フリーライター。釣り、酒、旨いものとカラス好き。
1年の半分くらいずつ札幌と小樽に在住。
その日、私は某体育館の卓球場にいたのであります。
「ナガイさ~ん! もっと前傾姿勢でかまえて~!」
ほかにもたくさん人がいるのに、先生は私の固まったようなポーズが気になるらしく、先ほどから卓球の基本である前傾姿勢を求めてくるのです。
わかってんだよ。やればできるんだよ。でもさっきから屁が出そうなの。
まだタマを打ち合っていないため、卓球場はとても静かなのであります。ここで私の屁が飛び出してしまったならば、大晦日の除夜の鐘よりもスルドク響き渡るに違いありません。
「ス~~」くらいのすかし屁ができればベストですが、抑圧された私の中のガス生命体は爆発寸前なのです。前傾姿勢むり。
「それじゃ皆さん、台に着いて~、フォア打ち始めてくださ~い!」
先生あきらめてくれました。やっと打ち合いです。屁をしても音にまぎれるでしょう。あ~良かった~・・・って安心したその瞬間、
「ぷぷぅ~~~~~っ」
ハイ。出てしまいました。まわりの笑顔がココロに痛いです。
さて、なぜに屁が制御不可能にまでなってしまったのか。それは前夜オークボくんちで食べたものが原因なのであります。
自然薯(じねんじょ)というイモであります。このイモは強力な屁の素です。

これが自然薯。写真は栽培ものでまっすぐだが、天然ものは土中の石などをよけて伸びるため、すごくクネクネしている。掘り出すのが非常に困難なため高値。1本へーきで4~5000円する。
この自然薯は私の友人ナカタさんからもらったもので、とろろめしにするとうまいということで作り方を教わり、オークボくんに料理してもらうことにしました。
作り方をとっても簡単に言うと、
自然薯すりおろす → サバのだし汁とまぜ合わせる → 麦めしにかけて小ネギを散らす。以上おわり。
と、5秒くらいで説明できるのですが、2項目目の「まぜ合わせる」がクセモノであって、全力で30分以上すりまぜなければならない上に、失敗すると分離してどーにもならなくなってしまうという労力と緊張感をともなう料理なのでありました。

自然薯は包丁で毛をこそげ、皮をむかずにすりおろす。長イモよりはるかに強いねばりがあり、すりばちの底で「ボヨヨ~ン」としている。

すりおろしたボヨヨンを、なめらかになるまでスリコギでひたすらする。ボヨヨンがスリコギにまつわりついてなかなかすれてくれない。ボヨヨンが憎い。

ボヨヨンに新鮮な生サバから取っただし汁を合わせていく。いっぺんに合わせると分離するので、はしからちょろちょろ流し入れながら全力でスリコギをまわす。ボヨヨンはだんだんフワフワになってくる。

だしを取ったあとのサバの切り身を1~2切れ入れ、すりつぶしてまぜ入れる。

めしにかけて完成。今まで必死にすりまぜていたのがウソのような、美しく輝く自然薯の水面。サバだしの良い香りがココロと胃袋をわしづかみ。

「これ、なんぼでもイケるわ!」と、とろろめしをすすり込むオークボくん。ふふふ。明日、屁たれ大魔王になることも知らずに。
必死ですりまぜること約40分。でも、食べ終わるのに10分もかかりませんでした。めしが入っているとはいえ、ほとんどかまずにつるつるとノドに入っていくのです。あっという間にすり鉢は空っぽであります。
いやいやたいへんだったけど旨かったね~などと皆で言いあっている時、茶碗の底を見つめていたオークボくんが言いました。
「そ~か、自然薯は食べるものじゃなくて、飲み物だったんだ!」
・・・いや、飲み物じゃないと思いますけど。
店が忙しくなると、オークボくんは横走りに走ります。
これはカウンターと厨房が横に細長いために起こる現象で、敵に襲われたカニが慌ててザカザカッと横走っている感じに似ています。
カウンターの中で刺し身をひく、続けて他の人にぶつからないように厨房に走りこみ、焼きそばペペロンチーノを炒める。
こんな時のオークボくんによく観測される行動です。
中途半端に忙しい時は、横走る途中でくるっと背中を向け、ビールサーバーから生ビールを(自分のために)くんだりすることもあります。
そんなオークボくんが、なかなかビールにありつけない、半端じゃない季節がやってきました。毎年の忘年会シーズンであります。
2年前の12月は忘年会に追われて、コラナビ料理をすっぽかし、昨年は某有名バーのバーテンダーさんたちにピンチヒッターに出てもらい。
さて、今年の12月はどーすんじゃい? とたずねたところ、
「また有名バーにやってもらいましょ~よ!」と、ニコニコしています。
ああ・・・やすきに流れるこの姿勢。
でも、しょ~がないよね。オークボくんだし。
と、そんなあきらめムードを浄化するがごとく、熱帯夜にひとすじの涼風が吹き渡るがごとく、天女が降臨するがごとく! オークボママが、
「私がやりましょう」と、申し出てくれたのです。
オークボくんの店には「ママの気まぐれデザート」というメニューがあり、季節のフルーツなどを使ったデザートは、下は1歳9ヶ月、上は88歳のご常連までと幅広い人気なのです。
も、決定。12月はママのデザートに決定。
で、素材は「じゃばら」に決定。
じゃばらを漢字で書くと「邪払」。和歌山県の北山村でしか採れない不思議な柑橘で、皮に独特の香りがあります。

これがじゃばら。昔からじゃばらを食べると風邪をひかないと言われていたそうで、最近では花粉症や便秘、美容にも効果があると注目されている。文字通り、邪を払ってくれる優れもの。
さて、オークボママのじゃばらデザートは店で不定期に開催される「女子会」でお披露目することになりました。ママの力作をごらんあれ!
あそうそう。女子会は年齢は不問ですが、名の通り女子しか参加できません。とーぜんオークボくんは部外者です。のけもんです。や~いざまみろ。

女子会の最初の一杯に登場。オークボママ特製じゃばらカクテル。じゃばら果汁に砂糖を加えたウオツカベース。甘酸っぱい優しい口当たり。バックに見えるのは函館名物「イカール星人のさきイカ」。

じゃばらカクテルで乾杯する女子会の女子たち。後方に指をくわえてのぞき見するオークボくんが写りこんでいる。

右がオークボママの力作「じゃばらの生キャラメル」。口に入れるとじゃばらの香りがふわ~っと広がる。激うま。はっきり言って花畑の負け。左はじゃばらのパウンドケーキ。素朴なケーキにじゃばらの風味がアクセントをつけて絶妙。
「ナガイさ~ん、ハゼ釣りに行きましょうよ!」
「・・・・・」
「ナニだまってるんすか~? ハゼ行きましょうよ~、ハゼ、ハゼ!!」
ああ、う五る月さ蠅い。
大事な客が、今年も鮭が釣れなくて悲しんでいる時に、なぐさめもせず、ハゼハゼと連呼するオークボくんが心から憎い。
なぜにオークボくんがハゼにこだわっているかといえば、故郷、宮城の正月の味であるらしいのです。
オークボくんの父がハゼを釣ってきて焼き干しにし、それで出汁を取って雑煮を作っていたらしいのです。
らしいらしいと、なぜに推測文が続くかといえば、ハゼ出汁を使っていたのはオークボくんが生まれる前の話で、その後はホンダシなどに取って代わられており、当のオークボくんは一度もハゼ出汁の雑煮を味わったことがないのです。
それがひょんなことで父からハゼ出汁の話を聞き、料理人であるオークボくんのココロがゆさぶられてしまったのです。
いまだ味わったことのない故郷の味を再現したい。その一心でオークボくんはハゼハゼとうるさいのであります。
そんなわけでハゼ釣り行きました。

