映画『海炭市叙景』の撮影が函館市内で始まりました。実行委員会の発足
から一年余。途中参加の小生も、感無量です。
原作者、佐藤泰志(さとう、やすし)との出会いについては、拙コラムの
第13回に書きました。彼の生み出した主人公達が、帯広出身の熊切和嘉
(くまきり、かずよし)監督のもと、いよいよ海炭市(=函館市)を歩き
出しました。本当にうれしいです。
東京の製作スタッフと共に準備をすすめる実行委員会メンバーの動向は、
函館に居ない小生のもとへも、毎日毎晩、共有メールで送られてきます。
逐一経過が知らされるこの数行のやり取り、何かに似ているなぁとずっと
考えていたのですが、先日ツイッターで会議の実況報告をする津田大介氏
のtsudaる状態に似ているのだとハタと気がつき、一人でニンマリとした
小生です。
クランクイン前日の夜、これまでのメールをざっと読み返してみました。
実にさまざまなやり取りがありました。
実行委員会本部からメールで発信された案件は、実行委員が各自心あたり
を探して返信し、ときには写メして画像で問いかけ、集約した本部が監督
やプロデューサーに打診します。
ロケ地候補の視察、建物所有者との交渉、ロケの食事と調理場所の手配、
機材と人を運ぶ車両の分配に運転手の見当、衣装・小道具の準備、食材等
寄贈のお願い、そして、係るもろもろの道具の管理や保管場所の確保―。
(この間に、一般オーディションもありました!)
一つの案件にGOサインが出ると、今度は誰が動けるのかをまたメールで
図ります。決定した情報は会議で整理され、その議事録もまたメールで配
信されます。気の遠くなるようなたくさんの事項を一つ一つ積み重ねて、
やっと一本の【映画】は完成するのだなぁと、いま、実感しています。
そして、これからの話です。役者も撮影隊も、起きて、服を着て、食べて
(排泄もし)、移動して、撮影をして、服を脱いで、眠ります―。
云うなれば、衣食住。それをスタッフは、ずーっとサポートするのです。
こう考えてみると―、何だか華やかに見えた映画を作ることも、結局は、
生活そのものなんだという気がします。
撮影初日報告のうち、小生がいちばん心惹かれたのは、ロケ弁の写メール
でした。もう実に、実に美味しそうなのです。
食事班からの報告と画像を、小生、文字通り、食い入るようにみつめまし
た。びっくりしたのは、昼食、夕食とも、野菜が豊富に使われていたこと
です。ロケ弁というものは、コンビニ弁当を少し豪華にしたものだという
小生の推測は、完全にくつがえされてしまいました。

観たところ、サラダだけでもレタス・ブロッコリー・ミニトマト・水菜・
れんこん・パプリカが入っています。新漬けには白菜・胡瓜が見てとれま
す。ニンジンとほうれん草のゴマ和えもあったなぁ。
天ぷらのネタもエビ・イカ・サツマイモ・マイタケ・アスパラの5種類。
ミートボールの酢豚、黒豚のシュウマイ、ホタテのマリネ、昆布巻、玉子
焼、鮭、煮物......。御飯にはミネラルを考えてか、雑穀も入っているよう
です。味噌汁の具は、豆腐と揚げ、ワカメとか―。
南果歩さんはとてもきさくな方で、「おいしい、おいしい」と何度も仰っ
ては、スタッフのカメラにおさまってくださったそうです。北海道には、
こんなに美味しい食材がありますよと、小生も誇らしい気持でした。

その一方、小説『海炭市叙景』の冒頭で、六畳ひと間のアパートの部屋中
を捜して、ありったけの小銭をかき集めていた兄と妹の姿を、思い出して
いました。除夜の鐘の音を聴きながら、あの兄妹は何も食べずにアパート
を出たのです。まだ若い20代の若者二人は、その後、どうなったのか?
映画『海炭市叙景』のロケ弁は、見知っただれかのお母さんが心をこめて
作ってくれた、ハレの日のお弁当のようでした。市民の心意気を象徴する
ロケ弁とも云えます。そう、この映画は住民参加による【市民映画】なの
です。このロケ弁当を、あの兄妹にも食べさせてやりたかった―。
映画はクランクインしました。次なる目標はクランクアップです。
撮影はあと一ヶ月続きます。今後はエキストラを交えての撮影も加わると
いうことです。
生きることは食べること―。
懸命に生きようともがいた兄妹の姿をスクリーンに確認したくて、今日も
海炭市の片隅で、食事班はロケ弁当を作り続けています。
※ 映画『海炭市叙景』実行委員会では、ロケで使う食材・寄付金を募っ
ています。お米でも野菜でも、ペットボトルの飲料水でも結構です。
問い合わせはこちらまで。 nisibori@ms7.ncv.ne.jp
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第19回 映画『海炭市叙景』のロケ弁当
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