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図書館司書ケイトのであってしまったんだ備忘録

第16回 図書館員は、46番目に良い仕事なのか?

先日、いつも仕事でチェックしている国立国会図書館の情報ポータルに、
200の職種を5つの基準で評価した、アメリカのあるランキングが紹介
されていました。
5つの基準とは職場環境、肉体的な負担、ストレス、収入、雇用の見通し
とのこと。このランキングはその総合評価で決めたもので、収入の順位で
はありません。それによるとわが図書館員は、46番目に良い仕事という
評価でした。46番目とはまた、ずいぶん微妙なランク・インです。

姪がまだ幼稚園児だった頃に、小生、こう聞かれたことがあります。
「ねぇ、大きくなったら何になるの?」
まったく意表をつかれた質問です。そのとき小生は(身長はともかく...)
もうじゅうぶんに大きかったのですからね。
大きくなったら何になるのか―、考えたものになれるとは限らないという
ことに気がつくのは、いったい何歳くらいからでしょう。

幸いにして小生、なりたかった図書館司書という職業には就いています。
しかし、今も身分は非常勤職という不安定立地のまま。仕事に夢中になっ
て熱中すればするほど、胸の裡にある空洞も意識せざるをえないのです。
雇用を打ち切られるかもしれないという不安が絶えず、その空洞をヒュル
ヒュルすり抜けるせいで―。
毎年いま時分になると、この音色に耳を傾けることが多くなります。
来年度も(非常勤として―)働く意思があるのかどうか、上司との面談が
あるからです。

この時期、決まって読み返したくなる一冊の絵本があります。

今から100年以上前のこと、ニューヨーク州ハドソンからそう遠くない
山あいの地方に、木のかごを編んで生計をたてる人たちがいました。
主人公の少年は父親のつくるかごを誇りに思い、はやく大きくなって、父
と一緒にハドソンまでかごを売りに行きたいと夢見ています。
しかし、9歳になってその夢がかなったとき、少年が聞いたかご職人への
町の人の評価は、彼をひどく傷つけるものでした。
母にその報告をしたあとの少年の独白が、小生は、忘れられないのです。

なにがあったか、ぼくがはなすと、かあさんはいった。
「山の木は、わたしたちのことをわかっている。ハドソンの人がわかっ てくれなくたって、かまわないじゃない」
かまわなくないんだと、ぼくはいいたかった。

この、かまわなくはない憤りを、少年はさらに成長して胸におさめること
になります。

しかし小生が、『満月をまって』というこの物語を何度も読み返してしま
うのは、切なくも彼がのみこんだ憤りをこそ、確認したい心境になるから
なのです。

非常勤でも司書の仕事ができるのならかまわない、と、小生、割り切った
つもりで働いてきました。が、かまわなくはなかった―。
非常勤では負えない責任が、やっぱりあるのです。
できれば小生は、今の仕事を正規に続けたい。冒頭にあげたランキングの
基準の1つである【雇用の見通し】が、まさに『大きな問題』なのです。
ほかの4つは、甘んじて受け入れてもかまわない。
米国の評価で46番目に良い仕事は、【雇用の見通し】さえ立つのなら、
小生のランキングではほかの基準を度外視して、堂々第1位なのです。
少年の父親がかごを編むように、小生は図書館で働いてきたのですから。

佐伯一麦さんの『ア・ルース・ボーイ』の一節もまた、いつもこの季節に
思い出しています。高校を中退して必死に職を探す主人公の思いが、こう
綴られているのです。

誰か、ぼくを雇ってください。
この世に自分の居場所がない思いに打ちのめされて、ぼくは心から 祈るような気持ちでつぶやく。

小生が昨年から、ホームレスの自立を支援する雑誌『ビッグイシュー』の
手伝いを始めたのは、明日はわが身かもしれないという思いに駆られての
ことです。常に勤務して責任を負う、正規の居場所が、ほしいのです。 


※『満月をまって』(メアリー・リン・レイ文 バーバラ・クーニー絵
 掛川恭子訳.あすなろ書房)

※『ア・ルース・ボーイ』(佐伯一麦著. 新潮文庫)

※図書館に関する情報ポータル:カレントアウェアネス・ポータルより
 
Best and Worst Jobs 2010
(2010/1/5付けWall Street Journalの記事。収入の数値一覧あり)


(2010年01月28日)

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