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酒の一滴は血の一滴

第81回 僕のお勧めするこの一冊

『その日のまえに』

愛する人の死を、あなたは受け入れることができますか?

万人が逃げることの許されない「死」に対し、これをどのように受け入れるか。
守るべきものを持ち、それを放棄する事も出来ない状況であるにも関わらず、受け入れざるを得ない事を自覚したとき、本人は、家族は、友人は何をすべきか。
目前に迫り来る「その日」の前をどう生きるか
「その日」は、
そして
「その日」の後は、

その日の前に(重松清)

「流星ワゴン」で一躍有名になった重松清氏の作品
文藝春秋より2005年8月5日に刊行された後、07年にはラジオドラマ化、そして同年に南原清隆・永作博美主演で映画化。
(個人的に)当り外れの多い重松作品の中で群を抜いて秀逸な作品。

小説は5つのエピソードからなる短編集ですが、それぞれが微妙にリンクしながら進行するマルチストーリーと言ったほうが適切かもしれません。
新書として発刊されたときから、読みたくて、読みたくて。
ただ新書は大きくて重いので、文庫化されるのを4年間待ち続けました。

話のメインはアラフォーの夫婦。
結婚当初は安定しなかった旦那さんの仕事が花開き、安定し、それなりの地位が築かれる矢先に宣告された奥さんの病気と余命。
二人は病院から外出した際に、結婚当初に住んでいた町を訪れる。

取り壊されていた商店街、
コンビニと化した酒屋、
2代目に引き継がれた家具屋、
そして、当時二人の住んでいたアパート。

全てが懐かしく、愛おしい。
苦しかったはずの当時の生活は、今となっては暖かい。

私、
もう一度生まれ変わっても、
同じように無職の男と結婚して、
一番安い食器棚を買うと思う。

当初の予想より著しく早く進行する癌。
効果を出さない化学治療。
家族(子供たち)への告知で対立する二人の考え。

わたしね、最後の最後のぎりぎりまで、二人の元気な顔を見ていたいの

お母さんは、与えられた命を最後まで、強く、美しく全うした、
そう格好良く思われたいじゃん。

その日は、...暑くも寒くもない秋晴れの日がいいな。
...すっごく気持ちのいい朝だったら、
うん、
意外とにっこり笑って死んじゃえるかもしれない。

妻の死後、しばらくして担当していた看護婦から渡された一通の手紙。
妻が意識を失う直前に自分に宛ててしたためた最後の手紙。

お読みになる際はタオルを準備されて下さい。
ハンカチでは厳しいと思います。


(2009年08月13日)

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