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酒の一滴は血の一滴

第49回 そこ...、私の...。

おや?
カウンターの右隣では、札幌中央形成外科院長の武藤英生先生がお連れの女性と何やら神妙な雰囲気でジントニック片手にお話をされてますよ。
武藤先生といえば、いま某webサイトでアホなコラムを連載されていらっしゃる変なDr.です。
どんなお話をされているのか、ちょっと、聞き耳を...。
(B.G.M:クレオパトラの涙)


いや、自分はね、霊感とかって全っ然無いんですよ。
よくこの時期になると心霊現象とか稲川淳二さんとか出るじゃないですか。
病院に勤務して、それも脳神経外科なんて言ったらお亡くなりになる患者さんも少なくない環境で、「なんか怖い話ない?」なんて聞かれても無いんですよね。まず、目に見えるものしか信じてないですしね。
死んでしまった人より、生きている人のほうがずっと怖いし。
けどね、周りには俗にいう"見えちゃう人"っていうのがやっぱり何人かいて、聞きたくもないのに話してくれちゃうんですよ。
ホントは聞きたくないんですよ。怖いから。
それも当直先で一人でいる晩に限って思い出したりするから。
トイレとか行きづらくなるんですよね。
けどね、「怖いからやめて」って言えないじゃないですか。
で、結局最後まで聞いちゃう。
「ふ~ん。」なんて冷静気取っているけど、実は心臓バクバクですよ。
でね、いっぱいある話の中で印象に残っている話ってのがあってですね、
これは勿論僕じゃなくて、知っている看護婦の体験談なんですが...、

患者さんは70代後半のおばあちゃん。
交通事故で頭を打って、頭蓋骨骨折および脳挫傷。
緊急手術で何とか対応したものの、意識回復せず。
今後の見込みも限りなく低い。
ICUで看護婦さんが一生懸命話しかけ、手をさすって看護したけど
5日目の朝にはお亡くなりになりました。
ICUという場所柄、空いたベッドはすぐにでも違う患者さんに提供しなくてはなりません。
ご遺体を部屋から搬出したあと、すぐにスタッフがわずか5分で寝具一式を交換します。
午後になり、違う患者さんがICUに運び込まれ、今朝までおばあちゃんの寝ていたベッドに移されました。
点滴の管を整え、心電図やその他のモニターを整え、データを確認し、担当医と申し送りをしている時、その看護婦の視界の隅に今朝亡くなったおばあちゃんが映りました。
ベッドを仕切るカーテンのそばで、今朝まで自分の寝ていたベッドを見つめています。
なにやら口が動いている様子。
看護婦はじっと見つめて唇を読みとってみます。
「そこ...、私の...、そこ...、私の...、」
一瞬で看護婦は悟りました。
『おばあちゃん、自分が死んだことに気が付いていないんだ...。』
不思議な事に、今朝亡くなったおばあちゃんが立っていることに恐怖感どころか何の違和感も感じなかったそうです。
むしろ、自分の死に気づくことなく他界したおばあちゃんが愛おしくさえ思えたそうです。
『おばあちゃん、おばあちゃんはもう死んじゃったんだよ。もう、おばあちゃんの身体はお家に帰っちゃったよ。おばあちゃんの居るところはここじゃないんだよ。』
そう念じた瞬間、おばあちゃんはにっこり笑って消えていったそうです。

あくまでも聞いた話ですよ。
僕の経験談じゃないですし、ただのホラ話かもしれないですよ。
けどね、その人の"念"っていうか、"気持ち"っていうか、なんか死に行く人を何人も見送ってきた自分として、あってもおかしくないかなぁ、なんて思っちゃうんですよね。


(2008年08月07日)

コメント(2)

ナルホド。

今回は「ウェイティングバー アバンティ」の
バージョンで来ましたか。

次々とワザを繰り出しますね。

武藤さんは、病院でユーレイを見たことあるのですか?

「アヴァンティ」に気付くとは、さすが只者ではないですね。

病院内では、何がしかの有機生命体以外のものを見ているかもしれません。

ただ、気がつかないだけなんですよw。

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