なかなか釣れない。ちょっと弱気な笑顔のオークボくん。

まだまだ釣れない。哀愁ただよう背中。

となりで小サバを釣るオークボママ。絶好調。

ぜんぜん釣れない。近くの船に乗り組んでしまったオークボくん。
ふとあたりを見渡すと、たくさんいる釣り人たちのほとんどはチカや小サバを釣っています。ハゼ狙いはオークボくんだけのようです。はたしてハゼは釣れるのでしょうか。

オークボママとオークボキッズが釣り上げたチカと小サバ。ハゼはいまだ釣れず。
やった!やった!とハゼが釣れたのは、夕暮れ近く、そろそろ撤収の準備をしましょうという頃であります。

ようやく釣れたハゼ。小魚1匹で大喜びするワシらを他の釣り人はけげんな目で見つめていた。
で、結局釣果は小サバごっそりとチカごっそりと巨大ヒトデ1枚、小カニ1匹。手のひらカレイ1枚。ハゼ1匹。
ハゼをどうするかオークボくんにたずねたところ、力強く、
「干しますよ!」
とのことでした・・・。
ハゼ料理、期待していましたが、この1匹を私が食べてしまったら、地球最後の日までぶつくさ言われそうなので遠慮することにいたしました。
おそらくいま、オークボくんの店のどこか奥深くには、干したハゼが隠されていることでしょう。

みりん干しにした小チカ。炭火であぶって食べる。

小サバのから揚げ。

小サバ丸ごと1本みそ煮。ハゼはどこに隠したんだよ。
「いや~、肉、肉、肉だったらど~しよ~」
「・・・てか。肉、肉、魚だったりして?」
「・・・・・肉、魚、ポッキーもありか?」
オークボくんがビールをウピウピ飲みながら、楽しそうです。
落語に「三題噺」ってのがあり、噺家さんが客からその場で三つのお題をもらい、そのお題を折り込んで即興で落語を演じるものであります。
これをオークボくんにお料理でやってもらいましょ。というのが今月のテーマで、きっと困るであろう、悩むであろうと楽しみだったのですが、当のオークボくんは「三題料理」と聞いて、なんだか喜んでしまったのです。
よく考えてみると「即興」とか、「その場しのぎ」とか、「何が起こるかわかんない」とかって、オークボくんの得意とするもんではなかったか。
私は今回のテーマ設定を、大きく間違ってしまったのではないか。
などと考えていてもしょもないので、お題の食材を持ち寄る3人を濃い目に設定、選抜することにしました。
持ってくる食材は当日まで秘密であります。
そして当日。

トップバッターはスローな語り口がキュートな、ホーチのナカオ。自分の大好きな虎杖浜の新物明太子を持参。好みを最優先とし、作る側のことをいっさい考えていない姿勢に共感。

次に現れたのは「ほがら家寄席」でもおなじみのナガムツ師匠。マタの間にどどんと赤カブを生やして登場。デカすぎるイチモツ。

予定時刻を遅刻してカワトー(仮名)も登場。持参したのはスパム。「ボクこれ食べたことないんスよ」と、味もわからないものをオークボくんに押し付ける姿勢に共感。遅刻したのはスロットで大当たりしていたため。もったいなくも途中で台を捨ててきたという。

明太子、巨大赤カブ、スパムで記念撮影。

しばしボーゼンとするオークボくん。

おそるおそるさわってみる。
「何すか~これは~???」
ひとつひとつ食材を手に取ってながめるうちに、オークボくんはがっくりとまな板に手をついてうつむいてしまったのです。
オレたちの勝利か!? と色めき立つ食材選抜チーム。ところが・・・

「手抜きじゃないっスよ!」と何度も叫びながら出てきた1品目「赤カブサンド」。赤カブのスライスに明太子とスパムをはさんだだけ。ええ?これのどこが手抜きしてないんじゃい!!と言うも、試食するとスパムと明太子が赤カブのやさしい甘味を引き立てていておいしい。
レモンとかオリーブオイルとかを合わせてみたが、何も加えないほうがおいしいと直球勝負に出た。ホーチのナカオが「・・・赤カブ参上」と古代ギャグをかます。

「赤カブとスパムのポト風 明太バターかけ」。キモチ悪いピンクのスープにカブとスパムが浮かぶ。その上に加熱した明太をトッピング。全員おそるおそる食すも「おいしい!」と大絶賛。
「いや~、やさしい味の赤カブがあってラッキーでしたよ」と喜ぶオークボくんを横目でにらみ、ナガムツ師匠は「ちくしょう・・もっとぎとぎとしたものを持ってくればよかった・・・」とくやしがる。

「おまけで~す」と出てきた、三つの食材にトマトなどを加えたのり巻き。オークボくん余裕。
やっぱりオークボくんは即興に強かった。
なんか弱みはないもんか・・・。
ハタケシメジは私のキノコランキングの中でも、星組トップクラス級においしいと思われ、香りの良さに加え、火を通して一見クタッとしていてもサリサリとした歯ざわりが心地よい素晴らしいキノコであります。
というのは天然もののお話で、近年栽培に成功し、スーパーに出回っているものは、なかなかそこまでの味わいは醸しておらず、あまり買う気にもなれず。
毎年見つけた時だけニコニコ喜んで、みそ汁、バターソテー、キノコめしなどなど、ありがたく味わわせていただく、ちょ~季節限定の味覚なのであります。

これが天然のハタケシメジ。激ウマ。猛毒ベニテングダケと同じくらいの時期に出現する。
生育条件の整った同じ場所にしか出現しないため、採った時には土や菌をその場で丁寧に落とし、根こそぎ採るのは言語道断と少し残し、帰り際には「また来年ヨロシクね。愛してるよ」と甘い言葉をかけて去るのです。
さほどに大事にしていた、私だけのハタケシメジの場所が、来年からアスファルトの下敷きになってしまうようなのです。
草をこぎ分けて入って行くと、あちこちに無粋な杭が打ち込まれています。ここに新しい道路を造成するかんね、というしるしなのであります。
うう、悲しい。
ガバとシメジの株を抱きしめ、ひとしきり嘆いたあと、なんだかムラムラと腹が立ってきました。この怒りをいったい誰にぶつけたら良いのでしょう。
市ですか。道ですか。民主党ですか。
やっぱオークボくんでしょう。
いざ今生の別れとばかりに、ひとつ残らずシメジを切り取り、その夜遅く鼻息も荒くオークボくんの店に持ち込みました。
市とか道とか民主党のかわりに、オークボくんに八つ当たりしてウサ晴らししてやろうと思ったのです。
ところがオークボくん、すでにビールで酔っ払っていました。

ハタケシメジをくわえて酔っ払っているオークボくん。目ぇ~デカっ!
「え~、これハタケシメジすか~!? 最近気になってたんすよ~」
ぽわ~んとしたフワフワな声で、すか~とか、んすよ~とか言われると、人間怒りを持続できないもんであります。せっかく朝から八つ当たりを楽しみに働いていたのに・・・がっくし。

