北京に滞在して数日が過ぎたある朝、目覚めると強烈な頭痛とめまいが。吐き気もひどいので、近くの総合病院に行くことにしました。ここはもともとは軍の病院ですが、現在では、お金を払えば一般の人でもかかれます。北京には人民解放軍のための大きな病院がいくつかあるのです。
病院は入り口から人で溢れていて、中に入ると更にものすごい人、人、人。まるでここでなにかの催しでもあるのか?と思うくらい。受付のある広いロビーでは、みな雑誌や座布団を地べたに敷いて座り、診察の順番待ちをしています。長蛇の列...。もう座る隙間もないくらい。それを見た瞬間に更に激しい頭痛が。「こんな風に順番待ちをしていたら、明日になっても診てもらえないんじゃない!?」と気が遠くなりかけました。
ところが私は、急患の方にかかることができました。中国の大きな病院では、私のように急な病気・怪我や、容態の悪い患者を診る「急診」という窓口が別にあるのです。「急診」の方は、先ほど目にしたあの状態よりはかなり空いていました。軍の病院だということもあり、解放軍の制服を着た男性が担架で運ばれて来たり、軍の関係者が多いようでした。
中国の病院は基本的に先払いなので、まず受け付けでお金を払って、カルテ(ノートのようなもの)をもらいます。このカルテは持ち帰ることになります。そして診察室へ。いくつかある診察室の仕切りは低く、入り口はカーテンがかかっていて、隣の診察室の声が丸聞こえになりそうでしたが、人が多いので騒がしく、あまり気になりません。
私が診察中なのに、ひっきりなしに他の患者が入ってきて、先生に話しかけます。
みんな早く診てほしいのです。先生は気にするふうでもなく、彼らに適当に返事をしながら、私の診察をてきぱきとすすめていきます。私は、診察台の上に寝転がって、彼らを眺め、先ほどのロビーを思い出しながら、人口に対して病院の数も医師の数も絶対的に足りないのだと思いました。日本のように患者を病院の方で管理して、順番に診察してくれるわけではなく、自分から積極的に行かないといつまでたっても診て貰えないのです。
「一応CTスキャンを撮っておこうか」
先生の一声で、記念すべき初めてのCTスキャンを中国で撮る事になりました。私が外国人だと分かると、技師が何やら英語で話しかけてきましたが、さっぱり分からず。撮り終わると、写真を病院名の書かれたビニールの手提げに入れて渡されるので、それを自分で診察室まで持って行きます。(写真はそのまま持って帰れます。)診察室には相変わらず人がどんどん入って来るので、付き添ってくれた中国の方が、
「この子は伝染性の病気でね。入ってこないほうがいいですよ」
と言ったら、あっというまに誰もいなくなりました。これには先生も苦笑い。
先生は、太陽の光に写真をかざして、しばらく眺めると
「うん、大丈夫ですね」
とおっしゃいました。疲労と緊張のための頭痛で、十分に休息をとるように。薬は特に飲まなくていいということでした。中国に来てからは、移動ばかりで疲れがたまっていたし、外国に来ているので、知らない間に神経が緊張していたのかもしれません。
人でごった返す病院から出ると、白タクが何台も止まっていて、客引きをしていました。白タクは基本的に法律で禁止されていて、空港や駅のタクシー乗り場では見なくなっていたのですが、こういうところにはまだまだかなりいるんですね。最近は白タクも外車が増えたようです。
先生に異常がないと言われたら、こころなしか楽になったような気がしました。大きなCTスキャンの写真を片手に、タクシーに乗り込みました。(白タクではありません)

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