「ちゃんと食べてるの?」と先週はよく聞かれました。下ごしらえが面倒
くさくて野菜の料理を避けていたら、そのせいかどうか二の腕の毛細血管
があちこち切れて内出血を起こしてしまったのです。小生、没頭する事が
あると本当に寝食を忘れます。
これでも普段はわりあいちゃんと作る方です。一汁一菜が基本で、あまり
凝ったものは作りませんが―。
弟がイタリア料理人なのでオリーヴ油もバルサミコ酢も、かなり早くから
台所にはありました。が、これも、かなりいい加減に使っています。
たとえば、バルサミコ酢をカレーライスに入れるとか―。ウスターソース
を入れると甘くなりすぎると思う方なら、お口に合うかと思います。
血でしょうか?料理に関しては、母方の祖母がチャレンジャーでした。
村で最初に「ライスカレー」を作った人物だと聞いています。
昭和も10年代の...戦争が始まる少し前の話かと思います。
肉は主に農家で絞めたウサギだったそうですが、父の家では肉の代わりに
「ちくわ」を使ったということです。
「ウサギなんて贅沢の部類」だったそうで...。
実は小生、この「代用する」という発想が好きなのです。今、ここにある
もので、どうにか工夫していた昭和の食卓―。
くだんの祖母はロシア総領事館に勤めていたとかいう友人のお父さんから
「ボルシチ」を習い、得意料理としていました。しかし一般家庭でビーツ
の缶詰が手に入るようになったのはつい最近のこと。祖母の作るボルシチ
には、代わりにトマトが入っていました。赤蕪の代用品としては、かなり
ストライクゾーンを外していると思われますが...。
小生、祖母の作るこの酸っぱいスープが案外好きでした。
それは、たいそう「エキゾチック」な味がしました。
ビーツを使った本当の「ボルシチ」がどんな味の物なのか、小生はいまだ
に知りません。
だからでしょうか。豪華なカラー写真を随所に使って、一から十まで懇切
丁寧に詳細を解説してある料理本は、小生ちょっと苦手です。
それなら物語やエッセイ、小説の中の登場人物が作る、申し訳程度にしか
調理手順が書かれていない料理の方が、よっぽどそそられます。
赤毛のアンもいってたじゃないですか。「想像の余地」が楽しいのだと。
そんな小生、最近わが意を得たりの料理本を読みました。上橋菜穂子さん
が描く異世界物語に出てくる料理を再現した『バルサの食卓』です。
料理を担当したのは、チーム北海道。あの<南極料理人>の西村淳さんと
そのご友人らが、「いまの日本で手に入る食材で作ってみたら、あの料理
はきっとこういう味...」と創意工夫されたレシピが満載の一冊です。
上橋さんは、作家とは別に、アボリジニの研究者という顔もお持ちの方。
『バルサの食卓』を読むと、オーストラリアでフィールドワークをされた
時の実体験が『守り人』シリーズを始めとする異世界の構築には生かされ
ているのだなぁと解ります。本当にこんな食べ物がある!と思わせる記述
なのです。それをまた、現実の料理にしてしまうチーム北海道の手腕!
さすがです。
どれもこれも実に美味しそうなのですが、手始めに小生『守り人』ファン
の間でも一番人気だという「ノギ屋の弁当風鳥飯」を、作ってみました。
材料は、ご飯・鶏モモ肉・リンゴ・日本酒・醤油・みりん・山椒の実。
「これだけで出来る!」と帯にも書いてありますが、本当です。
小生はモモ肉をムネ肉に代え、山椒の実はいただきもののちりめん山椒の
佃煮から20粒ほど選りました。リンゴはあかね。これを擦りおろして調味
料と合わせ、焦げ目をつけた肉にからめて焼くのです。みりんは仕上げに
照りを出すため、お玉に半分。
そう。計量の基準が「お玉」というざっくりした感じがまた、実に小生の
好みでして―。
次に作るべきは、チーム北海道の面々が「上品なザンギ」と評したという
「鳥のから揚げ宮廷風」でしょうか。
さて、こんなすばらしいレシピ集にも、一つだけ注意しなくてはならない
点があります。それは、残念ながら小生はバルサではないということです。
馬を乗りこなす短槍の達人という用心棒と、一日、館内を出ることもない
事務職とが、まるで同じカロリーを摂取するわけにはいきません。
前述のモモ肉をささやかにもムネ肉に代えたのは、そんな事情によります。
※ 『バルサの食卓』上橋菜穂子/チーム北海道 著(新潮文庫)¥552
※ チーム北海道:イデ妙子~江別市《カフェ・ド・サンレモ》オーナー
西村淳~<南極料理人>
渋谷文廣~こだわりのカメラマン
上野淳美~札幌市《oteshio》オーナー
高阪美子~札幌市《バンドカフェ》オーナー
西村みゆき~西村淳の妻。料理愛好家。
西村美子~西村淳の妹。テレビ局勤務。
―以上『バルサの食卓』より―
※ <南極料理人>については、「コラナビがオススメするこの一冊」
2009.8.6投稿 『面白南極料理人』シリーズ(タケダフミト記) を参照されたし。
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第6回「ライスカレー」と「ボルシチ」と『バルサの食卓』
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中国にいたとき、日本の調味料も日本でよく食べていた食材も手にはいらなくて、○○の代わりに××を使うというのをよくやっていたのを、ケイトさんのコラムを読んで思い出しました。
鶏肉が小さく切り分けて売っていないので、羊を使ったり、牛が手に入りにくいので豚で作ったり、大根が売っていないので赤カブ(皮は白いが切ると中が赤い・・・最初は白いカブだと思って買っていました。)を使ったり(煮汁が赤くなり、味噌汁がバイオレットフィズのようになりました。笑)しました。そこから新しいメニューが誕生したりしましたよ^^
トマトが入ったボルシチとってもおいしそうです。
ボルシチとトマトって合うと思いますよ!
>カタヒラさん
中国語と韓国語をあやつる切れ者ありながら、やわらかな人づきあいの達人でもあるカタヒラさん。
コメントいただきまして、恐縮です。
>味噌汁がバイオレットフィズのようになりました
って...それは凄いですね。
祖母は亡くなるまで、食に対する好奇心が旺盛な人でした。
アリゾナ帰りの妹が作った「タコス」を食べてみたいと云い、歯のない口でいつまでも咀嚼していた姿、小生はいとおしかったです。