酔っ払いながらもハタケシメジで作った1品。「ハタケシメジとホタテ貝柱の函館仕立て」。←なんだよこの函館仕立てって、と思ったことでしょう。これは後から「料理の名前なんにする?」とオークボくんにメールしたら、シルバーウイークに函館山の頂上にいたオークボくんが返信してきた料理名なのです。素材や料理法にはなんら関係はありません。アホだね。
とある真夏の昼下がり、オークボくんから電話がかかってきました。
「ナガイさ~ん。さっき金沢からヘンな野菜が店に届いたんスけど~、こんな野菜みたことないっスよ。ど~すんですかコレ???」
むふふふふ。困ってる。困ってるよ、オークボくんが。
金沢に住む大酒飲みの友人カネミツ夫妻は、このオークボくんのコラムの愛読者で、先日、生のオークボくんをひと目見ようとはるばる金沢からすすきのまでやってきたのです。
その折に、金沢には伝統的な郷土野菜の「加賀野菜」なるものがあり、北海道ではめったに手に入らないので、オークボくんに送りつけて困らせるとたいそう楽しいではないか、となったわけです。
そのカネミツ夫妻が送りつけてきた加賀野菜とは、

小さくてコロンとしているのが「へた紫ナス」。左の三日月型が「千石豆」。どーんと太いヤツが見た目通りの「加賀太キュウリ」。後ろのハデなのが「金時草(きんじそう)」
「豆は・・・まあ茹でれば食べられますよね。でもこの、へた何とかとか、太何とかとか、緑と紫のこの葉っぱなんか、ボクはいったいどーすりゃい~のデ~ス?!」
ああ、気分いい。久々にオークボくんがウソ泣きしております。
しかし、私もはたと困りました。確かにどーすりゃいいのか全~然わかりません。
そこで、店のあかりを消し、オークボくんと交霊会を行うことにしました。加賀野菜の霊を降ろして、料理法をたずねてみようということです。
降りてきました。

交霊会にやって来た加賀野菜の精霊カネミツ。オークボくんの耳元で料理法をささやいている。「・・太キュウリはあんかけや酢味噌・・金時草はおひたしや酢の物・・へた紫ナスは金沢人はソーメンと煮ることが多いぞよ~~」
さあ、精霊の力も借りて、オークボくんはどのように難関を突破したでありましょう。

加賀太キュウリとシジミの冷たいスープ。おっと、精霊のアドバイスをまったく無視したひと皿目。冬瓜のように半透明に煮た太キュウリが美しい。スープの淡い緑色は、皮をペーストにしてこしてから出汁と合わせた。暑い日にぴったりのひんやり感。

金時草のおむすび。塩水に漬けた葉でジャコめしを巻いたもの。独特の青臭さとモロヘイヤのようなぬめりがあり、わりとクセになるかも。濃い緑と赤紫の葉と白いめしのコントラストが目にしみる。またもや精霊のアドバイスは無視。あくまで金沢の挑戦に打ち勝つ姿勢か?

へた紫ナスのとりめん。負けたワケじゃないですよ。ソーメンじゃないですからネ。とりめんですからネ、というオークボくん必死の抵抗がうかがえる1品。焼いたへた紫ナスのおひたしにとりめんを巻き入れ、茹でた千石豆を添えた。
大胆不敵に加賀野菜を送りつけてきたカネミツ夫妻、かたやアホ科の天才料理人オークボくん。
みなさんはどちらに軍配をあげますか?
「ちょっとオークボくん。ナスが来たよ~!」

「おお、すげー立派なナス!」

「それではワタクシ、1曲歌わせていただきます」

♪ナスが来~れば 思い出す~♪
先日、大阪で良くしていただいている料理屋さん「おばんざい きむら」から、ちょ~立派なナスが届いたのであります。
ピカピカつやつやぷっくり黒光りした、極上の水ナスです。
「♪ナスが来~れば 思い出す~~♪」
・・・もういいからね、オークボくん。
きむらさんでは、数々の美味しいものを味わわせていただいたのですが、このお店で生まれて初めて食べたもののひとつが水ナスでありました。
北海道ではあまりなじみのない種類のナスですが、これが生食でたいへんおいしいもので、丸ごと塩もみして皮に塩をなじませ、手で割ったものを食べたのです。
水気たっぷりの実に淡いリンゴのような香りと味わいがあり、今まで炒めたり焼いたりみそ汁に入れていたナスのイメージがガラリとかわったことを思い出します。
「♪ナスが来~れば 思い出す~~~♪」
「コラ、やめんかい。今月はこの水ナスで料理作ってもらうからね」
「わかりましたっ! 塩もみでいいすかネ?」
いいすかネ?ってオークボくん・・・それはきむらさんで食べて美味しかったってお話した食べ方でしょ。
丸ごとまねっこの料理したって面白くないでしょ~。自分で考えなさい。
と叱咤激励したら、なんだかオークボくんぱちりとスイッチが入ってしまったようで、次から次から料理のアイデアがわいてしまったのでした。

「ナガイさん、水貝って知ってます~?」とオークボくん。知ってるともさ。アワビを塩水で食べるやつだろ? 水ナスにアワビを合わせるなんてゴージャスだね~、と喜んでいたら、塩水には氷とナスしか浮かんでいない。ポカンとしてオークボくんの顔を見たら「水ナスです」って、おい、そのまんまやろ! しかしこれがさっぱりして旨かった。

「水ナスの刺し身でございます」。上の料理の発展系。塩水に10分ほど漬けた水ナスを裂いて、山ワサビとしょうゆで食べる。これも瑞々しさが生かされていて旨い。2個目にはしをのばしたら、オークボくんに「ダメ! 残りは次の料理に使うんだから、写真撮ったらさっさと返してくださいよ」と止められた。ケチ!

「生ハム巻きでございます」。←この敬語、なんかコワいよオークボくん。上の料理で私から取り返した水ナスに、仁木町産のサクランボで作ったジャムをのせ、生ハムで巻いたもの。サクランボのやわらかな甘みと生ハムの塩気が水ナスを引き立てている。

水ナスの田楽。ウニをのせ、ミソだれを塗ってさっとあぶったもの。種を明かせばこのミソだれ、大阪のきむらさんから「かもナス用にどうぞ」と一緒に送っていただいたもの。オークボくん、ちゃっかり失敬して一品作ってます。

あぶりサンマと水ナスのサラダ。脂ののったサンマとジューシーな水ナスの相性ばっちり。しかし、どんだけ料理作るつもりなの~~?!
オークボくん、料理5品でようやくスイッチオフとなりました。
ナスの思い出がまた増えました。
「♪ナスが来~れば~」
いや、歌わなくていいから。
「も~1曲っ! ♪ナス ナス ナス ナス ココ~ナ~ッス♪」
い~かげんにせいっ!!
「それでは道内のお天気です。今日は全道的に雨。ところによって雷が発生するでしょう。午後からは晴れるところもありますが・・・・・」
某日。朝5時の天気予報は、あまりに友好的とはいえないものでした。
この日、オークボくんは生まれて初めてタケノコを採りに行く予定であります。
去年までは行こうって誘っても、即「ムリ」とか「イヤです」とか断っていたオークボくんが、「行きます」と前向きになった、その決行当日に全道的な「雨」。人徳です。
よく雨後のタケノコといいますが、雨降りの後、たっぷり水分を吸って育ったタケノコはとてもやわらかくて美味このうえないものです。しかし、雨中のタケノコはいかがなものでありましょう。
たっぷり水分を吸うのにかわりはないと思われますが、ヒトの方もたっぷりと水分を吸い、ずぶ濡れになるのは間違いのないことと思われます。
でも行きました。

