夫がとても上手な日本人、戦後、急速な勢いで高度成長を支えたのは高い技術力であり、現在でもそれが日本の経済の基盤になっているのは間違いありません。不況といわれるこのご時世、国による急がれる景気対策。二兆円規模の給付金よりは二兆円規模の酒税の減税...,なんてありえない話かな。ビールが経済の潤滑剤になると思うのですが。

第12回 ビールと健康

最近、大学祭での酒類の販売を禁止もしくは条件付きでの提供という大学が増えていると、先日の新聞記事の掲載されていました。ここ札幌にある北海道大学でも数年前から大学祭での酒類提供を禁止しています。学生同士での飲酒の強要で急性アルコール中毒等に陥る人が年々増加していることから禁止に踏み切ったとか。最近は何か問題が起こると製造中止や禁止等、問題の増幅を恐れ本来の問題を解決無いままにそこで終わってしまうことが多いような気がします。

年に一度のお祭りの日なのに禁止事項が多くなると楽しさも半減してしまいますよね。飲酒は20歳以上の人に認められた立派な権利、飲酒はより良い人間関係を造り、またその関係を維持する為に適した潤滑剤になり得るものだと思います。上手に付き合えばこれほど日常を楽しくさせてくれるものは無いと思っています。その決定は残念に思います。

同じ紙面に「現代人の酵素不足の深刻化」という記事もありました。
先代達は昔からの知恵を上手に引き継ぎ、酢、醤油、味噌、等発酵食品を自然に体内に摂取してきました。しかし生産技術の向上、消費至上主義の現代において良い原料で手間をかけ、じっくりと造られた発酵食品を口にする機会が減っているのではないでしょうか?ビール酵母が体に良い話はよく知られています。前回以前でも触れているように残念ながら大手メーカーのビール(発泡酒)は醸造後、製品化の段階で熱処理はしないものの、残念ながら濾過をしてほぼ全ての酵母を取り除いてしまっています。濾過されない代表的なものはベルギーのビール、アメリカの少量生産されるクラフトビール、日本の小規模醸造所(地ビール)等のほとんどのビールが濾過されずにビール酵母が残った状態で出荷されています。体に良い事は各分野で証明されています。

麦酒停に来られる痛風のお客さんも酵母入りの美味しいベルギービールを飲むと、次の日調子が良いというお話も聞いています。現代人に不足していると言われる酵素をビールから補うのもおもしろいのではないでしょうか。美味しいビールを飲んで陽気になると細胞も活性化して、ますます若く健康で過ごせることでしょう。この秋は身近の酵母入りビールと美味しい食材のマリアージュを楽しんでみてはいかがでしょう?

第11回 スローフード

前回、執筆から早4ヶ月。大変遅くなり申し訳ございません。初夏だったあの頃が遠い昔のようで、気が付けばもう秋。食欲の秋、読書の秋、収穫の秋、ビールの秋...いや、ビールは年中美味しいものです。鮭や秋刀魚、きのこやジャガイモなど、秋の美味しい味覚が美味しいビールと共に楽しめる秋も大好きです。まもなくやってくる長い冬を耐え凌げるようにと、大地が私達にたくさん分け与えてくれているような気がします。最近、気になる話題の一つにイタリアで始まった「スローフード」日本でも少しずつ浸透しきています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/スローフード
その中で三つの指針を示しています。

守る:消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る
教える:子供たちを含め、消費者に味の教育を進める。
支える:質のよい素材を提供する小生産者を守る。質のよい素材を提供する小生産者を守る。
(wikipediaより抜粋)

ゆっくりと食事を楽しむのは当然のこととし、それを支える全ての事を守り、伝えていこうという、この運動はこの忙しない世の中においてとても大事なテーマではないかと感じています。小規模醸造のビール(地ビール)業界もここが原点であると思います。大麦、小麦、ホップ等の生産者がいて、それを加工する加工業者がいて、それを運ぶ運送業者がいて、醸造所があり醸造者、働く人がいて、出来上がった商品を売る人がいて、そしてそれを消費し、伝えていく人がいます。すべてが恊働体であってそのうち一つでも崩れると全ての歯車が狂いだしてしまいます。一人一人が全てのことに関わっているという意識、責任もとても大事なことだと思います。

