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第89回 北京レポート21 今は何でもあるけれど

北京を訪問する前、荷物を準備していたときのこと。長期滞在になるので、何を持っていけば良いだろう、北京で買えないものはもっていかないと・・・と、化粧品、文房具、薬、非常食など、リストを作ってスーツケースに詰めた。友達の女の子たちは日本の化粧品を喜ぶので、お土産に有名ブランドのものを選んでいくつか購入。気がつくと結構な荷物になった。留学中のイメージで、あれもこれも中国にはないだろうと思ったのだ。

留学中は、日本にいるときと同じように生活しようと思ったら、簡単に手に入らないものがたくさんあった。まず、リンス・トリートメント類がない。当時売られていたのは外資系のものも含めてリンスインシャンプーが一般的で、髪を洗うとごわごわとし、乾かすとひっかかって櫛が通らなかった。化粧落としのクレンジングもハルビンでは手に入りにくかったのでとても困った。こういうものはまとめて日本から送ってもらってしのいでいた。留学生で分け合ったりもよくしていた。以前も述べたが、食品類も洋食系の素材はほとんど手に入らなかったので、これも日本からの「支援物資」に頼る。(マヨネーズは瓶に入った日本系企業のものが流通し始めていた。)ハルビンはとても寒くて、寒がりの私にはカイロが重宝したが、それもすぐなくなった。もちろんそんな便利なものは当時どこを探しても売っていなかった。カイロについては、ハルビンの友達に見せたら、「こんないいものがあるの!」と驚いて、欲しがったので、帰国したときに大量に買って持って行った覚えがある。

一番びっくりしたのは、普通の大学ノートやメモ帳が近くでは手に入らなかったこと。大学構内の文房具店や、付近のお店で売られているのはノートではなく切り離す形状の便せんのようなもの。大学の近くで買うと、大学の名前が入っていた。だが、問題はその紙質。オブラートのように薄い。あまりにも薄くて、ちょっと強く引っ張ったり、ボールペンで強く書いたら破けてしまう。日本から一冊しか持ってきていなかったノートとメモ帳を大切に使っていたが、向こうに行ったばかりの頃は覚えることがたくさんあった。今のように携帯や電子手帳にメモできる訳じゃなし、紙はどうしても必要だった。日本から持って行った大切な紙類はすぐに使い切った。仕方ないのでその便せんを使うことに・・・。非常に使いにくかったが、授業の内容や日常生活でよく使う単語をまめに書き込んだ。鞄に入れていても表紙がしっかりしていないので、すぐヨレヨレになってしまう。慎重に扱った。その便せんは今でも大切に持っている。日本に帰れば、貰ったり買ったりしたノートやメモが机の中に山ほどあるのに・・・と思った。日本ではちょっと書いたらすぐ捨ててしまうようなメモ紙が実は貴重なものなのだということを知ったのだった。

留学中は日本から持ってきた物をとても大切に使った。母が送ってきた荷物に入っていた日本のスーパーの袋でさえ重宝したので、捨てずに何度も使った。当時中国では買い物をしても今にも破けそうな薄い袋しかくれず、運んでいるときに破けてしまうことも多かった。日本のように頑丈な袋はなかなかなかったのだ。洋服のショップのちょっとかわいい色のビニールの袋などは持っていると、ハルビンの友達にほしいと言われたこともあった。

ところが帰国する数ヶ月前から、大学の周りにいくつもスーパーが建ち始めた。それまでは小売店や市場で買い物していたが、スーパーに行けばすべて揃うようになった。商品の種類も徐々に充実してきているのがわかった。トリートメントも見かけるようになった。それと同時に街には高速道路がものすごい早さで建設されていた。それの完成を待たずして帰国したが、あの勢いで発展していったのだったら、今のハルビンはきっと昔の面影は跡形もないのではないだろうか。

8年ぶりに訪れた北京の街では、日本にいるときと同じ生活をするのはもはや難しいことではなくなっていた。手に入れようと思ったら、価格を気にしなければ何でもある。洋食の素材も、カイロも、クレンジングも。ノートもスーパーで山のように積み上げられていた。もちろん袋も立派になった。今回日本から買ってきた化粧品やお菓子などのお土産の中で、北京で売っているものもあった。日本のカレールーまで売っているのには驚いた。日本の大手企業が競うように進出しているのだ。その上、今は店頭にない海外のものでも、ネットでほとんどのものが手に入るようになっている。

スーパーに行くだけでも、中国の著しい経済成長の様子を知ることができた。確かにとても便利になった。次回からは荷物は少なめでも大丈夫だろう。だけど、昔の中国は、私に物は大切に使わないといけないと気づかせてくれたのだ。今は便利になったけど、無くなってしまったものもあるような気がした。時々、昔の中国がちょっと懐かしく思うのだった。



(2009年03月26日)

コメント(2)

私たちは子どもの頃から、
キャラクターがかわいいといっては使いもしないノートを欲しがり、
毎日お風呂につかってシャンプーもリンスもするのが
当たり前の生活を送ってきましたから、
そういった物が容易には手に入らない環境で過ごすということは
なかなかできない貴重な経験ですよね。

便利になるのはとてもいいことですが、
昔の中国や、きっと日本にもあった「物を大切にする心」、
なくしたくないですね!

>さぶりなさん
むこうで過ごして、日本にいるときにいかに何でも無駄に使っていたかがよくわかりました。
でも、帰国して数年が経つと、またその気持ちを忘れてしまうんですよね・・・。
たまに当時のあの便せんを眺めてものを大切にする気持ちを忘れないようにしようと思います。

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