北京から内モンゴル第二の都市、包頭(バオトウ)へ汽車で行くことになった。北京から包頭までは汽車で12時間。汽車で12時間というと、日本人にはかなり長い距離に感じられるが、中国人に言わせると、
「まぁ、近いほうだね。一晩寝れば着くよ」
これを聞くと中国は大きいなぁと実感する。飛行機より運賃の安い汽車は、広い中国の主要な移動手段だ。(その他長距離バスもあるが)汽車の中で一泊~二泊して中国大陸を縦横断することは、普通のことなのだ。私も以前38時間汽車に乗って、敦煌まで行ったことがある。
中国の汽車は、座席は「硬座」と「柔座」、寝台は「硬臥」と「柔臥」という4つの等級に分かれている。「硬座」は普通席。字の通り座席が硬く、長時間座っていると腰が痛くなってくる。「柔座」は一等車両で、「硬座」より座り心地がよく、座席も広い。「硬臥」は上段、中段、下段の3段の寝台。一番下だと上の人たちに座られる運命になる。一番上は上がるのが大変・・・。お年寄り向きではない。「柔臥」は二段の寝台なので広く、四つずつで仕切られていて、中から鍵かかけられる。新しい車両だと、上にTVがついている。当然「柔臥」が一番運賃が高く、「硬座」の数倍する。「硬臥」も「柔臥」も上段より下段のほうが高い。
この他に、「無座」という切符もある。これは、「硬座」の車両に乗せられるのだが、座席が無い。運良く途中で下車する人がいれば座れるが、いなければずっと立ってなければならない。信じられないかもしれないが、「無座」で20時間くらい乗るツワモノもいる。特に、旧正月や、国慶節などの長期の休みの帰省ラッシュには座席を買えなかった人が大勢、この「無座」で乗り込んでくるので、300%くらいの乗車率になる・・・。(私も移動したかったときにどうしても切符が買えず、7時間くらいまでなら「無座」で行ったことがあるが。)「硬座」の座席指定の切符を持っていても、先に「無座」の人に座られている場合もある。この場合は、はっきりどけてくれるように言わないといけない。
留学中は、よく汽車に乗って旅行したものだが、「柔臥」に乗ったのは一度しかない。長距離(10時間以上)を移動するときはたいてい「硬臥」。買えなければ「硬座」。今思うと、「硬座」に乗るのは体力的にきつかったが、一番面白かった。「硬座」には、富裕層やスマートなビジネスマンはまず乗ってこない。真っ黒に日焼けした肉体労働派のオジサンや、野菜を担いだ農家の人たちなど・・・、みんなとっても気さくで、長時間旅をするうちにすっかり仲良くなる。
「あんたどこまで行くの?どこの人?」
などと話しかけてきて、食べ物や飲み物をくれたりする。(今は人からもらったものを食べないというのが普通だが・・・。)
今でもよく覚えているが、西安で農家のオジサンが、ニワトリ2羽を両手に抱えて乗ってきた。ニワトリがコケコケ鳴いて、ばさばさ羽ばたいたので、床も座席も羽だらけに。でも、みんな怒るふうでもなく笑っていた。
もう一つ記憶しているのは、いつも「硬座」の床はヒマワリの種だらけだったということだ。中国人が数時間で食べるヒマワリの種はとんでもない量になる。汽車の中って特にすることないからかも・・・。乗務員が定期的に清掃にこないと、床一面ヒマワリの種になる。
留学中は旅行から帰ってくると、「無座」や「硬座」で何十時間乗ったとか、これだけ安く行けたとか日本人留学生同士で競うように話をしていて、今考えると、つくづくよくやったな~と思う。今はもうムリ。体力がない。年だし。できれば「柔臥」に乗りたいです。
Ⅱへ続く。

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