現在の世界的株価下落、粗悪食品の流通等の問題は資本主義というシステムのもとに大量に生産され、工業化された商品を大量に消費してきた私達にこれからどうあるべきか投げかけられている気がします。まだ衆議院解散していないのに、もはや選挙準備にとりかかる政治家達「このままだと費用がかかり過ぎて大変です」と、おバカなコメント。それが無駄遣いの始まりとは知らずに。国民の代弁者としてそれで良いのでしょうか。この政治家と料亭ではない街角の飲み屋でビールを飲みながらスローフードについて語り合いたいものです。

第10回 ビールと器、人の器

ビールの器といえば一般的にグラスです。グラスといってもたくさんの種類があり用途により使用するグラスが変わってきます。これからの季節、暑い日には大手メーカー等の喉越しが良いラガービールを口触りが良い薄めのタンブラーや、しっかりと冷えたジョッキで最初の一杯を流し込むのも気持ちの良いものです。

前回までの話題で記したようにビールには多種多様の味わいがあり、楽しみ方もそれぞれです。その一つに器(グラス)があり、より一層味わいを引き立たせ、楽しませてくれる道具として欠かすことができません。種類が豊富なベルギーでは一銘柄に付き専用のグラスがあります。どれも個性的でしかも見た目だけではなく、そのビールの味わいを最大限引き出してくれるものになっています。

香りを楽しむビールは口が大きく、飲み頃温度が高めのビールはブランデーグラスのように下部が丸く膨らんでいて手のひらで温めながら楽しむもの、昔の陶器のカップでは気が抜けないようにフタが付いていたりと、様々です。以前、ヨーロッパのパブに行った時、壁に細長い4Lは入ると思われるグラスが横に掛かってあり、その上には確か「4:32」と手書きで書かれていました。何かと尋ねると、このグラスでビールを飲みきった最速タイム(4分32秒)とのこと。「お前もやるか?」と聞かれその時点で5L以上のビールを飲んでいた僕は残念ながら丁重にお断りいたしました。
遊びが許されるのもビールの特権です。

綺麗に洗われたグラスにビールを注ぐと底にぶつかった液体が解き放たれた喜びを泡と化し弾けます。喜びが大きいほど登りきり、やがてグラスの中で液体と泡が分離し、しっかりと液体を包み込み美味しさを守ります。ビールを形成する全ての要素が絡み合い奏でられる瞬間です。受け止める器によってそのビール達の個性の表現が変わり、飲み手の器を試されます。時には厳しく、時にはやさしく。その時の一杯のビールから感じる何かがその人のバロメーターのような気がします。人もビールも器が大事ですね。さぁ、今宵の僕の器はどんなものか飲みながら考えてみますか。


第9回 まだまだ粋(生き)なビール 第一章

最近、私的には残念な事ですが世界的にビールの消費量が減少しているそうです。飲酒人口も減少しているのはもちろんのこと、酒造メーカーの惜しまない努力の結果、いろいろなジャンルのお酒が誕生し、消費者の選択肢が増えているのも確かなことと思います。

しかし、まだまだ世界で一番呑まれているのはビールです。たかがビール、されどビール。ここでもう一度ビールの良さを考えてみましょう。

ビール(発泡酒含め)は醸造酒です。穀物(主に大麦麦芽)を水に浸し、穀物のデンプンにより出来る糖化液(麦汁)を酵母による発酵でアルコールと炭酸を発生させます。まず、このビール酵母ですが麦汁のタンパク質、食物繊維、ミネラル、ビタミンBなどの栄養素が豊富に含まれています。サプリメントとして販売されるくらいにその効用は広く知れ渡っています。製品化されたビール中の酵母の有無がいわゆる「生」ビールであるか否であるかと個人的には思います。

おおよそ、大手メーカーのビールはボトリング(樽詰めも含む)時に風味を固定させ、品質管理のために酵母を限りなく取り除いてしまいます。その方法として二つあります。一つは牛乳等と同じように熱処理です。熱を加え酵母を取り除きます。二つ目は濾過(ろか)です。フィルターにビールを通して濾します。

現在、日本の「ビールの表示に関する公正競争規約・第4条」では熱処理しないビールを「生」ビールと呼ぶそうです。残念ながら大手メーカーの市販されているビールのほとんどが製品化時にフィルターに通し酵母が取り除かれています。世界における小規模ビール醸造(日本では一般的に地ビール)では熱処理も濾過もしない酵母入りビールが主流です。白濁しているビールを見かけたことはないでしょうか?それは酵母が入っているビールの証です。日本酒だとにごり酒、どぶろくといったところです。

