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第26回 冷静な日本人と熱い韓国人

韓国で。学校の帰り、男性二人が路上でつかみ合いのけんかをしていた。どうやら車の軽い接触事故が原因らしい。通行人が二人に遠慮のない視線を送る。私は、またか、と思ってちらりと見るだけで通り過ぎる。中国でも韓国でもこの手のけんかは多い。路上での怒鳴り合いはまだいいほうで、殴り合い、蹴り合いも目にすることがある。

家に帰ってから、ルームメイトのヘギョンに、今日路上でけんかを見たことを報告したが、彼女は別に驚く風でもなかった。私がその後、なんとなく独り言のように
「日本では、知らない人同士の路上のけんかとかってあんまないんだけどね」
と言ったら、彼女はそっちのほうに驚いたようだった。
「なんで日本って、けんか少ないの?」
「そういときも、冷静に対処しようとする人のほうが多いんだよ」
「ええ!!そっちのほうが怖いよ~。怒っているのに、冷静だなんて。普通は腹が立ったら、怒鳴ったり、表情に出たり、手がでちゃったりするのが当たり前でしょう?」
「でも、感情的になってもなにも解決しないよね?」
その日、ちょうどヘギョンの友達も遊びに来ていて、その子もヘギョンの意見を支持した。
「韓国では、そういう状況のときは、大声で罵ったり、自分を大きく強く見せようとする人のほうが多いわ。相手を萎縮させたほうが勝ちっていう考えがあるかもね。」
「日本にもそういう人いるけどさ、冷静に話をつけようっていう人のほうが多いと思うよ。勝ち負けっていうか、冷静な人のほうが周りには支持されるんじゃないかな。」

しばらくそれについて、二人と話して思った。日本人は、中国人韓国人に比べて、感情を表に出さない。特に「悲しみ」「怒り」については。どんなにはらわたが煮えくり返っても、どんなに悲しくて心が張り裂けそうでも、人前で怒鳴ったり、暴れたり、泣き叫んだり、その感情によって我を忘れたりすることは、人生のうちで数えるくらいしかないだろう。ストレートにそれを出してはいけないと、小さいときから教育されていることもあるし、周りの目を気にして感情に身をまかせることがみっともないこと、恥ずかしいことだと考えている部分もあるからだと思う。

韓国や中国の映画、ドラマを見ていると、登場人物は実に感情表現が豊かだ。実際にこの国の人たちは、ドラマの中と同じようによく泣き、怒り、笑う。日本人の目には、オーバーに映ったり、感情に波のある気分屋に見えてしまうときもあるけど、自分の気持ちにとても正直。怒っている時に声が大きくなったり、気分が悪い時は、思いっきりむすっとして一言もしゃべらなかったり、周りにそれを隠そうとはしない。

韓国で、事故や犯罪の被害にあった方たちへのインタビュー報道を見たことがある。被害者の親族の方たちが、泣き叫び、声を荒げて取り乱し、まわりにあったものを投げつけていた。容疑者に飛びかかっていく映像も目にした。日本だったら?と考えた。日本人だったら、大切な親族が被害にあったのだから、そうしたい気持ちは同じだと思うけど、どんなに辛くても、人前でそこまでの感情を出すということはないんじゃないかと。

そう考えると日本人って、無意識になのか、習慣的になのかは分からないけれど、たくさんの感情を「我慢」しているんだなぁと思えてきた。そして、お隣の国の人を一概に、けんかっぱやいとか感情的だとかいうことはできないと思った。感情を抑えるという考えがなければ、腹が立ったり、悲しかったりしたら、怒鳴ったり泣いたりしてしまうのも仕方ないんじゃないか・・・。人間なのだから。



(2007年12月13日)

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