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酒の一滴は血の一滴

第65回 路上にて

「あ、編集長、お久しぶりですぅ。」

「なんや、武藤君やないか。この度は大変やったな。」

「ええ、まぁ。
ホントに長い間コラムの方お休みさせてもろて、すんませんでした。」

「気にする事あらへんがな。
先生は先生のペースで書いてくれればええんやから。
で、どないやねん、調子。」

「おかげさまで、家族みんな風邪も引かずに元気にしております。」

「ちゃうがな、病院の方やがな。
理事長おらんようになって、手続きどないしとんねん。」

「ま、そっちは会計事務所の人とかと相談しながらボチボチと。」

「ボチボチじゃあかんがな。チャチャッと済ませんと。」

「大丈夫ですて、いざとなったら編集長にお願いしますさかいに。」

「ぎりぎりになってから言ってこられても困るんやで。」

「へい、肝に銘じておきますわ。」

「で、どないやねん。忙しいんかい。」

「おかげさまで患者さんにはよう来てもろうてます。」

「この不景気の時代にありがたいこっちゃないかい。」

「ほんまですわ。」

「ま、それもお父さんが頑張ってきてくれたお陰やで。」

「そこですわ、親父があってこその今のクリニックと思うてます。」

「あんた、今忙しいからっちゅうて勘違いしたらあかんで。」

「全くですわ。ただですね、去年の暮くらいやったか、自分のお師匠さんの一人である東京の先生とお食事一緒にさせてもろうた際に同じ話したんです。」

「わしと同じこと言うてたやろ」

「いや、それがですね、もうその言葉聞いた瞬間、自分泣きそうになりましたわ。」

「なんて言われてん?」

『違うよ、武藤君。"親の七光"なんてそうそう長く光り続けるものじゃない。今クリニックに患者さんが来てくれるのは武藤君の力だよ。』

「ええこと言う先生やないか。」

「ほんまですわ。ますますその先生のこと尊敬してしまいましたわ。その分野ではメチャメチャ有名な偉い先生なんですよ。自分にとっちゃ雲の上の先生ですよ。そんな偉い先生が隣でジンギスカン食いながら真面目な顔して言ってくれたんですわ。」

「ええ師匠に恵まれたな。」

「まったく、その先生といい、健太郎といい、編集長といい、
自分は師匠に恵まれてます。」

「あほ、褒めても着手料一銭も負けへんからな。」

「あちゃ、ばれてました?」

「わかるわ。ほな仕事あるさかい、これで失礼するわ。」

「お忙しいとこ足止めしてもろて、済んませんでした。」

「ほな、また。」

「へい、また来週(あ、来週て言ってもうた!)。」


(2009年02月19日)

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