酵母が生きているビールは早く呑まないといけないと考える方もいますが、ビールのタイプ、製法、酵母の質にも因ることですが酵母入りだからこそ長く保存出来るという利点も場合もあります。逆に酵母を取り除くことはその時点から劣化していくことを意味します。だからビール工場で呑むビールが美味しい場合もあります。決してどちらが良くて、どちらかが悪いということではありません。それだけビールという酒の幅、奥行きがとても広いことを意味しています。

全ての人や物事と同じように少し目線を変えて付き合っていくと新たな発見がまだまだあります。生き物と付き合うのは難しいですが、やっぱり人もお酒も「生(き)」で「粋」の方が良い気がしますね。

「酒の道は人の道」

つづく。

第8回 チョコレートビール

いつも更新が遅れて申し訳ないです。皆様どのように過ごしでしょうか?

札幌はこの数週間でまとまった雪が降り、辺りは真冬の光景ですね。来週から雪祭りも始まり街も賑やかになり、寒さもピークを迎えることでしょう。例年、雪祭りが終わると少しずつ暖かくなり、全体が春に向けて動き出したなぁと感じます。そして雪祭りが終わるとバレンタインデー。一年の中で男性が一番落ち着かない日ではないでしょうか。

最近はいろいろなアイディア商品が販売されていますが、私が勤めるえぞ麦酒(株)ではチョコレートビールを提供しています。

専門的には「チョコレートスタウト」スタウトとは焙煎度の強い麦芽を使用し、上面発酵(エール)で醸造されたビールのことです。発祥はイギリス、アイルランドと言われています。代表的なものはギネスでしょうか。

ビールと食の相性はとても幅が広く、発酵法、使用する麦芽、ホップ、色によりかなり替わってきます。ビール党の方は「ビールと甘いものなんて合わない」と思うのが大半ではないかと思われます。ですが、スタウトには甘いものがとてもよく合います。(個人差はありますが。)焙煎した麦の苦み、ホップの苦みがフレンチローストのコーヒーのように感じ、チョコレートを食べた後、舌に残る甘みを調和させながら流し込んでくれます。最高の瞬間です。そんなに相性が良いならば一緒にならないかということで企画、醸造されました。

チョコレートには油分が含んでいて、ビールにすると油とアルコールの相性が悪く、なかなかうまく進みませんでした。だったら油の無いチョコレート、すなわち原料のカカオの水性エキスの使用を試みました。すると麦芽を焙煎した時に麦芽の中の糖が焦げ、黒糖のような甘みと、砂糖、油分を一切含まれないカカオの苦みがとてもバランスが良く素晴らしいビールが完成しました。これが「チョコベアビアビター」自慢の一品です。

その数年後にラクトス(乳糖)使用したミルクスタウト「チョコベアビアスイート」も販売しました。セットも販売中です。…。あら、気付けば営業コラムになってしまいましたね。そうなんです、このビール達の営業でひたすら動き回っていたもので更新が遅れてしまい…すみません。苦みと甘みを兼ね揃えたまるで人生の縮図のようなこのビール、ぜひ贈答用、自分用に。ご賞味くださいね。私はバレンタインデーの夜、麦酒停のカウンターでお待ちしています。

第7回 可愛い子には旅させよう

ご無沙汰していました。旅行、通常業務が忙しく更新が遅れた事に対しお詫び申し上げます。

先月、ビールとテキーラの研修??の為にアメリカはカリフォルニア州のサンフランシスコ、ロス、サンディエゴ、メキシコはテキーラの産地ハリスコ州とメキシコ第二の都市グアダラハラに行ってきました。カリフォルニアのGDPはヨーロッパのドイツ、イタリアの大国と同等というからすごい。アメリカ経済の大事な基盤になっているのは間違いありません。

毎朝、飲んだオレンジジュースが美味いのなんの。アメリカでは数カ所のビール醸造所に出向き、見学させてもらいましたが,いずれも自社商品に対する誇り、品質の良さ、意識の高さに驚かせられます。その地域に住む一人一人が土壌に感謝し、仲間を尊敬し、生産物に注ぐ気持ちは計り知れないものがあります。彼らは目先の利益だけでは無く、現代の自分達が出来る事を創造しその先を常に想像し日々素晴らしいものを世に送り出しています。そういった生産物をもっともっと末端消費者として応援していきたいと強く感じてきました。

