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酒の一滴は血の一滴

医者になってよかった~!(続き)

交通事故から一週間。CT上は血腫の増大無く、全身状態も安定。ただ、ただ意識だけ戻らない。周囲のスタッフからは「"眠り姫"ってのはあるけど"眠り小僧"ってのは流行らんぞ~!」なんて冗談も出るようになっていました。
そんな中、他の先生方と昼ごはんを食べている時ポケットベルが鳴りました。ICUから...。
「先生!○○君、目を開けました!」
「なにぃ~~~~~!」
もうね、食べかけのカツカレーぶん投げて、ICUまで全速ダッシュ!
ベッドまで辿り着くと確かに眼を開けている。けど焦点が定まっていない。
ペンライトで瞳孔を見ようとすると眩しそうに顔をしかめる。
やった!正常な反応だ!
さぁて、1週間待機した診察を始めますよぉ!
「○○君、わかる?」
「手、握ってごらん?」
「眼、瞑ってごらん?」
最初は無反応だけど、だんだん眼に光が灯りだす。
「ここどこ?」
「ママは?」
「のど渇いた」
おおおおおおおおおおお!言語障害なし!
「お水はまだ飲めないから、氷を口に入れてみようか」
おおおおおおおおおおおおおおおおおお!嚥下機能正常!
「手、握ってごらん?反対の手も、先生と握手しよう」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!麻痺なし!
「どこか痛いトコ無い?」
「頭いたい。クビも」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!会話が成り立つぞ!

お前、本当に1週間意識不明だった小僧か?
滅茶苦茶スゲェじゃん!
さて、これで一安心。
お母さんの来る時間を見計らって自分と一緒に診続けて来た研修医とベッドサイドで待機。
お母さん来院。
手には着替えとか眼が覚めた時用のオモチャとかいっぱい抱えてる。
顔には睡眠不足による疲れと焦燥感が滲み出ている。
服装も昨日着ていたのとおんなじブラウス。
ベッドサイドに来て小僧一言。
「ママァ!」
お母さん、ビックリ仰天。思考回路停止。運動機能停止。
「マァマァ!」
お母さん再起動。
ベッドにダッシュ!頬に手を当てて、じっくり顔を見て、こわそうにHug。
もうね、最高の瞬間だね。
1週間の泊り込みなんて、この瞬間に立ち会えることを思えば屁でも無いね。
研修医とベッドの陰でガッシリ握手。

両親を呼んで、何回目かの状況説明。
「最も危険な時期は脱したと思います。ただまだ油断できる状況ではありません。高次機能の損傷についてもまだ把握できていません。今後も治療と精密検査を続けます。」
シビアな説明しているのにね、両親の眼がね、笑ってるの。笑いながら泣いてるの。
そりゃ嬉しいよね。コッチも嬉しいもの。"死ななかった"ただそれだけで嬉しいのに
ちゃんと家へ帰れそうなんだもの。
「先生、ありがとうございます。ありがとうございます。」
何度も頭下げて、握手求められて、おばあちゃんからは拝まれちゃったりして。
けどね、僕の力じゃありません。彼の力です。僕は彼の背中をチョットだけ押してあげただけなんです。彼が頑張ったんです。僕じゃない。

けど、改めて思うけど、医者って仕事、チョット誇りに思う。


(2007年08月23日)

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