どこの世界でもそうかとは思いますが、やはりこの業界でも常識と非常識がひっくり返る事が少なくありません。その周期はかなり早く、ランキングでは上位に位置するものと言っても過言では無いでしょう。
3年前には鳴物入りでデビューした新しい美容医療器械が今ではとんと見かけることも無く、それを購入したクリニックの片隅で埃を被っている事も珍しい話ではないのです。売り上げ倍増を目論んで無理して購入した夢の機械が、気付けばタダの借金製造機になってしまいローンの返済が頭痛の種、なんていう先生も現実にいらっしゃいます。
常識の変化は美容業界に限らず、一般医療の現場でも見受けられます。
例えば擦り傷。昔は怪我をしたら“水につけない”“触らない”“カサブタを作る”と言うのが一般的でした。ところが、今ではこれは決してやってはいけない治療法であるとされています。今は“直ぐに流水で洗う”
“こまめに洗って清潔にする”“カサブタを作らない”のが大原則です。カサブタを作ることにより周囲の皮膚の伸展を阻み、カサブタの下ではバイキンが大増殖。結果としてケガの治りを遅らせ、その痕も汚いものになってしまうのです。
大抵この話をすると患者さんはビックリされます。
「だって、近所の看護婦さんが“乾かしなさい”って言ったんだもん!」
「おばあちゃんが“触っちゃダメ”って言ったんです!」
すみません、僕、専門家なんですけど…。
「そんな話し聞いた事ありません!」
いや、それを今から言おうと思っているのですが…。
「先生、ほんとですかぁ?」
あれ?疑ってる?その眼。
だったら、好きなようにやりなさいよ!
ウチに来ること無いじゃん!
なんてな事を言えるわけも無く、一つ一つゆっくりと説明します。
先日も一人の女の子が額に怪我をして外来を受診されました。
長さは15mm、切ったというよりは皮膚の表面がこそげた(これ、北海道弁ですか?)感じのため糸で縫合する対象ではありません。
聞くと2ヵ月後にはバレーの発表会があるとの事。傷を残したくないんです、とお母さんは必死。本人も落ち込んでいます。
よっしゃ!完璧に痕が無くなる保障はできないけど、出来るだけ目立たなくなるように頑張りましょう!僕も頑張るけどお母さん達も頑張ってください!
そうして2人3脚(3人4脚?)の治療が始まり、いよいよ発表会。
翌日の朝早くにメールが届きました。
「先生、メイクのおかげもあったとは思いますが傷は全くわかりませんでした。本人もとても喜んでいます。ありがとうございました。」
でしょでしょ!ちゃんと綺麗になったでしょ!
ちゃんと僕に言う事を信用して頑張ってくれたおかげですよ。
いやぁ。よかった、よかった。もう大丈夫だよ。今度から気をつけてね。
患者と医者間の信頼関係。
これこそが最高のお薬なのだと思います。
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