日本、特に今の北海道は自給率が100%を越える土地です。自給率は上がっていますがそれに伴う道民の意識が追いついてないような気がします。聞いた話ですが北海道にある私の田舎では鮭の水揚げが一時は日本一の町で、今でもそれに準ずる漁獲高があります。しかし、国内での流通より海外でそのブランドを発揮していると聞きました。

今日も市内某スーパーに立ち寄りましたが鮮魚売り場の鮭は全て輸入物でした。地場産は輸出され、地元人は輸入物を食べるという明らかにおかしな状態です。地産地消。地元で消費され、なおかつ、他にも供給されれば良いのですが。

ビール業界もそういった風潮が今でもあります。ドイツでは自社の工場の煙突が見える範囲しかビールを動かさない醸造所も今でもあると聞いています。小樽ビールも工場の半径100km以内にしか出荷しないという決まりがあります。他社との差別化も大事なのはわかりますし、間違いではありません。

私の考えは違います。これだけ流通がよくなったこの世界。美味しいものはどこでも(少し語弊がありますが)楽しめる世の中です。物を生産、売買するという行為がもう少し貪欲であっても良いのではないかと感じます。官公庁に頼ってばかりではなく自分達で売り込む力が今の私たちには必要ではないかと強く感じています。そして生産物をもっと広く旅させましょう。人間と一緒で、旅をすることでたくさん事を吸収してより強くなって私たちの元に還ってくると思っています。いろいろな刺激を受け試行錯誤し、切磋琢磨して、さらに良いものが生まれ、その結果良い物を見極められる力が消費者にも備えついてくると思います。

いつの日か北海道がカリフォルニアのGDPを追い越せる日を夢見て、では、今宵は富良野産ホップのを使ったビールで乾杯するとしますかー。

第6回 あなたの知らないテキーラの世界

テキーラ、なんて素敵な響きでしょう。テキーラと聞いて歌とライムを思い出した方は正常です。サボテンを思い浮かべた方はこのコラムを最後まで読むべきです。現在、麦酒停では約300種のビールと約50種のテキーラを揃えています。(知らなかった人も多いのでは?)

お酒を飲み始めた頃、この世の中にはたくさんの酒がある事を知って、できるだけ多くのお酒を知りたいと思い、機会あるごとに様々な酒を試してきました。いわゆるスピリッツを好むようになり、知らないジン、ウォッカ、ラムがあればよく飲んでいました。でも、いつもその酒の横にあるのはビール、そう、チェイサーにビールがとてもよく合うのです。、美味しく感じるのです。ドイツではキンキンに冷えたシュナップスをショットで一杯呷ってからビールを飲み始めるという文化もあります。テキーラはアルコールが強い、と思ってる方も少なくないのではないでしょうか、テキーラはほぼ全てが40%と決められています。たまに例外で38%もあります。(確かに弱くはないですね。)

そんなこんなで冒険をしてたときに出会ったのがテキーラで、どんなビールとも相性が良く、この出会いからはテキーラのアルコール度数も手伝ってかアルコール漬けの日々がしばらく続いてしまいました。テキーラはどうやって造られているのかと疑問を抱き、いろいろ調べてみることに、大半の方がサボテンと思われてるのではないでしょうか?正解はアガベ(竜舌蘭)という穀物から造られる蒸留酒です。

アガベ

このアガベ(写真)が大変興味深い穀物で生育するのに6年から10年かかります。それから糖化させ蒸留し、蒸留したてのものをブランコ(シルバー)二ヶ月以上約一年木樽熟成させたものをレポサド(ゴールド)、レポサドより長期間熟成させたものをアネェホ(エイジド)と呼ばれます。しかも下記のような規格があります。

上記以外のものはメスカールと呼ばれ、テキーラとは分けられています。
決してメスカールが下等品ということではありません。シャンパンとスパークリングワインと同様です。

来月、テキーラの産地、メキシコ、ハリスコ州に研修?のため行ってきます。今から楽しみです。ビールの話の合間を縫って、また、テキーラの話やそこで経験したことを伝えたいと思っています。乞う、ご期待を!

今回は本題から外れてしましたが、美味しいお酒はやはり相性が良く、人を楽しくさせてくれます。今晩あなたがビールを飲む時、いつものビールグラスの横にあなた好みのスピリッツを注いだショットグラスを添えてみてはいかがですか?秋の夜長、まったりとした幸せな時間が訪れるでしょう。では、Salud!!

