5月2日、東京へ行ってきました。
目的は不忍(しのばず)ブックストリートで開催されている一箱古本市を
歩くこと。これ、古本好きなら一度はチェックしたい魅力的な催しです。

一箱古本市では、販売に軒を貸す人を「大家」、そこで一箱を売る人を、
「店主」と呼びます。2日は10の大家さん(開催スポット)に計55箱が出店していました。
小生、買えば「幸あれ~」と声をかけてくれるのが決まりの『書評王の島
と朝倉かすみ』店に、まずは出向きました。
ここは豊崎由美さんとその書評講座のメンバー、そして作家の朝倉かすみ
さんがお薦めの本を持ち寄った一箱です。見ると、読みどころが記された
手製の帯がかかっていたりします。う~ん、これファン垂涎の直筆では。
店主は古本屋とは限りません。この古本市は業種もプロアマも問わない、
誰でも参加できるイベントなのです。ルールは、一箱に収まる量を並べる
こと。ただし売れたら補充は可。値付けを高めにするも、均一にするも、
店主の自由。各箱さまざまの思惑で売られているのが、なんだか愉快。
箱の中身もまぁいろいろで。ノンジャンルの箱もあり、逆に明確なテーマ
で品揃えした箱もあり―。「昭和」をテーマにした箱、料理本専門に集め
た箱、主催する劇団の印刷物やグッズ、戯曲を揃えた箱、「箱」に関する
本が並ぶ箱―。懐かしい紙風船や、朝顔の種をおまけにつけてくれる店も
ありました。力士の栞をくれたのは屋号『どすこいフェスティバル』。
おまけを貰うと「おっ」と嬉しくなるし、店主と会話する糸口にもなり、
つい話し込んで、一冊のつもりが二冊になったりなんてことにも...。
そう、ここには日本全国から、無類の本好きが集まって来ているのです。
皆、胸に何やら一家言はありそうな輩です。本談義には事欠かない。
途中、谷中銀座で地域雑誌『谷根千』のバックナンバーを求めたり、千駄
木の古本カフェ『結構人ミルクホール』で休憩したりもしつつ...。小生、
5時間歩いて55箱を全て見て歩きました。この散策、スタンプラリーに
なっていて、各開催スポットの押印全てを集めると景品が貰えるのです。
というわけで、小生、しのばずくん(不忍池に棲む紙魚の生まれ変わり)
のマグネットを無事ゲット。上限が500円ほどの仕合せな買い物三昧を
おおいに愉しんだ次第。


そして仕合せは続くのです。市が終わって総勢100名強の大宴会―。
店主でもなく事前申込みもしていない小生、本来なら参加できない打上げ
でした。そんな小生に、ご自分の席を譲ってくださったのが石井千湖さん
です。石井さんは朝倉かすみさんの文庫「夫婦一年生」の解説を書かれて
いる方で、小生が映画「海炭市叙景」の実行委員であることもご存知でし
た。そこで、せっかくだから宣伝をしてはいかがですか?と申し出てくだ
さったのです。ご好意に甘えた小生と一緒に、朝倉さんが各宴席を廻って
くださいました。それで集まった名刺、17枚―。
そして宴もたけなわ、そっと抜け出ようとした小生に、今度は一箱古本市
の実行委員長を務める南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)さんが、マイク
を持たせるのです。皆さんに向けて、もう一度話しなさいよと―。
小生、いざマイクを受け取ったものの、盛り上がっている会場に声が届く
のかと逡巡し、口ごもってしまいました。すると何名もの方が声をあげ、
「注目!」「注目!」と、ざわめく場をしずめてくれたのです。胸が熱く
なりました。そこでお話しました。
佐藤泰志のこと。彼の絶筆である「海炭市叙景」という小説のこと、映画
のこと。函館市民が映画に注いだ愛情のこと。市民募金でクランクアップ
までなんとか漕ぎつけた資金はもう底をつき、宣伝費用が充分ないこと。
ついては小生の話に少しでも興味を持っていただけたなら、どうか口コミ
で宣伝してほしいということ―。
夢中で話してマイクを返そうとする小生に、古本書評家の岡崎武志さんが
さらに「文庫化のことも!」と仰る。実は、海炭市叙景の東京応援団でも
ある岡崎さんとは、昼間初めてお会いしたのです。古書ほうろうの軒先に
陣取ってらっしゃる男性が、間違いなく『ビッグイシュー』の連載書評、
「ひぐらし本暮らし」のイラスト似顔絵と同じお顔だったので声をかけま
した。岡崎さんは「海炭市叙景」の復刊を本当に喜んでくださり、詩人の
金子彰子さんとのご縁も含め(※第23回、25回参照)、こんな繋がり
があるんですねぇという会話を交わしたばかりでした。
小生からマイクをひきとった岡崎さんは最後、既に唯一人映画のラッシュ
を観た者として、「すばらしい映画だ」「原作小説は一家に一冊置くべき
だ」というだめ押しの言葉を付け加えてくださいました。
なんという人の縁―。
そして、さらにもこの縁は続いているのです。
今週末の土曜日、札幌市西区発寒の商店街で一箱古本市が開催されます。
仕掛け人は不忍にも出店されていた「古本とビール アダノンキ」さん。
小生の本棚にはこれまでに、アダノンキで購入した古本が三冊あります。
これもまた不思議な縁―。
さきのスタンプラリーでは、実は押印一つ一つに一文字が彫られていて、
繋がると文章があらわれる趣向でした。いわく―
「ひとはこのうちゅうへ」
5月15日(土)お時間ありましたら、どうぞ遊びにいらしてください。
宇宙への新たな一歩は案外、発寒商店街から始まるかもしれませんよ。
小生、友人三人とともに、屋号「図書委員」の店主をつとめます。
※ 不忍ブックストリート
※ 古本とビール アダノンキ
※ 「一箱古本市の歩きかた」南陀楼綾繁/著(光文社新書)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第28回 一箱古本市と「海炭市叙景」
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『一箱古本市、フリーマーケット出店のような雰囲気~??
おもしろそうですね!
琴似、発寒の地理に疎いのですが^^;;;;
発寒商店街って、どの通りなのでしょうか~??
と、書いてみてから、リンクされているアダノンキさんのサイトを
見てみたら、詳細、地図等ありましたね♪
15日、ちょうど午後から、琴似で用事があるので
早めに出られたら、発寒商店街のぞきに行ってみます。』
古本市では、カンテレ応援、ありがとうございました。
プレゼント(!)までいただき、恐縮しきりです。
もっとこの街、盛り上げたいですね。