母国語の日本語をある一定の期間、ほとんど使わないで生活したことがある。韓国に滞在中、中国人と暮らし、家の中では中国語の北京語&福建語、外では韓国語という生活をしばらくしていた。そんな生活を続けていると、どうなるかというと・・・、
■ 簡単な日常会話には問題ないが、日本語の本や新聞ニュースに触れないので、文章語や難しい外来語がすぐに出てこない。語彙が大幅に減る。
■ 日本のTVを見ないので有名人(政治家や芸能人等)の名前が思い出せない。のど元まで出掛かっているのに、出てこないというもやもやした状態が続く。韓国の友人に、韓国で映画やドラマに出演している中村徹の名前を聞かれて、思い出すのに3日かかった。
■ 単語が思い出せないので、会話に指示語が増える。たまに日本人と話すと「あれさー、そうそれそれ」などと連発している自分に気づく。
脳と口のつながりが遮断されてしまったかのように、言いたいことがスムーズに出て来なくなる。
そんな環境にいるときに、久しぶりに日本人のクラスメイトから電話がかかってきた。
「カコ久しぶりー!今何してる?」
「蒸しケーキ作ってた。乾いたブドウ入りの」
「は?乾いたブドウ?ブドウ乾かしたの?」
「違う、えーと、あ、日本語ではレーズンだったっけ。久しぶりに会いたいね、今度イタリアの麺でも食べに行こうよ」
「は?イタリアの麺てあるの?」
「ほら、あの・・・、学校の近くにある、あれあれ~。」
「パスタ屋さんのこと?」
「そうそう!!!」
「・・・。ところで、中国人の○○ちゃん元気?」
「彼女ね~、最近親戚が亡くなって、すごくがっかりしてるんだ・・・。」
瞬間、友達は大爆笑。
「カコ・・・あんた、日本に帰ったほうがいいわ!さっきから日本語ほんとにおかしいよ。親戚死んだら、普通『がっかり』どころじゃないんじゃない!?」
極端だけど、実話です・・・。中国語でレーズンは「葡萄干」つまり、ブドウを乾かしたもの。スパゲティは「意太利面(イタリアの麺)」と呼ばれている。それを日本語になおしたつもりで、「乾いたブドウ」「イタリアの麺」などと言っていたのだった。あまりにも日本語から遮断された生活を送ると、こんな簡単な外来語でさえも出てこなくなる。友達の親戚が亡くなって、ひどく悲しんで元気がないことを表現しようと思ったのに、「がっかり」という単語以外頭にうかばないし・・・。
言葉というのは母国語でさえも、使わない環境にあると忘れてしまう。何年も時間をかけて覚えたのに、忘れるのはあっという間。だから帰国してしまうと、留学中の語学レベルを保つことは更に難しい。維持するには、日々努力あるのみだ・・・。

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