タケノコ山に出現した邪悪な妖精・オークボックル。大きなフキを傘がわりにさすもずぶ濡れ。手にタケノコを握り締めてまわりを威嚇している。
北海道の笹竹は、ヒトの背丈より高い笹のジャングル内に生えます。
笹をかきわけながら2~3メートルも前進すると、となりにいるはずの人の姿はすぐに見えなくなり、自分がどちらの方向からやってきたのかすら分からなくなるのです。
遭難を心配したオークボママは、賢明にもオークボくんの首に鈴を付けたのですが、アホのオークボくんは恥ずかしいからと取ってしまいました。
笹の葉の海の底へじっとしゃがみ込み、タケノコを探している間は無音です。四方八方へ目を配り、見つけたとなると、そのタケノコめがけてガサガサとやぶをこぎ分けて進むのです。
とその時、私のすぐ横を「ザザザザザッ」とケモノのような勢いで、しゃがみながら進んで行ったものがいます。
「オークボくん?」
「ハイ~?」
やぶの向こうから気の抜けた返事が返ってきました。
そして「ぱきゅっ!」とタケノコを折り取る音。
初めての経験なのに、只者ではない身のこなし。
これは後日聞いたらラグビーで人の下をかいくぐって鍛えた技だということでした。人生なにが役に立つかわからないものです。

ラグビー移動法を駆使して、けっこうな上物をたくさん採ったオークボくん。右側のタケノコは直径が26ミリもあった。

味噌漬けにしたタケノコをクリームチーズで和えた一品。味噌もチーズも発酵食品だけに、ばっちりの相性。酒が進む。

「タケノコスペシャルです!」と得意気に持ってきた、タケノコと黒豚の柳川風。このほか地竹焼き、地竹と桜えびの掻き揚げ、地竹とホッキの炊き込みご飯などがメニューに登場。自前の素材への愛と気合がこもっておりました。
オークボくんの店には「皆勤賞」というヘンな風習があって、一週間休まずに来店した客は、なんでも好きな料理を作ってもらうことができるのです。
私も一度、気がついたら皆勤賞を授与されたことがあり、たちと生のりのギョウザを作ってもらいました。そのもようはバックナンバー08年3月にくわしく掲載しております。
でもさ、同じ店に一週間も通うのってど~よ?
こう普通のヒトは考えることでしょう。私もなんとなくそう思います。
それを4週連続で達成した普通じゃないヒトが今回の主役、ヤチさんです。

←これがヤチさん(巨顔の方)と、1~3週の料理をともに考えてくれたという盟友オーハシさん(赤い方)。
ヤチさんが2週目を達成したと聞いたときには、ヒソカに「あいつはただ者じゃない」と思いましたが、3週目いき、4週目達成のときにはただ者どころか、ただのアホなのだと確信にいたったわけです。
ただのアホならこわくないので、相談を持ちかけることにしました。
「おいゴラ~、ちょっとヤチさん、4週目の料理だけどさ~、コラナビとコラボしなさいよ!」
「・・・ハイ」
即OK。良い男です。
ちなみにヤチさんが1~3週達成でオーダーした料理は、
「ねえオークボくん。これさ~、このラインナップで4週目ってサ、いったい何がい~のよ!」
「そっすネ~、季節的には山菜いきたいトコすけどネ」
「山菜ね・・・。ヤチさんが喜ぶような山菜ね。そ~ね~・・・」

←ヤチブキに決めました。
ヤチブキ:和名エゾリュウキンカ。キンポウゲ目、キンポウゲ科、リュウキンカ属。水辺や湿地を好む。
オークボくん:学術名ニッポニア・オークボラロ・ピテクス。ヒト目、アホ科、天才料理人属。ジョッキビールを好む。
好きな料理をオーダーできる最後の4週目に、単なるギャグで勝手に料理を決められるヤチさん。あわれなり。
しかし内容はかなりゴージャスなものとなりました。
以下ヤチブキコース、ごらんあれ。

ヤチブキ刺し身。さっとゆでてスライスしただけ。香り良く、さわやかなライトグリーンが美しい。

ヤチブキベーコン。ベーコンで巻き、炭火で香ばしくあぶったもの。シャリシャリ感ばつぐん。

ヤチブキと黒ガレイの煮こごり。カレイの味とヤチブキがぴったりの相性。ぷるぷる感もたまりません。

ヤチブキのペンネ風。クキの空洞のなかにタラなどのすり身を詰め、トマトソースで和えたもの。この発想、やっぱアホ科の料理人じゃないと出ないだろな~。イタリアンなひと皿。

地竹と黒豚の炊き込みご飯で締めとなりました。ヤチブキ以外も食べられて良かったね、ヤチさん。
春はあけぼの
やうやう雪のとけたる山際 少しあかりて
緑濃くなりたるギョウジャニンニクの
太く採りごろになりたる
<現代語訳>
春はやっぱギョウジャニンニクでしょ~。
やっと山の雪もとけて、山菜シーズン本番よ? 4時過ぎたらだんだん空も明るくなってくんだからさ、早起きのジジイどもに先越される前に、さっさと支度して採りに行かなくっちゃ。いやも~朝からめっちゃコーフンするわ。
そんなわけで、この頃は朝3時にはぱっちり目を見開いて、ひとり悶絶コーフンしているナガイです。
さほどギョウジャニンニクの魅力は強く、においは臭く。春よ春よと私の海馬をくすぐるのです。
「ね~オークボくん。去年も4月のテーマ、ギョウジャだったよね」
「そっスね。たしかギョウジャニンニクぴざっス」
「その前の年の5月もギョウジャだっけ?」
「そっスね。春ガツオのギョウジャニンニクそ~すっス」
「・・・やるよ、今年も!!」
「え!またスか!?」
「またもキン●マもないっ! 春はギョウジャに決まっとるんじゃ!!」
と、オークボくんにゴリ押ししたら、数日後になんかスゴいもんができあがってきました。コレです↓

オークボくん特製、ギョジャベーゼソース。ギョウジャニンニクとカシューナッツ、オリーブオイルを合わせたペースト。きょーれつな香りと美しい緑色がチャームポイント。これをタッパに入れてバスや地下鉄の中で開けるとテロと思われ、逮捕される可能性大。

ギョジャベーゼソースとギョウジャの葉入りパスタ桜皿盛り。普通のニンニクにやや青臭さと、山菜独特のほろ苦さが加わった香りと味わい。ギョウジャニンニクがもろイタリアンテイストになっておるのに驚き。