アガベ

第5回 Michael Jackson

2007年8月30日「マイケルジャクソン」さんが享年65歳で亡くなりました。余程のビール、ウィスキー好き以外の方はムーンウォーク、スリラー、ネバーランド、黒から白の歌って踊れるマイケルジャクソンを想像するでしょう。同性同名ですが、実は違います。彼は別名「ビア ハンター」と呼ばれ、ウィスキー、ビールの評論でその業界の中では有名な方です。ベルギービールを世界に広め、日本より早く始まったアメリカのビールの小規模醸造、その後の日本の地ビールの普及、発展に多いに貢献されました。彼の著作である「世界ビール大全」「ビアコンパニオン」。今でも僕のバイブルになっています。彼の本を頼りにヨーロッパを周り、おかげで素晴らしいビールに出会えました。

彼は1996年2月と2005年2月の二度麦酒停に来店しています。初来店の時には北海道新聞のインタビュー受け、最初のコメントは「私がオリジナルです。」と茶目っ気たっぷりな方で親近感を覚えたものです。当時、店のトイレの壁は世界中から訪れるお客さんの落書き版にもなっており、それを見た彼は「面白いね、俺にも書かせてよ」と、マジックを片手にトイレに入り、片隅に「Michael Jackson was here」と書いていきました。残念ながら数年後、改装のため無くなってしまったのですが、直前にデジタルカメラで撮影して今でも大事に保存しています。

二度目は余市のニッカウィスキーに訪れた時、通訳に彼が「札幌でぜひ行きたいお店があるんだけど、調べてくれないか」と、聞かれ、店に電話をもらい、来てくれたのでした。彼の事を好きな常連さん達にも声を掛け集まっていただき、彼の著作本を持ち込んでサインをしてもらう人もいてその中にはもう廃盤になっている物もあったようで彼が驚いていました。この時麦酒停の為に書いてくれたサインは今でも飾っています。

To Phred's Bar
~One of the world great wartering holes~ Michael Jackson " The Beer Hunter"
9,Feb 2005

麦酒停さんへ
世界の偉大な飲み屋の一つです マイケルジャクソン"ビアハンター"
2005年2月9日

そんな彼は長年パーキンソン病を患い、その他の健康上の問題で8月30日にロンドンの自宅にて永眠しました。彼はウィスキーはもちろんビールにおいてはビールを愛する者達、それに付随する関係者各位全てに多大な影響を与えたのは紛れも無い事実です。彼の活動をこれからはより多くの人達に伝え、より発展させていければなと思っています。

アメリカ東部時間9月30日午後9時より世界中の飲食店で下記ポスターが掲示されているお店ではその日の売り上げをパーキンソン病基金の為に協力をしています。見かけたらぜひ入店して協力願います。我が麦酒停も9月30日(日本時間)の営業時にポスターを掲示し協力する予定です。(残念ながら私は所用で上京中です)お店は営業しています。
参考URL michaeljacksonthebeerhunter.blogspot.com/
みんなで一杯のビールについてとことん語ってみませんか?必ずあなたにとって良い時間になることでしょう。 献杯


第4回 ビールフェスタに想う

お盆も終わり、例年だと北海道は秋に向かってまっしぐらのこの季節。今年はこの夏の暑さを惜しむかのように残暑が襲っています。毎年恒例、札幌大通り公園で7/20から8/10までの三週間に渡って行われたビアガーデンは天気と暑さに恵まれて史上二番目のビール消費量だったとか。

今年は西11丁目会場がドイツ広場と称してドイツビールと料理を提供していました。本格ソーセージ、ザワークラウト、そして本場ドイツの樽生ビール、時折流れる「乾杯の歌」で気分はさらに盛り上がります。何度か足を運び、暑さを言い訳にたらふくビールを堪能したのがもう遠い昔のようです。
規模は全く違いますが8年前に行ったドイツ、ミュンヘンの「オクトーバーフェスト」を思い出します。
http://www.oktoberfest.de/en/index.php

