(前回までのあらすじ)
怪我をして病院に連れてこられた女の子。白衣を目の当たりにして恐怖感に苛まれるが、「痛みがなくなる」という医者の差し出す魔法のクリームを塗られ、期待と不安の中、治療行為が今まさに始まろうとしていた。
「さて、魔法は効いたかな?」
麻酔クリームとその周辺の血を拭き取りながら、さりげなく傷の中もガーゼの角で擦ってみます。
痛がるようならもう5分延長、気がつかなかったら手術頃。
「今は痛くないでしょ。」
「うん...、だいじょうぶ...。」
「おっけー、もうちょっとで拭き終るからもう少しこのままネ。」
拭くのに使っていたガーゼでさり気なく目を覆い隠し、その隙に看護婦さんの隠し持っていた注射器を受け取ります。
「あ!虫さんが飛んできた!危ないから動いちゃダメだよ。」
「ぶ~~ん、ちくっ!」
手早く傷の内面から局所麻酔薬を注射。所要時間5秒。
「ちょっと痛い!やっぱり痛い!痛い!痛い!」
「大丈夫!もう虫さん飛んでいっちゃった!」
麻酔終了!
「さぁて、△子ちゃんが頑張ったから、もう痛いことは何にもないよ!」
「もう痛いことしない?」
「大丈夫!痛いのお終い。あとはベッドの上でじっとしてくれれば帰れるよ。」
手術室に入る瞬間は大人でも緊張を強いられます。
無機質な金属色に輝く手術道具
色気も素気もないベッド
やけに明るいライト
まずはこの段階で「やっぱり止める!」となってもおかしくありません。
お母さんと一緒に手術室に入ってもらい、手を繋いでもらいます。
いきなりマスクと帽子をつけた状態で手術室に入ると「怪しいおじさん、いきなり登場」となってしまうので、診察室とおなじ状態で入室。
「さぁて、先生、帽子かぶっちゃおうかなぁ。」
「マスクなんかも付けてみようかなぁ。」
「そんでもってムシ眼鏡もかぶっちゃおうかなぁ。」
徐々に患児の目の前で変身していきます。
「せんせいの目、でかくなった?」
すっかり外科医モードに変身していますが、その過程を知っていれば恐怖の対象とはなりません。
「いつも、テレビは何見てるの?」
「ポケモンサンデーとか見てる?」
「DS持ってる?ソフトは?」
「食べるもの、何好きなの?」
「今年は海に行った?」
「すごいなぁ、スーパー4歳だなぁー、今年一番えらい4歳だなぁー」
矢継ぎ早の質問攻め、恐怖感を感じる猶予を与えてはいけません。
「おでこからレーザー光線が出るようにしておいたからね。」
「うそ!?」
「ホント、ホント。中学生になったら使えるよ。」
「え~~~~!やだぁ~~~~~!」
「かっこいいじゃん!レーザービームの出る中学生。」
「こら~~~~~~!」
「あれ?ミサイルの方が良かった?」
処置の終わるころは、手術室の中は爆笑の渦。
さらに、治療はここで終わらない。
事務処理中に手術している時に聞いておいた、その子の好きなキャラクターをネットでダウンロードしてプリントアウト。

そしてもうひとつ、ガーゼを止めるテープをイルカの形に加工してペッタン。

帰る頃には最初の恐怖感はどこへやら。
「また来るね~~~!」とハイタッチして帰ります。
おいおい、もう怪我すんじゃねえぞ!
来院してから帰るまで、所要時間は悠に1時間を超えます。
けど、病院に来ていながら「白衣恐怖症」なんて違う病気になっちゃったら本末転倒もいいトコだと思いません?
「しょうがない」の一言で片づけては医者の度量を疑われてしまいます。
成功率は60%強といったところでしょうか。
中にはどうしても治療を受け入れることのできない子もいます。
まだまだ、この作戦には改良点や修正案が目一杯必要です。
もっと速く、もっと確実に、そしてもっと楽しく。
まだまだ自分は未熟者であります。
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