オークボくんちのメニューにあった「フライドポテトのアンチョビバターソース」に、さらにギョジャベーゼソースを加えた「くさいドポテト」。アンチョビとギョウジャの香りがスクラムを組んで鼻腔に抜ける。快感。
ギョウジャニンニクといえば、ジンギスカン、しょう油漬け、おひたしなどが定番ですが、今回めでたくイタリア方面にも進出を決め、ギョウジャの今後の可能性に一石を投じたと言えましょう。チャオチャオ。
【2月某日】大阪、阪急宝塚線終着駅、宝塚。
宝塚大劇場へ続く小道でつい口ずさむこの歌。
♪すみれのは~な~ 咲く~ころ~~
はたまた、心の内で熱く叫ぶこのセリフ。
「オスカ~ル!」
「アンドレ~!」
「オスカ~ル!」
「アンドレ~!」
ふと目に付く素敵な和菓子屋の「塚乙女まんじゅう」
「ねえ、おばちゃん、これ中身なに?」
「カスタードクリーム」
「餡どれ?」
「アンドレ~!!」
さて、本編です。
乙女まんじゅう屋の近くの店先で「呼吸チョコ」なるものを見つけ、しげしげと眺めてみたのです。関西ではちょ~メジャーなチョコとウワサは聞いていましたが、見たのは初めて。
アーモンドをチョコでくるみ、ココアパウダーがまぶしてあります。ひと袋に約30個入り。30秒ほど見つめましたが袋が動く気配はありません。自発呼吸なし。
味見するとたいへん美味しいのですが、呼吸がラクになる気配なし。酸素発生率ゼロ。
「じゃ、なんで呼吸なんじゃい!!」と店員さんをどつく前に袋の裏書読んで良かった。~作りたての風味が息づいているから~なんだそうです。
しかも、全国菓子大博覧会栄誉金賞も受賞しているツワモノであります。ひと袋購入。
【2月某日】札幌、すすきの、オークボくんの居酒屋。
「ねえねえ、オークボくん!バレンタインデーにさ、チョコ何個もらった?」
「ゼロす」
「・・・ママからは?」
「たい焼きもらいました」
データをまとめると、オークボくん、義理チョコ0。妻から1(たい焼き)という結果となりました。
ちなみにコラナビ編集長のワタナベは義理チョコ1、妻から1(普通のチョコ)、大阪のJ氏は義理3、妻から0。函館のI田氏は義理6、妻から1(義理チョコ買うついでに購入)という調査結果が出ています。オークボくん最下位です。
そこで私は、くだんの呼吸チョコをオークボくんにあげることにしました。バリッとふくろを開け、ひと粒。

これが呼吸チョコ。アーモンドそのまま大でライターより小さい。
そして、迷惑そうにひと粒受け取るオークボくんに
「ホワイトデーのお返しはクッキーにしてよ! 甘くなくて酒のつまみになるようなやつね」と、バシッと果たし状をたたきつけたのでした。
で、3月某日に出されたお返しがコレ↓。
無礼に礼をもって返された、もんくもグーの音も出ないゴージャスなひと皿です。
オークボくんありがとう。負けた。今月もくやしい。

めしにネギトロのっけ、キュウリにイクラのっけ、長イモ酢に山ワサのっけ、鳥くわ焼きなどさまざまな酒肴がすべて四角にあしらわれてひと皿に並べられ、おまけに金粉までトッピングされている。なぜ四角なのかとたずねたら、「ボクの中で、クッキーは四角なんです」とのことだった。

余った金粉をひたいに付け、毛ガニをもってかわいこぶるオークボくん。
テケてんてんて~ん♪
「オークボくん、オークボくん、こんどさ、ここでさ、落語会やろうよ」
「え~、ナガイさんなに言ってんですか。イヤですよ。なんでわざわざうちで、そんな落ちこぼれの会をやんなきゃならないんですか。暗いですよ。どよ~んですよ」
「あんた......そりゃ落伍者の会だよ。たしかに暗いね。あたしが言ってんのは寄席のことだよ」
「そっちのがもっとイヤですよ。うちの鍋フェアはもうとっくに終わってんですよ。この暖冬に、もう誰も食べてくれませんよ」
「......そりゃ寄せ鍋のことかい? 違うよ。お笑いだよ。お笑いを一席の、落・語・だよ!!」
「んあ? あ~、いっすネ~。やりましょう!」
2月某日、オークボくんの店内に作った高座で噺を披露していただいたのは、このコラム11月の「長い焼き鳥」に食い付いていたナガムツ師匠であります。演目は、
「饅頭こわい」
「味噌倉」
どちらも食べ物がいろいろ登場するお話で、このふたつのお話とコラボして、オークボくんに料理を作ってもらおうということになりました。んで、打ち合わせの日......。
「んふっ、むふふふふふふっ」
オークボくんがブキミに笑っています。すごいブキミ。
「ナガイさん、饅頭こわいですけどね、饅頭じゃなくてシュウマイにしました」
「なんで?」
「ナガムツ師匠のお話が終わるでしょ。その時、蒸したてのシュウマイをど~んと皿に盛って出す。そん中に、ホントにこわいシュウマイをまぜておくんです」
「ホントにこわいって??」
「んふっ。中にカラシをたっぷりと」
で、当日......↓

「から~~~~っ!!」。こわいシュウマイに当たってしまったコラナビ編集長のワタナベと、ヒロミ嬢。さすがオークボくん、自称天才料理人だけあるね。客イジメも天才的腕前。激写したのはアキモト宴会主任カメラマン。

一席目「シュウマイこわい」のために作ったエビシュウマイと黒豚シュウマイとこわいシュウマイの盛り合わせ。こわいヤツ以外はふわふわ熱々でとっても旨い!

二席目「味噌倉」に出てきた料理の数々。鯛の姿造り、鳥ザンギ、旨煮、おから、ニシン漬け。最後にお話のかなめとなった味噌田楽も登場。オークボくんのなみなみならぬ気合が感じられる。

熱演で観客のココロをワシづかみにしたナガムツ師匠。ぜひまたやってくださいと、観客からラブコール多数寄せられてます。

寄席の最後には、KIRIGAMISTの千陽(ちあき)さんが、華麗なる切り紙パフォーマンスを披露。コラナビ技術長のイシカワは横顔を切ってもらって幸せいっぱい。
てな模様で、落語&料理のコラボは大盛況のうちに幕を閉じたのであります。
後日、オークボくんの店のメニューに黒豚シュウマイがデビューしてましたが、コワいやつがまざってそうで恐ろしくて注文できまへん。あ~、オークボくんってこわい。

アイデアというものは、どこからころがり出すかわからないもので、私は先日、坂道をスキップしながら鼻歌を歌っているときに出てきたのでした。
♪たらったらったらった ウサギのダンス~
♪たらったらったらった らったらったらったら~
ん?! そ~だ、
タラにしよ~っと、今月のオークボくんの料理。
「ってことでさオークボくん、タラ使ってなんか作ってちょ~だい」
「ナガイさん、それアイデアってより、ただタラッタラ歌ってただけなんでしょ。タラでなに作るんですか。どーせまた、まかせる!とか言うつもりなんでしょ!」
「うむ、むむむ......。そんなことない。考えてるよすご~く......ホレ...その...あの...
え~っと、そう!あれ!ハンバーグ!!」
苦しまぎれにひねり出したハンバーグ、てっきり却下されると思っていましたが、そのときオークボくんの目がキラリと光ったのであります。北極の氷のエッジが太陽光にきらめいたような、そんな一瞬の輝きです。やな予感。
「もう出来ましたから。頭の中で」
オークボくんが、こんな強気の発言をした一週間後。
「なにコレ。白いよ?」
「ふふふ、今回は白がコンセプトですから」
出てきたハンバーグの形をしたものは、焼き色こそついていますが、なんか白ちゃけており、ソースもホワイトソースです。
でもま、タラって白身だからねと気を取り直し、はしを入れてみました。ずぶずぶ。
「ずぶって......、なにコレ。やわいよ?」
はしで食べるってよりは、もんじゃ焼きのヘラがほしくなるようなやわらかさです。
ねっとりしてます。
「ふふふ、わざとトロけるように作ったんですよ。料理名も付けました」
「どんな?」
「北国の雪どけハンバーグ」
も少し牛乳でのばせばクリームシチューになりそうな味わいと舌ざわり。
タラの他にまざっているのは、おから、たち、くず粉、牛乳、玉ネギ、長ネギとのこと。これじゃトロけるはずだよ。
ちょっとさ~、頭が温暖化してるよオークボくん。