「オクトーバーフェスト」とは、十月の第一日曜日を最終日とし、約二週間開催される世界最大規模のビール祭りで世界中からビール好きの人達が集まります。ミュンヘン近郊のビール会社14社が参加しそれぞれの醸造規模に合わせ2,000人から10,000人もの人を収容できるテントを設営します。中では中央のステージ上で生バンドが常時演奏し、「乾杯の歌」が始まると会場の人達が椅子に立ち上がりジョッキを振りかざし一斉に歌い始めます。あの迫力には圧倒されました。名物メイドのおばちゃん達が両手に1リットルジョッキをたくさん抱え歩き回っています。グリルドチキンも有名で美味しく、これだけの人数を相手にしているのに料理も抜かりなくとても素晴しいです。その会場を取り囲むように外ではプレッツェル屋さん、お土産屋さん等のお店や、移動遊園地などのアトラクションもあり一帯は巨大アミューズメントパークと化しています。このオクトーバーフェストはドイツ人、ミュンヘン市民が築いてきた伝統であり誇りなのです。ビールが似合うここ北海道、札幌でも「納涼ビアガーデン」以上のビールフェスタをいつの日か企画、実行し世界に誇るイベントに育てあげていければなと夢見ています。もっと北海道の産業が世界に飛躍していくためには必要不可欠と思います。財政が苦しい北海道、目先の利益だけを求めるのではなく、各方面からたくさんの意見を出し合って、議論して官民一体の素晴らしい土地、心作りが今の北海道には必要と思います。今宵も美味しいビール飲んで多いに自分、世界に思うビジョン語りましょう!たくさんビールが進むはずです。なぜなら、みなさんあまり気付いてないようですが、ビールの最高のつまみは枝豆でもなく、唐揚げでもなく、楽しい「会話」なんですよ!

第3回 個性豊かなビール達


本格的な夏が到来し、皆さんのビール指数、お出かけ指数も上昇中だと思います。青くて高い空、深い緑の山々、そして黄金色に輝くビール。四季折々たくさんの色彩を楽しめる北海道が私は大好きです。

お酒の中でも色、香り、味覚、シチュエーションを変えて楽しめるのがビールだと思います。夏の暑い時はホップのさわやかな苦みと香りがするラガー、ペールエール等が乾いた喉を潤してくれます。秋には麦芽の焙煎度が強いボック、ブラウンエールを夜長に収穫をむかえた美味しい食材と共に。冬はハーブ、スパイス等を加えた濃色のウィンターエール等を温かい料理と囲み仲間と楽しんだり、暖房の効いた暖かい部屋で冷たいビールを流し込んだり(北海道だけ?)春は小麦を原料とした、ほのかに果実のような風味を醸し出すヴァイスビールが似合ったり。

ビールは醸造方、材料、地域によって細かく分類すると80種以上にもなります。その一つ一つに伝統があり今でも受け継がれて醸造されています。あるビール評論家はビールをコーヒーやパンに例えます。コーヒーはインスタントコーヒーで構わない人もいれば、豆の違いからこだわる人もいます。パンも大量生産されたものでかまわない人もいれば、少量生産で材料からこだわり、作り手の顔が見えるパンの方が良いと思う人もいます。どちらが美味しいと思いますか?もちろんそれは人によって意見は違いますが、そのものの個性や味わい、温もりを感じるのは後者だと私は思います。

ワインはその年の葡萄によって味わいが変化しますし、日本酒は米によって変化します。もちろんそれらを発酵させる酵母が重要になるのは醸造酒としては当然です。ビールの主原料は麦芽です。麦芽は加工物で、いろいろな種類の麦芽が存在します。何を使うかによって色はもちろん、甘さ、渋さ、酸味など幅広い味わいを引き出すことができ、そこにホップというビールの調味料を加え、香りや苦みをつけていきます。このホップにもたくさんの種類があり、使用するものによって香り、苦みは全く変わってきます。これらの作業の時間や温度、酵母の力などからも味わいは変わってきます。

ビール職人はたくさんの食材を操る料理人と同じです。仕込み、手のかけかたで味が変わってきます。食べ物もその時の気持で選んで食べるように、ビールを飲むときもその時の気分やシチュエーションに合わせて、銘柄、スタイルを選んで飲まれるようになればと日々願っています。

お店で働いていてよく聞かれる事の一つに「一番美味しいのは何?」と聞かれます。これは一番難しい質問です。美味しい物は人によって違います。いろんなビールを機会あるごとに飲み続けていくと大抵の人は自分好みの味に出会えます。人の出会いと通じるところがあり、人にもたくさんの個性、色があるようにビールにもたくさんの個性、色があります。出会った時の喜びは必ずあなたを幸せにしてくれるでしょう。もし、量販店、飲食店で知らないビールがあったら手に取ってみましょう。そこが「あなたの知らない素晴らしきビールの世界」の入り口です。