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酒の一滴は血の一滴

第91回 「ゲーセンにて」

とある週末の夕方、
miniクボ君(別名パソちゃん)の加入している子供会主催のお泊まり会のため
本人とママは外泊。

診療が終了してから長女キャサリン(11)と長男ジェームス(9)合流
当日夕飯のご希望メニューは回転ずし。

「どこ行こうか」

「近いところで良いよ」

「i phoneで調べたら?」

「良い所に気付いたな、そうしよう」

「お、NORBESAのビルの中に回転ずし入ってるわ。」

「ノルベサってどこ?」

「観覧車のあるビル。」

「いいねぇ!そこ行こ!」

「観覧車は乗りませんよ。」

「え~~~~~~~!」

「当たり前です。ご飯を食べるだけです。」

「チョットぐらい良いじゃん。」

「観覧車チョットってモロ1周ジャン。」

「え~~~~、乗ろうよぉ!」

「ちなみにあの観覧車、一人いくらか知ってる?」

「しらな~い...。」

「正解は一人600円です。」
「600円くらいなら良いじゃん」

「マグロ3皿分だよ。お寿司食べなくて良いなら乗るけど。」

「お寿司にします。」

かくしてNORBESA到着。
とは言っても時間はまだ5時過ぎ、夕ご飯にはちょっと早い。
時間を潰したくても観覧車には意地でも乗りません。
同ビル5Fには大きなゲームセンターが入居しておられました。
ここならひとり100円使って2,3回やってもたかが知れてるし、
チョットは時間も潰せそう。

「いいか、1回だけだからな。」

「え~、どれにしよぉ」

「二人のうち、どっちがエアホッケー強いの?」

「俺、強いよ。お祖母ちゃんに勝った事あるもん。」

勝負の対象がお祖母ちゃんですか。
全く自慢になりませんが、既に彼の中で勝利が確信されているようです。

「じゃ、二人でやってごらん。」

100円玉を2枚投入。
滑り出てくるパックと共に、盛大なBGMが鳴り響きます。
昔の温泉宿にあったようなエアホッケーではありません。
鮮やかなネオンが煌めき、鳴り響く効果音にtensionはウナギ登り。
ゲーム開始を告げるアナウンスが流れます。

「Round 1 Ready Go!」

パキュン、パキュン!
ガゴーン!
ピシュルルルル!
ガコン!

「Go---------------------------------------------------al!」

先制点はジェームス。
得意がっております。
鼻の穴が膨らんでます。

「Rpund 2 Ready Go!」

先制点を許したキャサリン。
目の前には鼻の穴おっぴろげて得意がっているジェームス。
調子づかせる訳に行きません。
ここは追いついておきたい所です。

ガン!

強烈なサーブ!

パキュン!
ガン!
ガコン!

なんとリターンエース!

踊ってます。
勝利を確信したのか、ジェームス踊ってます。

しかし、このまま引き下がるキャサリンではなかった。
ゲームは白熱の展開。
2点のビハインドからキャサリンが追い上げる。
同点から徐々にキャサリンがリード。
焦るジェームス。
残り時間が気になり、ゲームに集中できません。
広がる点差。
迫るタイムリミット。

ビッビ~~~~~~!
「Game Over!」

終わってみれば8対5でキャサリンの勝利。
茫然と立ちすくむジェームス。

「負けたか...。」

話しかけた途端に抱きつかれ、マジ泣きされました。

「しょうがないじゃん、ゲームだもん。」
「もう一回やる!」
「ダメ、1回って約束でしょ。」
「あ゛~~~~~~~~!」

たかが、と言っては失礼かもしれないが
エアホッケーに負けて、ここまで悔しがれるというのは
ある意味羨ましくもあります。
視線をずらせば申し訳なさそうに立っているキャサリン。

「OK、もう一勝負だけな。」

ジェームスの選んだのは、彼の最も得意としている「マリオカート」
自宅のWiiでは無敗を誇り、友達間でも上位にランキングしているらしい。
更にはアミューズメントでも既に数回やりこんでおり、キャサリンは初体験。
どう転んでも負ける気はしない。
ジェームスの見えない所で、瞬時にキャサリンと目で会話。

「ジェームスに勝たせてあげましょう。」

これには彼女も同意。
早速ドライビングシートに滑り込み、
シートの位置を合わせ、
100円玉を2枚ずつ投入。

「Ready Go!」

猛烈な勢いでスタートするジェームス。
やや遅れて追いかけるキャサリン。
序盤の段階で彼の圧倒的な勝利とも思われたが、
彼のリズムがいつもと違う。
いつもは易々とゲットできるアイテムが取れない。
スピードコントロールが巧くできずコースアウトを繰り返す。

入れ込み過ぎだ...。

勝負に対する慢心と油断から本調子が出せていない。
徐々に落ちる順位。
後ろから迫りくるキャサリン。
ファイナルラップでとうとう順位逆転。
追い上げるも縮まらない距離。
最終コーナーを抜けても、いまだ順位変わらず。
バックストレートに障害物無し。

やばい。
これでまた負けると、彼は立ち直れない。

ゴールまであとチョット、という距離になった瞬間、
キャサリン急ブレーキ!
ゴールラインギリギリで停止。
その横を猛スピードで抜けていくジェームス。

勝った...。

ジェームスの目の前のモニターに映る「1位」の文字。
表彰台の真ん中で金メダルを身につけ、降りしきる紙吹雪のなか
両手をあげて周囲に手を振る彼の選んだキャラクター。

「俺が負けるわけないじゃん。」

ようやく機嫌が直り、それどころか得意になっているジェームス。
既に心は回転ずしに飛んでいるようです。
その後、お寿司屋さんでの二人の会話。

「ねぇ、何であそこで止まっちゃったの?」

「いっきにゴールしようとしたら、間違えてブレーキ踏んじゃったんだぁ。」

「なぁんだ、馬鹿だなぁ。」

「いやぁ、勝てると思ったんだけどなぁ。」

「ま、俺に勝つには修業が足りないね。」

わざと勝ちを譲ってもらえたとは露知らず、本人は上機嫌。
ま、知らない方が良い事ってあるよね。
その場に居合わせた3人が、それぞれ色んな思いを胸に秘め
楽しく過ごした夜でした。


(2009年11月19日)

コメント(1)

キャサリン大人♪
なんて素晴らしい兄弟愛…笑

お父さんのほころぶ顔が目に浮かぶようですわ(笑)

素敵な夜になったみたいですね♪

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