北国の雪どけハンバーグ。オークボくんいわく「中に見えるネギの青いトコは、雪の下に隠れるフキノトウのイメージ」。本当にトロけさすつもりで作ったのか、疑惑の残る一品。

試食の翌日、コロッケにアレンジして店のメニューにのせたオークボくん。目つきがあやしい。

鱈とおからのクリーミーコロッケ・500円。クリーミーなどと英語でごまかす当たりがワザ。
「名立たる有名バーで、オメーは何やっとるんじゃあ!」
コラナビ編集長のワタナベが悲鳴をあげています。
何ってオメー、カクテル作ってもらってんに決まってんじゃんよ。しかもすごいよ。コラナビのための完全オジジなるカクテルだよ。
え、オリジナルカクテルの間違いだろって?
ちがいます。「オジジなる」でいーの。だって今回は「オークボくんにささげるカクテル」、つまり、「オヤジにささげるカクテル」がテーマなのであります。
昨年12月。忘年会に追いまくられたオークボくんは、私との堅い約束をすっぽかし、コラナビ料理を作ることが出来なかったのであります。
それを1年間しつこ~く根に持って、いや、温かく覚えていた私はオークボくんに今回12月、1回休みを差し上げることに決めたのです。
でも、オークボくんが休みだからといって、このコラムに穴をあけるわけにはいきません。
そこで前出の名立たる有名バー「D・エルミタアヂュ」へのこのこと出向き、オークボくんに裏切られた辛い心情と、オヤジにささげるカクテルへの熱い想いを語ったところ、快く「オジジなるカクテル」製作を引き受けていただいたという次第なのであります。
どんなカクテルが仕上がったかといいますと・・・。

【おでんカクテル】 焼酎ベースのロングカクテルに、串に刺したレモン、じゃばら、オリーブをおでんに見立ててあしらった1杯。寒い冬に、ふーふーしながらおでんを食するオヤジ様をイメージ。Y・ナカタ氏作。

【おでんカクテル・その2】 こちらはウイスキーベース。具材はオリーブ、うずらの卵、小梅、パールオニオン。食べやすい串付き。(なぜバーにうずら卵があるんじゃ?) 美しい丸氷の下に透けて見える赤いのはハスカップリキュール。淡く甘酸っぱいオヤジ様の恋心を表している。S・サトー氏作。

【オヤジ様試飲之図】 「オヤジって、串ものが好きなんだよな~」と、おでん&淡い恋心を堪能するオヤジ様。渋い。モデル・ミスターA。

【メタボリックカクテル】 メタボなオヤジ様のウエストのようにぷっくりと膨らんだブランデーグラスに、ボイルした脂たっぷりの豚バラ巻き。ビールをトニックウオーターで割ってヘアトニックくささを演出し、枝豆のおつまみ付きという、ゴージャスな1杯。A・サイトー氏作。

【オヤジ様はタコもお好き】 釣りたてのタコを素早くボイルし、おつまみがわりにあしらった一杯。青い海の底からニョロリと姿を現すタコをイメージ。カクテル名は「テンタクルス」。カクテルはとてもおいしい。うっすら塩味のタコも絶妙。でも一緒に味わうと・・・微妙・・・。すみません、こんなカクテル作らせて。Y・ナカタ氏作。
さて、すばらしいオジジなるカクテルの数々、いかがでしたか。
ちなみにこのカクテルはオークボくんのために、むりくり特注でお願いしております。注文しても出てこないことをなにとぞご了承ください。
それでは、今年も1年のご愛読に感謝。ありがとうございました。さよオナラ。
「ち、ちょっと待ってくださいよ~!!」
「な~に、オークボくん。なんか用事~?」
「だってナガイさん。今回はオレにささげるカクテルなんでしょ~? なんでナガイさんがぐびぐび飲んでて、オレがひと口も飲めないんスか?!」
アホですね、オークボくん。12月はとっても忙しいんでしょ~。んで名立たるバーにピンチヒッターしてもらって1回休みにしたんでしょ~。だからさ、飲むのも私がかわりに飲んでやったんじゃ。ウケケケケ!
でもま、ちょっとかわいそうだから余ったタコあげましょう。これでビールでも飲んでなさい。じゃ~ね~。

トホホ~。
「長い焼き鳥が食べたい~」
「ナニそれ? ナガイさん専用の焼き鳥ってことスか?」
「違うよ! ロングで長~~~い焼き鳥が食べたいんだよ!」
「長いって、どんくらいの長さスか?」
「そーね、1メートルは欲しいネ。んで、どーせなら鳥のいろんな肉を刺したいね。ハツとかレバとかさっ。正肉だけじゃ飽きるもん!」
「い、いちメートル???」
ということで、長い焼き鳥を作ることとなりました。
以下製作の様子は写真でお楽しみください。

【刺す】オークボくんの用意した具材を串に刺す、コラナビ編集長のワタナベ。「鳥皮が固くて刺さりにくいんだよな~、卵は割れそうでコワいんだよな~」などとぼやきながらひたすら刺す。串の長さは希望よりちょい短い90センチ。

【具材】てっぺんより、全15種類40個
たまご
ぽんぽち
正肉
胸肉
手羽先の先
銀皮
ぽんぽち
手羽元
胸肉
卵管
ハツ
手羽先
銀皮
ネギ
胸肉
銀皮
鳥皮
ハツ
たまご
正肉
ぽんぽち
銀皮
卵管
正肉
ネギ
砂肝
鳥皮
たまご
砂肝
レバ
ネギ
銀皮
卵管
ぽんぽち
ハツ
レバ
ささみ
砂肝
レバ
ネギ

【焼く】金串を支えにして長い焼き鳥を焼くオークボくん。部位によって焼け具合が違うので、焼け面を入念にチェック中。炭の上にしたたる脂がジュウジュウと香ばしくなってきた。

【焼けたよ~】軍手で金串を持ち、焼き台からソロリソロリと皿方面へ移動するオークボくん。転ぶなよ落とすなよと、見ている方面にも緊張が走る。

【運びま~す】オークボくんの店で一番長い皿を、さらに2枚つなげて焼き鳥を運ぶオークボママ。転ぶなよ落とすなよと、見ている方面にさらなる緊張が走る。

【いただきま~す!】さあ食べましょう!という段階でとつじょ現れたナガムツ師匠(中央)とコラナビ技術長のイシカワ(左)。肉の重みでウエーブする串を持ってかぶりつく。うまいっ!
「オレが苦労して刺した肉なんだぞ~!」と叫びながら、負けずとかぶりつく編集長ワタナベ(右)。
ここは某海岸の防波堤。早朝に釣りをしていたら、ドバンッと何かが海に飛び込みました。
・・・おやじです。おやじがひとり海に落ちたようです。
「だいじょぶかっ!コレにつかまれ~!!」
ほかのおやじたちがあわてて救助しています。みな、手に手に3メートルから4メートルの「ヤリ」を海上に差し出しています。
なんだか救助というよりは、瀕死のクジラのまわりに群がる鉄器時代の漁師のようでもあります。
落ちたおやじは何本かのヤリにつかまり、防波堤沿いに20メートルくらい引っ張られて、浅瀬で無事に上陸しました。
ああ良かった良かった・・・ちょっと面白かった。
ところ変わってオークボくんの居酒屋。
「って、こんだけ危険な場所で体を張ってとってきたんだから、なんかおいしいもん作ってよね!!」
まな板にドデ~ンと横たわっている巨体は、麻生太郎の口を横にガバッとひらいたような顔つきの「カジカ」であります。通称ケムシカジカ、またはトウベツカジカと呼ばれる種類で、汁物などにするとぐんばつのダシが出ます。お腹がぱんぱんに張っていて、卵がたっぷり入っています。
このカジカ、10月になると産卵のために岸よりし、海面を漂う海草の上にゆら~っと姿を現します。そこをヤリでねらって、グサッと突くわけです。正確にはヤリではなく、フォークをデカく鋭くしたような「ヤス」という道具です。
防波堤にいるおやじたちは、これをねらって朝からず~っと長いヤスを構えて海面をのぞき込んでいるわけです。で、グサッとやるときに、たまに勢い余って落下していくおやじがいるわけです。年に2~3人は落ちるそうです。
欲が深いから深みにはまっちゃうわけなのです。

