その彼とは先日あるバーでばったり会った。
懐かしい顔。しかし以前の彼よりも幸せそうだった。
そもそもそのバーはボクが彼を連れて行ったのだが彼がえらく気に入り、ボクなんかよりすっかり常連になっていたのだ。
彼との出会いは6年ほど前。別のとあるバーの常連同士だった。
その店はカウンターのみのこじんまりしたお店でオーナーのほかカウンターに女子のスタッフ数名がいる。
当時お互いハッキリ言って入り浸っていた。
特にお目当ての女子がいた、とかいうわけではないがボクは離婚直後。
彼は彼で大手ハウスメーカーで土地コロガシのような仕事をしていて
「海千山千の腹にイチモツ持ったおっさん相手の商売にもう疲れた」とよく愚痴っていた。
病んでいたのだね、お互い。
彼とは同じ年齢ということもあってか妙にウマが合った。
いわゆる「飲み友」になり、いろんなお店に行った。
彼はいつしか女子バーに姿を現さなくなり、どうしているのだろう?と思いつつも特に連絡もしなかった。
そのうち彼は会社を辞め、ある地方で独立して不動産の商売を始めた、と連れて行ったバーのマスターから聞かされた。
後に結婚して娘さんも生まれた、と、ここ数年でなかなかにドラマチックな展開に至っていることもそのマスターから聞いていた。
商売もそこそこ順調らしい。
陰ながらよかったなーと思っていたのだが数年ぶりの思わぬ再会。
数ヶ月に一度は札幌に来ているとのこと。
懐かしい話をひとしきりして楽しかったのだが彼がふと言ったひとこと。
「そういえばケン=ボウはあの店の女子に人気あったよな!」
「…はあ?知らないんですけど。誰?ねえ、誰?!」と気がつけば彼のズボンの端を引っ張っていた。
「○○ちゃんでしょ?あと○○ちゃんとか。けっこうマジだったよ。オレ相談されたもん」
注:そのお店は年間延べ20人くらいの女子が入れ替わる。
悲しいかなオーナーが独特の人物で、根性座ってるか、よっぽどのカワリモノじゃないと続かないのだ。(常連氏談)
あのう…早く言ってくれませんか?そういう事案は。
と思いつつも「へー、まったく知らんかったわ。まぁ人畜無害だからじゃない?ハハハ」
と、さりげなくその場は軽くナガシたのだがその後の会話はうわの空。
「ごめん…。ぜんっぜん話変わるけどさっきの女の子の連絡先って知ってる?」
「いやー、○○ちゃんはケッコンしてロンドンにいるらしいよ。○○ちゃんはわかんない。」
「あ、そう!へー、よかったじゃん!へー、そう…」
断っておきますが、昔モテたとかいう類のハナシではありません
ぶっちゃけ下心アリアリだったのにあまりの自分のにぶさ加減にあきれているのです。
あの頃に戻れるなら…。痛いのは嫌だけれど闘魂注入よろしく往復ビンタを張ってやりたい心境なのです。あの頃の自分に…。
ちぇっ、聞かなきゃよかった。
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