晩春、第50次日本南極地域観測越冬隊、樋口和生(ひぐちかずお)さん
のお話を聞いてきました。ところはこのコラムではお馴染み、仙人の家。
おとな10人、子ども5人が、樋口さんの南極体験譚に耳を傾け、模造紙
に投影された写真を楽しんだのです。
昭和基地、ブリザード、ゴアテックス導入秘話、オーロラ、ペンギン...。
本当に興味深いお話でしたが、今回小生が話題にしたいのは「お話会」に
集ったおとなたちの話でして―。
仙人の居間には実にさまざまなおとなたちがいました。
絵描き、舞台照明家(仙人)、ダンス・セラピスト、心理士、税理士、
大学の先生、主婦、水泳のインストラクターでもある料理人、ハンティン
グが趣味の郵便局員、図書館司書(小生)などなど―。
小生、中学生二人を伴って行ったのですが、彼らは着くなり、樋口さんと
絵描きと舞台照明家に「いじられて」嬉しそうでした。
まず仙人の家の軒にできた「去年のだから大丈夫だ」と説明されたスズメ
蜂の見事な巣に度肝を抜かれ―
玄関脇の皿に入ったひまわりの種が、エゾリスのために用意されたものだ
と知ってわくわく顔になり―
杜の突き当りにあるお不動さんに挨拶して来いと云われて恐る恐る薄闇の
中を詣でに行き―(そして案の定、川に片足はまって靴下を濡らし...)
家の中に入ってからは、玄関に置かれた芳名帳にびっくりし― (家主が
いなくても訪れた客が名前を記す決まり。旅館じゃないのに...)
昭和な揺り椅子、ねじで巻く式の柱時計の音色、窓とベランダに設置され
たバードテーブルにバケツで用意された鳥のエサ、アフリカの太鼓、友人
が置いていったという鉱石、照明や舞台装置やバレエやダンスや演劇関連
の蔵書・DVD、絵描きの筆によるモンゴルのシャーマンのおばあさんを
描いた墨絵(すばらしいです!)、紙巻タバコ、などなど―。
あまり周辺ではみかけない初めての価値観が満載の部屋に圧倒され、魅了
されたのでしょう。彼らはバスを降りて怪しげな獣道(?)を辿った時も
そうでしたが、会がお開きになった後も、乏しいボキャブラリー中の最大
の賛辞(?)であるらしい「スゲー」「スゲー」を連発していました。
「スゲー、スゲーって、いったい何がスゲー?」と聞いてみたところ、
「や、この家が」「ここの人たちが...」という返答。
思うに彼らは―、単純にめずらしかったんだと思います。
そもそもいまは、親でも先生でもないおとなたちと中学生が一緒に何かを
愉しむなんて機会自体、あまりないようです。
隔離されているのですよね、つきあいが。でなければ細分化されている。
子どもは子ども、おとなはおとな。共通の趣味を持つ子どもと子ども、同
じ職に就いているおとなとおとな、というように―。
老いも若きもできるだけアクシデントには遭いたくなくって、認証済みの
交友範囲内でのみコミュニケーションを試みていると感じます。あんまり
そこからはみださないし、あえて許容範囲を拡げもしない。
小生も職場で話をする際には、仕事のことゆえあらましは解っています。
解ったうえでの話の展開です。同じ井戸を掘り下げるような会話―。
なんと云えばいいでしょう...。最近、小生、同じ井戸を掘ることに、少し
食傷するのです。予定調和をつまらないと思う自分を俯瞰でみています。
以前、栗コーダーカルテットについて書きました。老若男女みんなが一堂
に会し、一緒にたのしんだ素敵なライヴです。
小生、同じことを今回、樋口さんの「お話会」でも感じていました。
あの居間には、南極の体験談に興味津々のおとなと子どもがともにいまし
た。価値観の違うお互いをおもしろがって、わいわい楽しげにくつろいで
いました。そんなふうに大いに盛り上がるおとなの姿を、もっと子どもに
見せられる場があればいいのになぁ、と、小生思ったのでした。だって、
おとながたのしく生きているのでなければ、子どもはおとなになんかなり
たくないじゃありませんか。おとなだって、「へ~っ、そんなこと!?」
とおもしろがりたいし、驚いているのです。驚きを胸にたたえてもう一度
しげしげと眺めまわしたなら、この世界はどう変わるでしょう?
樋口さんの南極体験談について書くつもりがすっかり横道にそれました。
でも大丈夫です。6月19日(土)19時より琴似のカフェ・ハチャムで
「南極で過ごした一年」と題した樋口さんのお話を聞くことができます。
次の越冬隊にも加わるという樋口さん。この機を逃すと今度お話が聞ける
のは2年先になってしまいます。だから、おもしろがりの方はぜひ!
※カフェ・ハチャム http://blog.hacham.jp/
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第31回 「南極」を面白がるおとなたちの話
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://spiritlink.80code.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/2302
6月19日に息子二人を引き連れ、カフェ・ハチャムにお邪魔させて頂きました。
日頃「トランスフォーマー」だの「アイアンマン」だのと派手な演出や速いストーリー展開に慣れ切ってしまった小学生が果たしてスライド上映というまったりとしたストーリ展開に対応できるか心配しておりましたが、流石にパソちゃんは開始30分でダウンしてしまったものの、長男はお店の方にお冷を頂いたり、団扇を貸していただいたりとサポートされつつも最後まで目を皿のようにして聞き入っておりました。
「どの部分の話が面白かった?」の問いに
「ペンギン!」と即答されたのは些か肩透かしでしたが
それでも4年生の心に印象付けるのには充分な内容だったようです。
それにしても基地の中という決して広くない環境で何日間にも及び作業を続けていたかと思えば、一転して何もない広大な空間で命の危険に晒されながらもまた異なる業務を遂行するという過酷な環境で1年以上も過ごされる精神力には頭が下がる思いです。
いくら気分転換を挟みながらとは言いながらも、ストレスに対してどのように対応し乗り切っていくか、現代人に最も欠落したスキルを必要とする世界は宇宙飛行士に匹敵するレベルなのでしょうね。
もし2年後に樋口さんが帰国され、再度講演を聞ける機会がありましたら是非参加させていただきたく思います。
今回は貴重な機会をお教えいだだき、ありがとうございました。
えっ?
いらしてたんですか?!
声をかけてくださればよかったのに…。
(そうしたらあのマンガに小生も登場していた…?)
樋口さん、確かにスゴイ方なのですが、小生にとっては焚き火の友、です。真剣に遊ぶ愛すべき大人―
そのバランス感覚が彼の魅力だし、強さなんだと思いますね。