クチを開けて怒っている麻生太郎(仮名)。この後、麻生次郎、三郎四郎五郎と全部で5兄弟がとれました。

カジカを突くための「ヤス」。これにつかまって救助されたくないよな~。

カジカ卵しょうゆ漬け熱々ごはんのっけ。卵はイクラの半分ほどの大きさで皮がややかたく、ぷちぷちした歯ごたえ。そのまま食べるとイマイチだけど、ごはんとはジャストミートな相性。

定番、カジカ汁。アラ、キモ、卵が入って旨い!

カジカのフライ。フライで食べるのは初めて。脂ののった上質の白身で、レモンとソースがばっちり合う。「ボクも初めて作りましたよ~」とオークボくんが得意げに運んできたのが印象的。
「ハチの巣みたいなもんもらってきたから料理してよ」
「・・・ナガイさん、なんすか? 巣みたいなもんって」
「だーかーらー、ハチの巣みたいなもんだよ! 中国だってよく料理に使ってるじゃん」
「あれはツバメの巣でしょ~!? ハチの巣ったら韓国料理じゃないですか???」
「違うよ! 肉じゃないよ。ブンブン飛ぶヤツの巣だよ。ほら!」

「こ、これ・・・どやって食べるんすか」
ふ。そんなもん知るわけないもんね。
最近、オークボくん、難題をふっかけても楽々クリアして素敵な料理作るもんだから、ワタクシとしては少々つまらないのであります。
困らせたい、悩ませたい、失敗させたい。ただこの一念だけでハチの巣をゲットしてきたのです。うはははは!
「割って天ぷらですかね~」とオークボくん。
「まぜてアイスクリームもいいかも」とオークボママ。
とりあえず、そのまま試食してみることにしました。
ねっとりした感触の巣をひとかけらずつ口に入れ、かんでみると、
「あま~い!!」
上品な蜜の味が口に広がります。しかしその後すぐ、
「・・・?????」
試食していた全員の頭の上に、はてなマークがピコ~ンと立ちました。
口の中になにか物体が残るのです。蜜の味はとっくに消えてなくなっています。それなのに、かみ終わったガムよりも無味な、くちゃくちゃした物体が残っているのです。
「ナガイさん、これ本当に食えるものなんですか?」
オークボくんが口をくちゃくちゃさせながら不安げに聞いてきます。
そんなもん私だってわかりません。ただ、この物体は飲み込んではいけないような気がひしひしとしてきます。
そこへ店の奥で飲んでいた酔っ払いが通りかかったので、すかさず捕まえて人体実験することにしました。
「これ、おいしいよ。食べてみる?」
酔っ払いが飲み込んだら、私も飲んでみるつもりでした。
ところが、半分野生に戻ったような酔っ払いなのに、ヘンな顔をしていつまでもかんでいるのです。飲みません。動物としての本能が「飲むな!」と告げているとしか思えません。
その時、ハッと思い当たりました。オークボくんも気づいたようです。厨房に走りこんで焼き豚用のタコ糸を持ってきました。
私は物体を吐き出し、丸めてタコ糸をくるみ、火をつけました。
・・・燃えました。
ロウです。物体の正体はミツバチが作る「蜜蝋」だったのです。
後日ネットで調べたら、ハチの巣の壁は蜜蝋で出来ており、それで作られるローソクは古くから仏教やキリスト教の儀式に使われていたそうです。
天然素材なので、食べても問題ないけれど「絶対的にマズい」とも書かれていました。
ああ、飲まなくてよかった・・・。
オークボくんを困らせようと思ったのに、自分が困ってしまいました。
まさに泣きっ面にハチ。とほほ。

ロウと蜜を分離するため、ハチの巣ごととかしたもの。黄金色が美しく、そのままなめてしまえそうだが・・・

冷えてくると、上面に浮かんだロウが白く固まってくる。ここにウインナーでもつければ、ローソクフォンデュのできあがり。

分離したロウで作ったローソク。

燃えるローソク。

お誕生日が近かったサンミ氏。甘味を食べるのに酸味とはこれいかに。分離したばかりのローソクを皿にともして誕生を祝い、黒豚のハチミツ焼きを食するの図。
畑をたがやし、キノコを採り、魚を釣って、部屋はきたない。
「採取狩猟農耕騎馬民族」と呼ばれるワタクシですが、今現在もっとも自分のトレンドはヤマメちゃんです。
クマの気配にビクビクしながら川へ入り、ぴかぴかのヤマメちゃんを釣りあげる快感は、何にも代えがたい楽しみと言えましょう。
「いっぱい釣ってきたんだからさ~、骨酒作ってよ、コツ酒!」
頭を低くしてオークボくんを恫喝していると、食事に来ていたオークボくんちのとなりの店のマスターが、察したようにやさしく教えてくれました。
「ナガイさん、三枚におろして、骨だけを使ったものが骨酒で、魚を丸ごと入れるのは身酒と言うんですよ」
うっ。・・・そう、オレが飲みたかったのはソレよ。身酒よ!
釣りたてのヤマメちゃんの内臓とエラをきれいに取り除き、炭火で焼いてから風に当ててしばらく干します。
それを、ちんちんかんかんに熱くした酒に入れ、ヤマメの香りがほわぁ~っと立ちはじめ、エキスがじわ~~~っと出てきた頃を見計らってぐびっとやるのです。
ぐびっ。は~極楽。
「ナガイさん、注酒行きますか?」
行きますよ。行きますとも。
骨酒、もとい、身酒は2杯目が旨いのです。1杯目は焼き干しした身をやわらかくほぐすため。2杯目はそこからさらに旨みが出てくるのです。そのための注酒(つぎしゅ)であります。
その時、ふと気づきました。
「ねえオークボくん、このヤマメちょっと固くない?」
「よく干したんですよ。このほうが保存がきくんです。しかも・・・」
「しかも?」
「しかも、3杯目も美味しく飲めちゃうんですよ~!」
・・・あきれた。江崎グリコのアーモンドチョコレートですら、1粒で2度おいしい程度で終わらせているのに、オークボくんは小魚1本で客に3杯飲ませようとしていたのでした。ごーつくもん。

