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酒の一滴は血の一滴

嘘と冗談

学生の頃、授業中に聞いた言葉の中で印象深かったもの。

「患者さんには決して嘘を言ってはいけません。ただし、必ずしも全てを正直に話してもいけません。」

これは決して医療ミスを隠蔽する事を目的とした言葉ではなく、必要以上に患者さんに動揺や不安を与えてはいけない、と言う意味です。
現実的には悲観的な状況にあっても、患者さん本人や家族に「大丈夫!」「あと少し頑張りましょう!」と声を掛けてあげる事で、良い意味で予想し得なかった結果を挙げる事もあるのです。

ただ、あくまでもキャラの問題ですが、この真意がずれた状態で受け取っている自分がいます。

救命センターICUでの出来事。
昨日に開頭手術が行なわれた患者さん、術後1日経過している段階で一応データは安定しているのですが、何故か気になる。
どこがどうって指摘できないけど、何か腑に落ちない。
そんな時は、迷わずCT検査へGo!
CTは脳外科医の聴診器。使うことに何の気兼ねもありません。
何も無ければそれで良し。何かあった時の方が一大事。
自分の勘を信じて、CT室に連絡を取り、看護婦に検査の旨を伝えます。
検査上、画像に明らかな異常所見もなく、ちょっと安心。
自分の思い過ごしだったようです。
ICUに戻り、カルテに結果を記載し、看護婦にも検査所見を伝えます。
この時、担当の看護婦が聞きに来ました。
「先生、何でCTを撮りに行ったんですか?」
「あぁ、顔に死相が浮き出てたから。」
「死相ですか...(メモを書き書き)。」
「わ~!バカバカ!冗談!マジで記録するなよ!」
「え?嘘だったんですか?」
「当たり前だろ!普通、冗談ってわかるだろ!」
「先生、嘘つきですね。」
「いや、嘘って言うかさぁ、冗談でしょ。」
危うくスピリチュアルなDr.になっちゃう所でした。

手術室での出来事。
くも膜下出血の手術も終わりに近づき、みんながリラックスし始める頃、看護婦さんから手術名を聞かれます。
通常であれば"開頭クリッピング術"と"硬膜形成術"、あとは"脳室ドレナージ術"が加算されます。
初めての手術である訳でなく、手術中ずっと立ち会っていた看護婦には解り切っている事ですが、確認は必要です。
「先生、手術名お願いします。」
「え~っとね、"子宮内容除去術"で。」
「はい。」
あれ?何も突っ込まれなかったけど、わかってるよね。
まさか、本気で書いてないよね。
そのまま医療事務科に請求まわしたりしないよね。

2日後、医局長にガッツリ怒られました。
「バカ野郎!何であんな手術名言ったんだ!?」
「だって先生、どう考えたって冗談ってわかるじゃないですか。」
「うん、わかる。」
「紛らわしい名前ならまだしも、全く違うじゃないですか。」
「うん、ちがう。」
「悪いのって、俺だけですか?」
「いや、お前だけじゃない。けど、もうやるなよ。」
「は~~~~い。」

いやぁ、冗談って難しい...。


(2008年02月28日)

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