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酒の一滴は血の一滴

第52回 白衣恐怖症

白衣を着た人を目の前にすると必要以上に緊張してしまい、心拍数や血圧が上昇するだけでなく、重症化すると呼吸さえも儘ならなくなる方もいらっしゃるそうです。
特に小さいお子さんの場合になると、
「白衣」=「お医者さん」=「注射をする」=「痛い」=「嫌い」
以上のような図式が出来上がってしまい、ただ単に診るだけなのに鬼か悪魔のように見られ、恐怖におののき、泣き叫び、母親の陰に隠れ、更に診察室から逃げ出してしまうという風景も珍しいものではありません。
最近では、白衣を着ないDr.も増えてきました。患者さんに必要以上の恐怖感や圧迫感を与えないようにする為だそうです。
なんか一見、現代的で進んだ考え方のように見えますが、自分としては声を大にして言いたい。

「それって、おかしくない?」

医業を生業としている人間にとって、白衣は戦闘服です。
私服で出勤し、病院で白衣に着替えた瞬間に精神的には「医者モード」に切り替わります。さらに手術服に着替えると「外科医モード」にモードチェンジします。そして仕事が終わり私服に戻れば「オジサン(又はパパ)モード」へ復帰。On & Off、メリとハリがなければこの仕事、精神的消耗に対抗できません。

患者さんは白衣を怖がっているのではなく、白衣を着た人間の中身を怖がっているのではないでしょうか。

その昔、「医者」が「お医者様」と呼ばれていた時代、患者さんたちに対して横柄な態度、ぞんざいな口ぶり、指導ではなく命令することがまかり通り、問答無用に押さえ付け、意見質問などしようものなら怒鳴りつけられるという情景は少なくなかったでしょう(今でも一部にはまだ存在しているようですが...)。この過去の偉業(←嫌味)が現在の「白衣恐怖症」を生み出した、と考えます。

たしかに外来で診察の順番を待っている患者さんがごったがえしている状況では一人の患者さんに充分な時間をとって話を聞き、説明をして、理解を得ることは至難の業です。
でも、だからといって回転を上げるために説明もそこそこに処方箋を切り、「お大事に」の一言で診察を切り上げるのが自分は嫌いでした。患者さんが確実に何かを聞きたがっている事に気づいていながら、順番を待ち続けている他の患者さんの為に黙殺しなくてはいけないのです。
『これじゃぁ、白衣を着た人間が嫌われても仕方がない。』
理想と現実があまりにも離れすぎている現実に自らの身を置き続けるのは、決して楽しいものではありません。

今、自分の勤務しているクリニックには多くの子供の患者さんが来られます。アトピー性皮膚炎の子はもちろんですが、一番やりがいのあるのはケガの子です。
診察室に入る以前、すでにクリニックに入った瞬間から泣き声が響き渡ります。
「や゛~~~~~~~~!注射やだ~~~~~~~~~~~!」
「静かにしなさい!」(←叱り飛ばすお母さん)
「だって嫌なんだも~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!」
「あんたが転んだんだからしょうがないでしょ!」
「あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
既に会話の域を脱し、感情のぶつけ合いの様相を呈していきます。
まあまあ、お母さん、そんなに怒らなくても大丈夫!
「○川△子ちゃ~ん、診察室へどおぞ~。」
「ほら、あんたの順番だよ!早く来なさい!」
「あ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
診察室へご入場、そしてご対面。
すでにこの段階で取られるパターンは二つ。
泣き叫ぶか、固まるか。
「△子ちゃん、こんにちは。怪我しちゃったのか。」
「うん。」
「転んじゃったの?」
「うん。」
「泣いた?」
「うん。」
「先生にさ、怪我したところ見せてもらっていいかい?」
「うん(すでに涙目)。」
「ほ、ほぉ~~、なるほど...。」
「先生、どうですか?傷、残りますか?」
「うん、傷は残るね。だけど、最終的には目立たなくなると思うよ。」
「やっぱり縫わなきゃダメですか?」
「縫ったほうが綺麗だね。」
「やっぱり...(お母さんガックリ)」
「さて、△子ちゃん、あのさ、ここ怪我しちゃったでしょ?」
「うん...(涙決壊)。」
「でさ、このままにしておくとさ、ここからバイキンが入ってもっと痛くなっちゃいそうなんだよね。」
「うん...(すでに唇ワナワナ)。」
「けどね、大丈夫!先生、いいお薬持ってるんだぁ~!」
「...(すでに返事できず)。」
「そのお薬を塗るとね、ぜ~んぜん痛くなくなっちゃうんだよ!」
「...(目に光)。」
「そのお薬塗ってさ、ちょこっとだけ頑張ってみようか!」
「...(期待と不安がごっちゃ混ぜ)。」
ここで取り出だしたる麻酔クリーム!
「これがさ、魔法のクリームでさ、昨日届いたばっかり!」
「...(やや期待)。」
「ダライラマから送ってもらったの。」
「?????」
「ちょっと動かないでねぇ~。」
待つこと15分。
「さて、魔法は効いてるかな?」

(長くなったので、来週へ続く)


(2008年09月04日)

コメント(4)

「ダライラマ」で吹きました(笑)

「サイババ」の場合もあります。

韓国の整形外科に付き添ったときに、先生が白衣を着ていなかったのにオドロキました。
患者さんを怖がらせないため、といっていましたが。
ちなみに唐辛子模様のシャツでした(笑)

大人でも病院苦手な人が多いのに、小さな子供なら、怖がるのも仕方ないですね。
mutou先生のようなお医者さんが増えてくれれば、お医者さん嫌いなチビッコも減りそうですね^^

私もダライラマで吹きました。あははは!

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