ヤマメの仕入れ場所。

ぴかぴかのヤマメちゃん。美しい楕円の斑紋が特徴。

熱燗のプールで泳ぐヤマメちゃん。
夢を見ました。
オークボくんがうちわで口元をあおぎながら何か言っています。
「支持・・がな・・・泡・・じゃ・・・・」
え、ナニ? オークボくん何て言ってるの?
「シジミが・・・・」
ナニ? シジミってナニ???
「シジミがなければ アワビを食べればいいじゃな~~~い!
お~~~っほっほっほっほっほ~~~~!!」
マリーアントワネットか?おまいは。
悪夢はさておき、自称「ビンボーな天才料理人」のオークボくんが、店で7月から8月中旬にかけて、アワビ、ウニ、カキとゴージャスな食材を使うフェアを開催するというので、このコラムでもそれらの食材を使おうことになりました。
アワビといえば以前読んだマンガの、ちょ~~~~~ゴージャスなアワビ料理が強烈に印象に残っており、いつか機会があれば食したいと思い続けておりました。
でもさ、でっかいアワビ何個も使うし~、手間かかるし~、なんぼ値段かかるかわからんし・・・。
ごちゃごちゃ考えていてもしかたねえよな。食べたいもんは食べたい。
そこで、私のアワビ的リーサルウェポン、ミドリちゃん登場。
ミドリちゃんは札幌で働く女子ですが、実家が青森。で、青森は下北半島、尻労(しつかり)漁港には、イカ漁師の家へ嫁いだミドリちゃんの姉、ユーコさんがおり、ユーコさんの夫タカシさんと息子のリョーイチさんはアワビ採りの名人なのであります。
その青森から素晴らしいアワビが届くことになり、大いに喜んだ私はネタ元となったマンガ本をオークボくんに押し付け、「ウニとカキの料理はまかせる」とすてゼリフをはいて、小樽の潮祭り見物に出かけたのでした。
数日後の試食会には、いろんな意味で「いままで誰も食べたことのない料理」が登場しました。てことはオークボくんも初めて作った料理ばっかです。期待と不安が入り混じった試食会の幕開けです。

これが青森直送の活アワビ。大きさを測るためのセブンスターがおやじくさいよオークボくん。

マンガで見てあこがれていた「アワビめし」。本日のメインディッシュであります。活アワビを塩でゴリゴリ揉み、かちんこちんに硬くなったところをすりおろす。これに長イモと蒸したアワビの汁を加えて混ぜる。めしには活アワビを千切りにしたものを混ぜ込み、アワビのとろろをかけて、上にアワビの肝醤油をかける。食べると口いっぱいにアワビの香りが広がり、ホワ~~~ッと鼻に抜けていく極楽料理。後ろにあるのは蒸しアワビ薄切りのポン酢。めしには蒸し汁しか使わないので、副菜扱い。

オークボくんが初めてそば打ちに挑戦。粉にウニを練りこむ←これがやりたい一心の「ウニ切りそば」。グルテンたっぷりで練った粉は昔使った「練り消し」状態。冷蔵庫で冷やしたら固くて伸ばせない。ちぎれながらもどーにかこーにか麺にして茹でたら「すげ~コシがあるんすよ~」(オークボくん談)。ところが見た目ゾンビのこのそばが試食会では大喝采を受ける。ウニの香りがして旨い! つゆなんかいらねえよ。酒につけて食ってみな。お、旨い。塩つけて食ってみな。お、旨い。

カキ氷機とオークボくん

「カキの料理なんにする~?」って聞いた時、「カキ氷っすね、おお~、やりたいやりたいこれ!」とコーフンしていたオークボくん。まさか本当にやるとは・・・。「オヤジギャグの一念氷も砕く」であります。醤油だしで煮込んだカキを凍らせ、カキ氷機で粉砕。小ネギをのっけ、スプーンでシャリシャリいただきます。これまた旨い。ゼリー寄せをさらに冷た~くしたような真夏日にぴったりの1品。
オークボくんの天才バカボンぶりがフルに発揮された上記料理3品、いかがでしたか。
ちなみに「アワビめし」と「カキ氷」は前々日予約で作ると前向きなので、お好きな方はぜひオークボくんワールドにチャレンジしてみてください。めしは副菜の蒸しアワビ付きで1人前2500円。カキ氷は1人前500円。2人よりお受けするそうです。店名は「ほがら家」。電話は011・271・5657。
あのカキ氷機メーカーの人、こんな使われ方するとは夢にも思ってなかったべな。
突然ですが、オークボくんのテーマソングを作ってみました。
名曲、「オーシャンゼリゼ」のメロディーで歌ってみましょう。
さんしっ
♪お~くぼくぼ~ お~くぼくぼ~
いつも なにか ステキな 料理で~
あ~なたを待っている くぼくぼ~♪
ワンモア
♪お~くぼくぼ~ お~くぼくぼ~
いつも なにか おもろい 料理で~
あ~なたを待っている くぼくぼ~♪
せんきゅう
6月になると、関西では山椒の実が出回ります。
ソフト綿棒の頭ほどの大きさで、鮮やかなライトグリーン。
関西ではこれを炊いて、ジャコ山椒を作ったりします。
札幌ではあまり見かけない食材なので、買って塩漬けにしました。
そのままかじると、舌が5分くらいジ~ンとしびれます。
おりしも、私の畑では葉山椒の葉盛りで、
「ちょっとオークボくん、この実と葉っぱを使ってなんか作ってよ!」
「え、いっすけど、何作るんすか?」
「そんなもんまかせる」
などという会話をしていたのであります。
よーするに、私も使い方がよく分からなかったのです。
数日考えました。
しびれる山椒。
うまい料理。
しびれるようなうまい料理・・・。
あった! あったよ!
しびれればしびれるほどうまくなる料理がっ!!
ということで、オークボくん、しびれるマーボー豆腐に挑戦です。
正直なところ、この料理はオークボくんにとっては鬼門であります。
なぜなら彼は辛い、しびれるなどの味覚にとっても弱いのです。
辛いカレーが食べられません。
山椒の実も、かじれば私の倍以上、舌をしびれさせています。
試作第1号は、やっぱりしびれも辛みもありませんでした。
でも、味付けはポイントをつかんでおり、いーセンいってます。
「油だよ、油が足りないんだよ」
「ラー油つかってよ~」
「山椒をもっと入れろ~」
「とうがらし!とうがらし!」
私と、常連の革マル風ギャルに吠えられるオークボくん。
打たれ強い。
さて、試食本番で登場したマーボーは、オークボくんのしびれと辛さの許容をはるかに超えたものとなりました。
油にたっぷり辛みと香味をうつし、ダシをたっぷりきかせたあんと豆腐と肉がからまり合い、素晴らしいうまさ。
そんじょそこらの中華料理には負けない味に仕上がりました。
おみごと!

しびれるマーボー豆腐にしびれている人々。食べた瞬間よりも後からじわじわしびれてくる。

大阪のスーパーで山盛りで売っていた山椒の実。ブドウのようなふさになっていて、ここまできれいに実をはずすのが一苦労。1時間ちかく飽きながら泣きながらはずしたものがこれ。

わが畑ですくすくと育つ山椒の木。ギンナンのように木によって雌雄があり、これは雄らしく実は付かない。

しびれるマーボー豆腐。食べた女子が「きゃ~しびれる~」と言ったとき、オークボくんはさりげなく「オレに?」と聞いていた。返事はなかったようである。

ごはんにかけてマーボめし。めしにタレがしみてからまり、めちゃうまい。

後日、豆板醤を加えてさらなる味の推敲をおこなったオークボくん。ぱっと見、マーボー豆腐の背後霊。