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第36回 お・ね・が~い!!!

韓国にいるとき、クラスメイトの中国人の男の子に頼みがある、と言われ・・・
「明日、作文の試験あるじゃん、俺さ、アルバイトで書くひまないんだわ。だから原稿代わりに書いてくれよ」
あまりにずうずうしいお願いに一瞬聞き違いかと思い、頭のなかでもう一度彼が言った中国語を日本語に訳し直て、おそるおそる聞き返す。
「明日の試験の準備を私にしろっていうことじゃないよね?」
「もちろんそうだよ。俺は時間が無いからカコに頼んでんだよ。悪いけどさ、頼むよ」
「あのねぇ、あたしは自分の準備もしなきゃなんないんだよ。それに明日はちゃんとしたテストだよ。あたしがあんたの代わりに書いても意味ないでしょ」
「頼むよ。俺が書いたんじゃ中級に上がれないんだよ。助けてくれよ」
「人が書いたもんで進級してどうすんのさ。悪いね、手伝えないよ」
彼はあきらめて去っていった。

 私は、この手の頼みごとには慣れつつあった。中国人は友達同士なら気軽に物事を頼む。ちょっと努力すれば自分でもできそうなことでも、友達が解決してくれそうなら友達を頼る。仲が良ければ良いほど、頼みごとの程度も大きい。それで別に相手も気を悪くしたりはしないし、できないならできないとはっきり断る。逆にいえば自分が頼まれることもあるわけで、そのときはできる範囲で友達のために骨を折る。親しい仲に遠慮はいらないということなのだ。

 ある日授業が終わって帰り際に、仲良しの玲燕(リンイエン)が私を呼び止めた。
「前の学校の日本人のクラスメイトに手紙書きたいんだけど手伝ってくれる?」
玲燕は以前にソウル市内の他の大学に通っていた。
「いいよ」
と安請け合いしたが、玲燕は
「んじゃ、頼んだよ。バイバイ」
と言って帰ろうとする。
「ちょっと待って。いつ書くの」
手伝って、と言われたので、私はてっきり玲燕と一緒に書くのだと思っていた。
「いつでもいいよ。時間あるときで」
「あのう、もしかして私が全部書くの?」
「もちろんそうだよ。私は書くの苦手だから、カコに頼んでるの」
「だけど、私その人のこと何も知らないんだよ。何書けばいいか分かんないし」
「気にしないで。好きなこと適当に書いてくれればいいよ」
彼女は日本語でも韓国語でもいいからねと付け加えると帰っていった。日本人同士ならあり得ない頼みごとの内容にしばし呆然としていたが、やることになった以上仕方が無く、家に帰ってすぐに便箋を広げた。相手の名前以外に何も情報が無いので、書けることがない・・・。

「元気ですか、寒くなりましたね、私は元気です、今初級クラスで勉強しています......。」
どんなに考えても便箋の一枚の半分をうめるのがやっとだった。それでも、翌日玲燕に渡すと、彼女は「いいの、いいの。早かったね」と言って喜んだ。
 
また違う機会に述べことにするが、彼らとともに過ごした間、私は実に様々な頼みごとをされる。日本人同士なら、相手に迷惑がかかると考え、なかなか面倒な頼みごとはしないし、自分でできることで人を頼ることはあまりないので、中国人の習慣を理解し、できないことははっきり断れるようになるまで、かなり時間がかかった。日本人は「断る」こともニガテなのだった・・・。

未だに私はよっぽどのことが無い限り中国人の友達に、頼みごとができないでいる。気にしないで何でも頼んでいいんだよ、彼らは言うけれど・・・。やっぱり私はどこにいても日本人なんだなぁと思う。


(2008年02月28日)

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