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酒の一滴は血の一滴

第67回 シラスおろし

「どーもー、こんにちはー、よろしくお願いしますー。」

「ホントにね、100年に一度の大不況って言われてますけど、自分たちみたいな中小企業は気合入れて頑張っていかなあかん、と思ってますけどね」

「おいおい、うちの行政書士事務所を君んトコのクリニックと一緒にしてもろたら困るがな」

「頑張るためには何と言っても健康ですよ、みなさん。」

「なんや、スルーかいな」

「健康の基本と言えば、やっぱり食事ですわ。」

「うん、食事は大事やね。」

「巷じゃイタリアンだのフレンチだのって言われてますけどね、」

「別にええやないかい。」

「自分ら位の年になりますと、やっぱ和食ですわ。」

「和食はええね。」

「先日、インターネットのヤホーで調べたんですけど、」

「今のパクリやね」

「ホカホカご飯に合うおかずランキングって知ってます?」

「何や、教えて。」

「まず1位が納豆ですわ。」

「ええねぇ、辛子とネギ入れたらたまらんね。」

「で、2位が明太子。3位がサケの塩焼きと続きまして、以下ハンバーグ、肉じゃが、鶏のから揚げ、肉野菜炒め、生姜焼き、餃子、麻婆豆腐っていう順番ですわ。」

「どれも王道やね。」

「で、この中には入ってませんけど、自分はシラスおろしが大好きですねん。」

「あ、わしもそれ好きやわ。」

「こう見えても"こだわり"ゆうもんがありましてね、」

「この男、色々とこだわるんですわ。」

「シラスおろしを食べる時、ご飯はホカホカでなくてはいけません。」

「意味解らん。」

「アツアツのご飯はダメやという事ですよ。」

「なんでアカンねん、アツアツ結構やないかい。」

「アツアツだと大根おろしのヒエヒエが壊れてしまうんですよ。」

「なるほど」

「ホカホカのご飯と出会う事で、ヒエヒエが引き立つんですわ。」

「何やよう解らんくなってきたわ。」

「もう、食欲無くてもシラスおろしさえあればガッツリいけますな。」

「ま、そういうもんがあるっていうのはええことやね。」

「先日もな、朝カミサンが『晩御飯何食べたい?』って聞いてきたんですわ。」

「よくある会話やね。」

「普段なら『朝から晩御飯の事考えられるかい!』って怒るんですけどね、」

「男らしいわ。」

「その日はパッと"シラスおろし"が浮かんだんですわ。」

「大好物やもんね。」

「で、その日は頭の中シラスおろしだらけですわ。」

「気持ち悪い頭やったろうね。」

「仕事終わって帰る時もシラスおろしが目の前チラついてますねん。」

「よっぽどやね。」

「シラスおろしに合う酒、言うたら日本酒ですわな。」

「うん、それ以外あらへん。」

「家に帰る途中で酒屋さん寄って、ちょっと良さ気な日本酒を買う訳ですわ。」

「シラスおろしにそこまでするかい。」

「でね、落ちがあるんですわ。」

「どないしてん。」

「うちのマンションにね、近づくにつれてカレーの匂いがするんですわ。」

「そりゃキッツイわ」

「リビングに入ると案の定カレーの匂いが充満してますねん。」

「そりゃ、そうやろうね」

「でね、一言言うわけです。」

「ビシーっと言うてやりや。」

「なんでカレーやねん、シラスおろし食いたいって言うたやないか!」

「カミサンびびるやろ。」

「そしたら『あ、忘れてた。今から作るわ』って、こうですわ。」

「ほー、それでも作ってくれるんかい。」

「そないなこと言うても、カレーの匂いの中でシラスおろし食うてもあの微妙な磯の香りがわかりますか?」

「ま、無理やね。」

「カレーをつまみに日本酒飲めるかい!」

「そや!」

「もう、シラスおろしにセットされた口の中は修正不可能ですわ。」

「わかるわ。」

「だからね、ビシーっと言うてやりましたよ。」

「そや、それでこそ男の中の男や!」

「おかわりって。」

「食うたんかい!」

「ご飯少なめ、ルー多め。」

「もう君とはやってられんわ。」

「ども、失礼しましたー。」


(2009年03月05日)

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