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酒の一滴は血の一滴

第56回 国際学会

今回は趣向を変えて、当クリニック初代院長である武藤靖夫(つまり親父)の原稿を掲載させて頂きます。
昭和36年に北海道ではじめて美容整形外科(当時)を立ち上げ、現在に至るまで波乱万丈の人生を送ってきた先代ではありますが、古き良き時代の一片を感じていただければ何よりです。
(はい!そのとおり!自分の原稿が上がらないための穴埋めです!)


私が形成外科の国際学会にはじめて参加したのは1967(昭和42)年、
会場はローマでした。
今でこそ日本全国の大学や開業の先生を含め100人前後の参加がありますが、この当時は大学の教授クラス10名、開業医は2名と言う寂しさでした。

市内バスターミナルを降りた乗客は、その後に各自ホテルまでタクシーの取り合いです。
要領の悪い人は捕まえ損なって後へ後へと取り残されてしまいます。
私もその一人でした。
タクシーも残り1台となり並んでいるのは私ともう一人の女性のみ。
そしてその最後のタクシーもこの女性に取られてしまいました。
ところが運転手が気を利かせて相乗りを勧めてくれたのです。

知らない若い女性とルノーのタクシーに乗って仏頂面を続けてもいられないので、思い切って話しかけてみました。

「観光ですか?」
「No, 学会です」
「学会?何の?」
「形成外科」
「Me,too !」

こうした経緯でベルリンの自由大学耳鼻科の教授と友達になれたのです。

その晩の会長主催パーティは丸いお城で有名なサンタンジェロ城です。

サンタンジェロ城

ヨーロッパの人は夜が遅いです。
同伴しようと約束した彼女をタクシーで拾って会場へ。
いつ始まったかわからないカクテルパーティ会場にはタキシード、ロングドレスが美しく行き交います。
初めての国際学会でしたから、私は普通のブラックスーツでした。
ローマに来る途中で寄ったLos Angelesで知り合ったDr.と顔をあわせ
彼女を含め、お喋りをしながら場所を移動します。
ふとアイスクリームを食べている人が眼に入り、私も食べたくなりました。
通りかかったボーイさんにアイスクリームを彼女の分と二つ頼みました。
暫くして戻ってきた彼の手にはアイスクリームが一つしかありません。
"Sorry, We have only one."
ただし、スプーンは二つ。
なんとロマンティックな事でしょう。
彼女と二人でアイスクリームを食べました。
半分くらい食べた頃、さっきのボーイさんが戻ってきました。
もう一つのアイスクリームを持って...。
お礼を言ってそれも二人で分け合って食べました。
よっぽどアイスクリームが好きと思われたのでしょうか。
食べていたら更にもう一つ持ってきたのです。
私か断りかけたのですが、彼女は優しい人でした。
「このボーイさんは我々に好意を持ってしてくれている。いただきましょう。」
アイスクリームでお腹いっぱいになった夜でした。


昭和42年って、自分の生まれた年じゃないですか!
親父さん、あなた赤ん坊を日本に残して、ローマで何やってんの!


(2008年10月16日)

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